かわいい子には女装をさせよ!
ちょっと長め。あと最終回です。
僕は知らなかった。
姉さんが何で僕に女装を始めたのか、小学六年だった僕はいや、今でも嫌だと言うだけで知ろうともしなかった。まさかあんな理由があったなんて知りもしなかった。
「纏衣! 着替えるわよ」
「こんにちは、纏衣君。今日もお邪魔してます」
「……清水さんこんにちは」
昨日の願いは届かなかった。
午前中を何事もなく過ごしてお昼を食べた後、僕の平穏は過ぎ去った。
呼び鈴が鳴ったなと思ったら、このあり様。ノックもなしで開けられた扉の先には姉さんと清水さんの二人がそれぞれ洋服を持って、そう口を開いた。
食後はもう少し休んだ方がいいと思うんだよね僕。この二人は僕の事なんてお構いなしだろうけど。
遠慮もなく入ってきた姉さんと一言言ってから入ってきた清水さんは流れるように僕を着替えさせた。姉さんだけでも抵抗しても無駄だったのに二人になった最近ではその気力すらなくなった。意外なことに清水さんも力あるんだよね。少なくとも僕よりは。
「流石想叶ちゃん! こんな素敵な服を作れるなんて素晴らしいわ!」
「いやー、それ程でも。ちゃんとマトちゃんに似合って良かったです」
「どんな服だろうと私が無理矢理可愛くするから安心して好き勝手していいわよ」
「えっ、何それ怖い」
「まぁマトちゃんは素材がいいですから、ちょっとのお洒落で可愛くなりますよ」
「反応に困る……」
だって僕男だよ。素材がいいって言ってくれたのは嬉しいけど、格好いいじゃなくて可愛いってどうよ。
それは置いといて、この服面白い形してる。
一見、白いブラウスと水色のロングスカートに見えるけど実はこれワンピースなのだ。二つの服の境はベルトに見えるように加工され継ぎ目が分からないようになっている。
驚くことに清水さんがあの古着でこれを作ったのだ。姉さんと同じ感想になるけど、これほどの物を作れる腕は素晴らしいと思う。
「それじゃ折角着替えたから、この可愛い服を見せびらかしに行きましょうか!」
「ええ! そんなこの服じゃなくていいですよ! 違うのに着替えましょう」
「どうせ出るなら僕もこの服がいいかな。また着替えるのも嫌だし(ボソ)」
「マトちゃん! 私、嬉しいです」
「決まりね! なら駅まで行って周辺のウィンドウショッピングと洒落込みましょうか」
と言うことで僕達は散歩に出かけた。
のは良かったんだけど……、
「なんかすごく視線感じない?」
「そお? これぐらいいつも通りじゃない?」
「なんて言うのかな。いつもより視線が強い気がする」
「自意識過剰じゃない? まぁ今日の洋服は一段とセンスがいいから女性の視線も多いんじゃないの?」
「そうかなぁ? 量じゃなくて強さが違うんだけど……」
「私的にはこんなに視線を浴びても平然としてる二人がすごいです」
商店街を抜けて駅前の広場までやってきた僕はずっと感じる視線について聞いてみた。
姉さんはそう言うけど、こんな視線感じたことない。チラッと見た感じでもぼーっと眺めてる感じでもなく僕のことをじっと見てる気がするんだよね。
後清水さんはチラチラ見られることにまだ慣れてないみたいだけど、僕はもうそんな視線なら慣れてしまった。いかんせん姉さんに集まる視線が半端じゃないからつられて僕に来る視線も多い。それが物心ついたときからだから慣れるなって方が無理がある。
何なんだろうなと考えていると、明らかにこちらにやってくる人がいるのに気が付いた。
爽やか系の大学生だ。それが三人。たぶんまたナンパだ。
姉さんに加え清水さんも可愛いからその気の男性には素敵な標的に見えるだろう。だが僕は前回みたいにならないか不安でしかない。
実際清水さんは不安そうな顔してるし、姉さんのあの顔は一気に不機嫌なものになってしまった。
「姉さん清水さん。あっちに行こ……」
「やぁ、おまたせ!」
このままじゃ姉さんが何しでかすかわからないからこの場から離れようとしたら、後ろから聞いたことのある声が届いた。
振り向くとそこにいたのは、
「げげっ! 虹川君!」
「あら、あなたは昨日の」
「虹川君? どうしてここに」
