二人の思い
あと何回俊平さんの飴細工が見られるだろうか、あと何回味わえるだろうか、そして、あと何回会えるだろうか、そこまで考えて涙が頬を伝う。
滲んだ景色が嫌になって目をつぶっていると、海子はいつの間にか眠りに落ちていた。
俊平と会える最後の日、海子はいつも通り飴を買いに商店街へ向かった。俊平はいつも通り飴を売りに来ていた。二人は今日が最後ではないかのように、悲しみが無いかのように他愛もない会話をした。
俊平が笑顔になって、途端海子の心臓は絞られて、耐えられなくなってそれじゃあと立ち去ろうとした。
「待って、海子さん、あの、これ」
そう言って俊平から手渡されたのは、これまでに見たことないような、深い蒼と透き通った透明さのコントラストが印象的な、繊細な飴細工だった。
「海子さんをイメージして作ったんです」
俊平は苦しいような、泣きそうな目をして、笑顔で言った。海子の心臓はまた絞られ、今度こそ涙を抑えることができなかった。
「海子さん、泣かないで、きっと君との思い出は生涯忘れることができない、でも僕は幸せです、君もどうか幸せでいて」
海子は苦しかった。叶うことなら俊平と幸せになりたかった。でもそれは叶わない。海子は覚悟を決め、涙を抑え込んで、言った。
「ありがとう、俊平さん。私きっと幸せになるわ」
言い終わった後、海子は俊平に背を向けて歩き出した。乾いたアスファルトに水滴が滲んで、乾いていく。それはまるで二人を繋いだ運命と、叶わない願いが錯綜しているようだった。