列車と電車
これまで夜行列車に特化したことを書いてきましたが、ここで一度夜行列車を含む鉄道について、少し広い視点から書いていこうと思います。
一般に「列車」「電車」「汽車」などという言葉がありますが皆様どれほど意識しているでしょうか。「列車」というのは国交省の定義によると「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両をいう」です。つまり「列車」というのは広い定義を持っているということになります。
一方「電車」というのは機関車以外の電気で走る車両のこと、「汽車」は蒸気機関車またはディーゼルで走る車両を意味し、狭義では動力方式が限定される言葉になります。もちろん広義では「列車」「電車」「汽車」はすべて同じ意味を持ちますので区別しない人も多いと思います。
さて、このエッセイでは基本的に夜行列車、寝台列車と「列車」という言葉が使われていました。蒸気機関車牽引の列車ということからか「夜汽車」ということはありますけど、「寝台電車」、「夜行電車」などという言葉はあまり聞きません。これはどうしてでしょう。
夜行列車というのは基本的に車内で人が寝ることを想定するのですが、これはいわゆる動力集中方式(機関車牽引方式)の方が有利だと言われています。そのため優等列車の夜行はほとんどが客車列車でした。もちろん普通列車として走る夜行列車には電車や気動車の運行も多くありましたが、国鉄・JRは「列車」という言葉で案内をするのもあり、今でも「夜行列車」と呼ばれ続けているのでしょう。
では、なぜ動力集中方式の方が良いのでしょうか。それは主に騒音の問題です。電車であればモーター、気動車であればエンジン、それに加えてブレーキを動かすコンプレッサーや冷却装置などが絶えず鳴り響くことになります。一方客車はそのような大音量の機器は機関車や最低限の車両に集中して搭載されているので比較的静かです。そのような理由で電車という言葉が一般的になるほどではなかったのでしょう。
ただし、電車が使われることがほとんどなかったのではなく583系、285系という「寝台電車」の製造もありました。また近年はやりの豪華寝台列車もJR東日本とJR西日本の車両は電車や気動車の方式です。583系は当時の時代背景から車内環境より大量輸送が求められた(車内設備は当時としては十分なものだったようです)ことによるもので多少静粛性は犠牲になっていますが、それ以外はなるべく動力車を減らし、その車両は料金が安いようにしたり、乗客が寝ることのないラウンジカーなどに設定するなどとなっています。
また、技術の進歩もあって騒音も低減しており電車方式でも十分に車内環境が保て、何より電車化・気動車化によるメリットの方が大きくなった現在では客車列車はほとんど残っていません。