「ははっ、ここで待ち合わせしてたでしょ」
? そんなことしてないけど。もしかして姉さん達かな? ん、ああそういうことか。
チラチラと視線を送るからなんかと思ったら、あの大学生を牽制するためか。姉さん達も気付いたみたいだからここは乗った方がいいかな。
「そうだったわね。じゃあそこのカフェにでも行きましょうか」
「僕も賛成」
「そうですね。暑いですし冷たい物でも飲みましょうか」
「ははっ。俺もずっと外にいたから助かるよ」
即席ででっち上げたけど僕達がカフェに向かう頃には大学生は踵を返していた。何事も起きなくて良かった良かった。
そして、どうせだからとそのままカフェでお茶することにした僕達は適当に注文すると気になっていたことを聞いてみた。
「虹川君。まずは助けてくれてありがとう」
「何。好きな相手にちょっかいを掛けようとした輩がいたから牽制したまでさ」
「アッハイ。でもなんでここにいたの? 近所って訳でもないでしょ」
「それは女装力を鍛えるために早乙女をずっと観察してたからさ」
「は?」
「ふふっ! 彼って本当に面白いわね」
「うわー虹川君ってヤベー奴だったんですね」
えっ? どゆこと? 女装力を鍛えるため? ずっと僕を観察していた? それっていつから? て言うかこれって俗に言うストーカーだよね。
「それにしても今日の早乙女はまた一段と可愛らしい服を着てるな。あの制服調のも似合っていたが、この清楚系な服も君にとても似合っているよ。髪型もその服に合ってる」
「……っ!」
うわー今ゾワッてした! 鳥肌がすごい!
それにこの熱い視線! ずっと感じてたこの視線の強さ、間違いなくこいつだ!
つまり家出てからずっと着いてきてたって事じゃん。やべーマジモンのストーカーだよ。どうしよう、警察呼んだ方がいい?
警察にはなんて説明しようか考えていると、彼が服について述べたからか姉さんが食いついた。
「この服の良さがわかるなんて、あなたいい目をしてるわね。流石女装力を鍛えようとしてるだけはあるわ」
「ふっ。姉妹達が俺に服を選ばせるから善し悪しはわかってるつもりさ。まぁ、この服と早乙女の一体感を見れば誰であろうと良さが分かると思うがな」
「ふふ、本当に面白いわあなた。実はこれ、想叶ちゃんが作ったのよ」
「なんと! 清水さんはこれほどの物を作れるのか! いやはや素晴らしい腕前だな」
それは僕も同意見。この服はやっぱりセンスがいいと思う。事実虹川君だって褒めてるし、道行くお姉さん方もこの服見てたと思う。
「いや私なんか古着を縫い合わせたり、付け加えたりしてるだけだから、そんなすごくないよ」
「清水さん、何度も言ったけど本当にこの服は素晴らしいよ、すごいよ。僕だけじゃなく姉さんも虹川君もそう言ってるじゃん」
「マトちゃん……」
「だからもっと自信を持って。じゃないとこの服が可哀想だよ」
「マトちゃん……! わかった、私もう言わない。それにそこまで想っててくれたなんて、嬉しい。ありがとう、纏衣君」
「う、うん。どういたしまして」
まただ。この笑顔を見ると思わずドキッとしてしまう。
いつもと違うこの柔らかい笑顔を見ると、やっぱり清水さんは綺麗だなと再認識させられる。学校にいる時や服について姉さんとやりとりしている時とのギャップがすごいから余計にそう思わせる。
「おまたせしました~」
おっと、飲み物が届いた。
ハッとして清水さんを見るとそこにはいつもの清水さんがいる。それを見てちょっと安心した。
それぞれ受け取り、飲んでは喋って、喋っては飲んで興味のあること無いことを適当に話した。
そしたらあっという間に時間が経ち、特に買う物もないからと今日はこれで解散することになった。僕と姉さんは清水さんを家まで送るために、虹川君は電車へ乗るために駅まで一緒する事にした。
歩き始めて少し経ち、ちょうど駅前の広場に着いた辺りでそう言えば、と虹川君が僕の方を向きながら口を開いた。
「こんな事を聞かれるのは嫌かもしれないが」
「ん、何?」
「早乙女は、どうして女装を始めたんだ?」
「えっ?」
この質問には驚いた。と同時に虹川君、それに清水さんにちゃんと話したことなかったかもと思い返した。
