愛羅との遭遇
さっそくやらかしちゃうメイ
「…チッ」
「え、なんで舌打ち?」
「たまにいるんだよ。小さい子供だったり、死線を何度も彷徨ったことのあるやつなんかに、俺たちの姿が見える奴」
「えぇっ!!」
「実際、あいつ、俺らのことガン見してるし」
確かに。もう一度女の子を見てみると、やっぱりしっかりこっちを見てる〜。
「ど、どうしよう?どうすればいい?」
「落ち着け、バカ。ここはひとまず退散するか」
イサヤが飛び立とうとするので、慌てて後を追いかけようとして、ちらっと女の子を見てみると、真っ青な顔をして胸を押さえるのが見えた。
「イサヤ!」
「なんだ?」
「あの子!」
私たちは本来、生きている人間と直接関わることはほとんどない。
それに、変に干渉することは禁止されている。
なんといっても、もともと存在する世界が違うし、私たちが変に干渉すると、その人間の運命を変えてしまいかねないもんね。
でも、このときの私はそんな理屈どこかに飛んじゃってた。
ひとりぼっちで苦しさに耐えている女の子を見た瞬間、体が勝手に動いていた。
「大丈夫!?」
女の子のそばまで行くと背中にそっと手を添えた。
「はっ、はぁっ、く、くすり…とって…」
苦しそうな息の合間にそう言われて
「薬!?どこにっ…」
慌てて部屋を見回す私の目の前に、すっと差し出されたのは白い錠剤が入った小さな透明のピルケース。
女の子はそれを奪うように手に取り、震える小さな手でふたを開けると、おもむろに中の錠剤をつかんで自分の口に押し込む。
私はなす術もなく女の子を見守るしかなかった。
しばらくして薬が効いてきたのか、苦しそうだった息も落ち着いてきて、顔色も戻ってきたみたい。
「よかった…」
ほっとして手から力が抜ける。
でも、そこに冷ややか〜な声が。
「なにが、“よかった“ だ。ばーか。なんにもよくねぇっての」
「なっ!」
思わず声の方に顔を向けると、体の前で腕を組んで私たちを見下ろしているイサヤ。
えっと…怒った顔をされてます。
「悪魔の学校は、最も出来が悪い奴を首席にすんのか?」
「へ?」
「俺たちが人間に関わるときは、それなりの理由がないとだめだろーが?」
「そ、それは…」
返す言葉が見つかりません。
確かに、今、私がやったことはルール違反。
じっと私を見つめるイサヤの力強い瞳に、私は罪を問われている気がして固まってしまった。
でも、そんな私を救ってくれたのは、小さな女の子のか弱い声でした。
「てんしさま、おこってるの?あくまのおねえちゃん、ないちゃう?」
ハッと我に返って愛羅ちゃんを見てみると、心配そうな顔で私たちを見つめている。
「えっと…泣かないよ!お姉ちゃんはこう見えても強いんだから。怒りんぼ天使なんて、どってことないし」
「てんしさま、おこりんぼさんなの?」
愛羅ちゃんがイサヤの方を向くと、イサヤがちょっと困ったような顔をした。
それがなんだか可愛くて思わず笑っちゃった。
どんな時も小さな子供の存在ってすごい(笑)なんて思ってみたり。




