地上へ〜イサヤ〜
イサヤの視点から
まったく世話の焼ける…。
なんで俺がこんな新米悪魔をパートナーにされなきゃなんねーんだ。
これでも俺は入隊以来、相当な高評価で異例の昇進しまくってるってのに…。
だから歴代のパートナーはかなり優秀なやつばっかりで、仕事もかなりレベルの高いものばかりをこなしてきた。
ちなみに今日の仕事も結構ハイレベル。
それなのに…。
おまけにこいつには”普通”の行動ってのができないのか?初対面の頭突きといい、さっきの扉からのダイブといい…。
ゲートと呼ばれている特殊な扉。
それをくぐって地上までは、視界がほとんどきかないモヤの中を、自分が下と決めた方向に向かって飛ばなきゃならない。
強い意志がないと地上にたどり着かないように、わざと空間には複雑な結界が組まれている。これは外からの不法侵入を防ぐためのものでもあるため、かなり重要な存在だ。
っていうのは天使にも悪魔にも常識中の常識として浸透しているはず。
だから、たいていの新人は、慣れるまでの間はパートナーに誘導されて、一緒にゆっくり地上を目指す。いわば、訓練みたいな期間が少し必要。それなのに、扉が開くか開かないかのうちに1人で飛び出すとは…。
「お前、ほんとーにばかだろ?下手に飛んで、複雑に組まれた結界に引っかかれば、ケガじゃ済まないこともあるっつーの。常識だろーが」
「…」
めずらしく反論してこないので、腕の中のちびの顔を覗き込んでみると、真っ赤な顔をしながら目に涙をいっぱい溜めていた。
「わけわかんねー。なんで真っ赤?オマケになんで泣きそうなんだ?」
さっぱり訳が分からず聞いてみたら、消え入りそうな声で言ってきた。
「だ、だって…お姫様抱っこだし、思わずしがみついちゃって恥ずかしすぎる。それに、何も考えずに飛び出しちゃってすっごく怖かったんだも…うっ、ふぇ…」
「……ぷっ、なんだそれ」
予想外の返事とともに後半は本気で泣き出したちびが、やけにかわいく思えた。
だから、俺はさらに意地悪を言ってやろうと思った。
でも、後で思えば俺はこの時に墓穴を掘ったのかもしれない…。
「だいたいお前、なんでいきなり飛び出したりなんかしたんだ?」
「うっ、だ、だって、イサヤ少尉…うわぁ〜ん!睨まなくてもいいでしょ!!」
名前で呼ばねーから、ちょっと睨んだだけなのに、さらに涙目。おもしれぇやつ。
「イ、イサヤってば、私には意地悪なのに、ゲートのとこにいた護衛の天使さんにはすごく優しい感じなんだもん!」
はぁ?なんだそれ。それじゃまるでヤキモチじゃねーか。こいつ、無自覚で言ってるよな、これ。
ちびが俺のことで嫉妬していると思ったら、突然、わけのわからない感情が押し寄せてきた。
なんだこれ!?
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