「始めた、と言うかさせられたのは僕が小六の時かな。姉さんが無理矢理させてくるから、仕方なくしてるだけだよ。そこは勘違いしないでよね」
「ツンデレ?」
「清水さん違うからマジの話だから」
「ふむ。では早乙女先輩は何故早乙女に女装を始めたんだ?」
「あっ、実は私も気になってました」
「いや、姉さんの事だからただの気まぐれとかでしょ」
そう言うが実は僕もハッキリと聞いたことがない。
昔、まだ僕が中学生になりたての頃に何でこんなことするのか怒ったときは、「あなたは気付いてないかもしれないけど、あなたは私と似て可愛いわ。だから女装をさせるの。そして何より私が楽しいからよ!」なんて宣ってたのを微かに覚えている。結局は姉さんが楽しみたいからだと思っている。
「あら、マトちゃんには言わなかったかしら?」
「ちゃんとは聞いてないよ。たぶん」
「そうだっけ……? まぁいいわ。なら皆には教えてあげる。何で纏衣に女装をさせてるかを」
そう宣言すると姉さんは一度目を閉じ、何かを思い出すようにゆっくりと語り始めた。
「想叶ちゃんは聞いたかもしれないけど、私達の両親は二人ともデザイナーに関する仕事をしてるのよ」
「あっ、それマトちゃんから少しだけ聞きました」
「そうそう。付け加えると父さんは前からデザイナーをやってて、モデルだった母さんと知り合ったんだよ。それで結婚した後はほぼ父さん専属のモデル兼デザイナーとして働いてるんだ」
「そういうこと。ちなみに私もお父さんのモデルをしてお小遣い貰ってるわよ」
「そうなんですか!? 姫先輩すごいですね!」
「ほう、流石は早乙女先輩だな」
「頼まれてるから手伝ってるだけよ」
「僕からしたらお小遣いってレベルじゃないけどね」
姉さんのお金の出所はこのお手伝いにある。
姉さんがモデルをした服は採用される率が上がると父さん達が言ってたから、力を入れた服は必ず姉さんに着てもらうようにしてるみたい。それに姉さんもああだこうだと口を出してアイデアを出してるから父さん達も重宝してるらしい。
それもあってかお手伝いとしては破格の金額を貰っている。そのお金も変なことじゃなく洋服に変わってるから父さん達も喜んで渡してる節がある。
「ちゃんとモデルとして始めたのは高校入ってからだけど、私は両親のやってることがかっこよく思ってたから小さい頃からずっと仕事場に入り浸ってたのよ」
「それで勝手に生地を切ったりして怒られてたんだよね」
「今度また余計なこと言ったら、恥ずかしい格好で外に連れ出すわよ」
「止めてっ! 僕が悪かったから!」
この目はマジだ。弄っちゃダメなときの目だ。
過去に女装が嫌すぎて着替えさせられた後に脱いでゴミ箱に捨てたら、その後メイド服を着せられてそのままメイド喫茶に連れて行かれた。あの時と同じ目をしている!
「ふん、まぁいいわ。それであの日、私が中一の時もまたいつものように仕事場にいて、服作りの真似事してたんだけど、ふと一冊の雑誌を見つけたの。その本を目にして私はビビンと来たわ」
「その本にはなんて書いてあったんですか?」
「その本には、『かわいい!? 男の娘特集』って記事かあったの」
「早乙女先輩はそれを見て早乙女に女装する事にしたってことか」
「確かに、私はそれをきっかけで始めたわ。でもその記事の第一印象は酷かったわ」
そう口にした姉さんは顔をしかめ、うんざりした様子で話を続ける。
「その記事に載っていた服は確かに可愛らしい物から落ち着いた物、男性が着ても体格が出にくい服などがしっかり紹介されていたわ。でもね、それを着ていたモデル達、当然男性なんだけど、その人達が当時の私には気持ち悪く見えたのよ。角張った顔、服では隠せない体格、明らかにカツラだとわかる髪の毛。兎に角色んなところに違和感があって仕方なかった」
「まぁ、それは、残念でしたね」
「そうね。今に思えば、雇われて着ただけの人達だから仕方ないんだけどね」
清水さんの言葉に頷いた姉さんはその雑誌のモデルを思い出したのかため息をつくと、でもね、っと言葉の熱を上げた。
「でもね、その記事に書いてあったことは素晴らしかったわ」
「なんて書いてあったんですか?」
「『可愛さに壁はない。可愛さに制限はない。可愛さに性別はない。男性だって可愛い人は沢山いる。そういう人がもっと可愛くなるためにはどうしたらいいか。簡単だ。可愛い服を着せればいい。そう、可愛い子には女装をさせよ!』ってね。それを見た私はコレだって思ったわ。私だったらこんなモデルよりももっと可愛く見せることが出来る。だって近くに可愛い子がいるんだから! ってね」
「それで纏衣君に女装を始めたんですね」
「そうよ! 実際に私のお古を着せたらあんなのよりもすんごく可愛かったから、もう私は虜になったわね。私がこの可愛さを作ったんだぞ。男でもこんなに可愛くなれるんだぞって!」
「確かに早乙女は可愛いからな。私も一目で虜になってしまったよ」
「虹川君、純粋にキモい」
「はっはっは、コレは手厳しいな」
虹川君は置いといて、姉さんがそんな想いでやってたのは知らなかった。
男でも可愛くなれることを証明するために僕に女装をさせてるなんて。とは言え今のところは自己満足な気がするけどね。とか考えていたらさらに続いた話に僕は絶望した。
「それで嬉しかった私はお父さん達に言ったのよ。この記事にいいこと書いてあった。纏衣を女装させたらとても可愛かったって。そしたらなんとそれ書いたの俺ってお父さんが言うからビックリしたわよ」
「えっ?」
「それを聞いて、纏衣にもっと女装をやりたいって言ったら、お父さんも喜んで洋服くれたり、服の作り方教えてくれたわ。お母さんも一緒になって作ってくれたり、写真見ては可愛いって言ってくれたの」
「ちょ、ちょっと待って姉さん」
「ん? 何よ」
「父さん達が女装を黙認してたのは知ってるけど、今の話聞くと一緒になってやってるように聞こえるんだけど」
「そうだけど」
「……いつから」
「始めからよ。何、今頃気付いたの?」
えっと、考えよう。僕の女装は姉さんだけじゃなく父さんも母さんも関わってたってこと? つまり家族ぐるみで僕を女装させ続けてたってこと? この家に姉さんを止める人はいないってこと? 僕は女装させられる運命にあるってこと?
「あ、あ、あ」
「ちょっとどうしたのよ」
「あんまりだあああぁぁぁ……!」
「ま、纏衣君!?」
「早乙女どこ行くんだ!?」
「いきなり騒いでどうしたのよあいつは」
「うわぁぁぁん!」
その後の記憶はぼんやりしている。突然知らされた辛い現実が受け入れられなくて、その場を駆け出し部屋に閉じこもった。
思えばおかしなことだらけだ。女装して連れ出される僕を止めない父さん達。何故か女装した僕の写真を飾ってある二人の部屋。それらの元凶である姉さんや姉さんが作った服を感心したように眺めている両親。……ここまで来ると何で僕気付かなかったんだろ。普通気づくだろ。あぁ、自分が嫌になってきた。はぁ。
……いつの間にか眠っていたようで、気付けば朝になっていた。
どうせ今日は休みだし、このままうだうだしてようかと考えていたらノックの音が響いた。母さんかと思ったら姉さんだった。ノックするなんて珍しいこともあったもんだ。
「あら、起きてたの」
「うん」
「昨日、急に帰るから驚いたわよ。皆も心配してるわよ」
「うぅ、ごめんなさい」
清水さんと虹川君には悪いことしちゃったな。でも心配してくれるのは何だか少し嬉しい。
冷静に考えると、女装した男が喚きながら逃げ出すって端から見たらヤバいんじゃないの? うわー明日顔合わせづらいなぁ。
「ねぇ、纏衣」
「なに?」
明日のことを思い浮かべて顔をしかめていたら、真剣な顔をした姉さんが問いかけてきた。
「昨日はどうしてあんなことしたの?」
「それは、気が動転したって言うか。まさか父さんも母さんも僕の女装を喜んでるとは思わなくて、なんか、信じてたのを裏切られたような気がしちゃって。でも、今はもう落ち着いたから」
昨日は父さんも母さんも姉さんの味方だった。僕の味方は、女装反対派はいないんだーって錯乱してたけど、よくよく考えなくてもそれって昔からだった。いやー何で気付かなかったんだろうね。父さんと母さんから明らかに女性物の服をプレゼントされたこともあったのにね。
「ねぇ、纏衣」
「ん?」
「纏衣はさ。もう女装したくないの?」
「えっ?」
「もし纏衣が、本当に、もう女装したくないのなら、もう無理にはしないよ。今まで無理させてたみたいだし、もう高校生だしね」
「……」
僕は馬鹿だ。味方がいないわけないじゃないか。清水さんも虹川君も女装してる僕を心配してくれるし、父さん達も姉さんだけじゃなく僕の我が儘も聞いてくれる。姉さんだって、僕が本当に嫌がることはしない。……怒らせてお仕置きするときは別だけど。
それに、姉さんのあんな悲しそうな顔見たら、言うべき事は決まってるよ。
「姉さん。女装はやっぱり恥ずかしいよ」
「……」
「外に出るときはいつもドキドキするし、多目的トイレしか入れないし、清水さんの前で着替えるのは今でも頭から火が出るかと思うほど恥ずかしいし」
「やっぱり……」
「でもね。おかしな話なんだけど、今はそんなに嫌じゃないんだよ。特に清水さんにバレてからは学校で変に気を張ることもなくなった。虹川君の時もまぁバラしてもいいかなって。なんか前より前向きになれた気がしたんだ。それに昨日も何だかんだ楽しかったし」
「纏衣……」
「だから僕は、姉さんのやりたいことを止めてまで女装を止めたいとは思わないよ。それに僕が女装を止めたら、姉さんだけじゃなく清水さんや虹川君も悲しんじゃうからね」
「ふふ、そうね。そうよね」
良かった。いつもの姉さんに戻った。
僕も、しっかり口に出したから自分の内心を再確認できた。
そうだ。姉さんがいて清水さんがいて何故か虹川君もいる今が楽しい。それは僕が女装してたから出会うことが出来たんだ。
そうだ。僕はもうそんなに女装が嫌じゃないんだ。
「ふふふ、纏衣がそこまで想ってくれたなんて知らなかった。お姉ちゃん嬉しいわ。さて、想叶ちゃん話はついたわ」
「はぅ、良かったです。安心しましたぁ」
「あ、あれ? なんで清水さんがいるの?」
「纏衣君が心配で姫先輩に連絡したら今日来るように言われ来ちゃいました」
「あ、そうなんだ。心配かけてごめんね」
そんなに心配かけちゃったのか。女の子が気にかけてくれるのは、こそばゆいけどやっぱり嬉しいな。あれ? でもなんで姉さんはわざわざ呼んだんだ?
「まさか纏衣が女装を好きになってたなんて知らなかったわ」
「そうなんですか!? やりましたね先輩!」
「いや、好きになったわけじゃ……」
「そうなの! もう女装なんてしないって言われるのかと思ったら、私のやりたいようにやっていいって言ってくれたの!」
「いや! そこまで言ってないよ!」
僕そこまで言ってないよね!? 拡大解釈してるよね!?
「さて、纏衣の本心もわかったし、想叶ちゃんもいることだから」
「そうですね! こんな事もあろうかとちゃんと用意してきました!」
「えっ、なんで二人とも手をワキワキさせてるの? どこにその服を隠してたの?」
「さぁ、纏衣……」
「ねぇ、纏衣君……」
「や、やめ……」
僕の肩をそれぞれガシッと掴んだ二人の顔にはもう不安の色はなく、怪しく光った目と歪んだ笑顔が浮かんでいる。
「「お着替えしましょうか!」」
「い、いやあああぁぁぁ……」
~~~~~~~~
僕の名前は早乙女 纏衣。
最近どんどん悩み事が増えてる気がする。
それでも僕は、何だかんだ今の状況を楽しめていると思う。
「今日も纏衣を可愛く女装させるわよ!」
「姫先輩楽しみですね!」
「ふっ、いずれは俺もその輪に入ってみせる」
「なんで虹川君が家に!?」
「外にいたから連れてきたわ。見学した方が早く身につくでしょ」
「いやいや、こんな状況で着替えたくないんだけど!」
「うるさい。本心では女装したがってるのは知ってるんだから」
「たちが悪くなってる!?」
「纏衣」
「纏衣君」
「「お着替えしましょうか!」」
「い、いやあああぁぁぁ……!!」
纏衣君の悲劇(笑)はこれでお終いです。
もし続きが思い浮かんだら、また投稿するかもしれません。
そのときはまた楽しんでいただけたら幸いです。
では、最後までお読みいただきありがとうございました。




