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結局、一般人。  作者: lithium
4/5

自身と自信

 ごーんごーんごーん

街に鐘の音が鳴り響く。その音を聞いた住民が早歩きで家々へ帰っていく。考察するにこの鐘は「夜」の始まりを告げる鐘のようだ。つまり今から夜。部屋の窓はほとんどがカーテンで閉められ、陽を避けている。今から寝るのだろう。俺がこの世界に転生したのがいつなのかは判断できないが、地球と同じ感覚で言えば確かに今は陽が落ちたくらいの時間だろう。感覚が正しければ、この世界の時間の進みは地球とほぼ同じことになる。そうであれば色々と楽なんだが。そして相変わらず陽は転生時と同じ位置である。

 「あのすいません、時間が分かる場所ってどこかにありますか?」

会話をせずにこの世界を攻略できるとは考えにくい。折角、この土地の言語が理解できるチート能力を手にしたんだ。これを使わない手はない。

「あなた、旅人かい?時間ならあのサンコルを曲がったところにあるよ。ここの夜はあまり安全じゃないから、野宿はやめた方がいい。泊まるところがないなら家にくるかい?」

「あ、はい。お言葉に甘えさせていただきます」

「なら決まりだ。僕についてきてね」

聡明な印象を与える見た目をした青年はそう告げ歩き出した。ただの憶測でしかないが、多分この人はいい人だろう。知らない人についていってはいけないと教えられてきたが、さすがにこの緊急事態だ。破らざるを得ない。

 「ここが僕の家だよ」

十分ほど歩きすでに市街地から離れ、ぽつらぽつらと民家が建っている平原に到着した。青年の家はこじんまりとしていて、穏やかな雰囲気を感じる。ファンタジー世界によくある感じのものだ。ふと郵便ポストらしきものを見る。この世界でも郵便のシステムは動いているようだ。なぜなら、彼のポストには郵便物がたんまりと押し込められていたからだ。

 「さぁ、入って」

「失礼します」

家の中は思っていたよりも整っていた。郵便ポストのように雑然としていたのかと思ったが、部屋の中だけを見ると清潔感で覆われているような印象を受ける。

「君、今までの行動からするに転生したね?」

彼が背中越しにそう確信を突く。思わぬところにだ。

「ええその通りです。あなたもですか?」

「そうだね」

とするとかなりの奇跡のようだ。思うに世界戦は無数に存在している。その中から同じ世界線に転生するのは現実的に考えて不可能だ。無限分の一は無限であるからだ。

「そうだね…。まぁこれにも理由があるんだよ」

「心の声、漏れてましたか?」

「いや、僕は思考を読み取る能力があるんだ」

なるほど、彼は能力持ちか。

「ちなみに言語って…」

「あーウリ語のことかい?これは標準でついてくるよ」

「なるほど…」

ということは俺は、能力開花ができていないか、能力なしかの二択ということか。

「まだ能力に目覚めていないんだね」

「そうなんです。まだこっちに来て日が浅いっていうのもあるとは思うんですけど」

「ギルドには行った?」

「はい。適性検査も受けました」

「そうか…。ということは、君は能力なしである可能性が高いね」

「というと?」

「説明が長いから、ぼーっとしないでね」

君が受けた適性検査って、新体力テストみたいだったでしょ?あれって、数年前から始まったんだ。元々は、もっと単純だったの。それがどうして変わったのかって、これには深い理由があるんだ。あるとき、とある日本人が転生してきた。多分これが一例目の転生かな。まぁ、その日本人は予知能力を持っていたんだ。これは予言とは違って、何かが起こる前にその前兆を感じるっていうものなんだけどね。彼はその能力を駆使して、世界を救っていったの。巨大地震から街を救ったり、噴火から首都陥落を防いだり、戦争に勝ったり。国はそんな彼の功績を認め、国の重役に置いた。それから少したって、彼はある記者に聞かれたんだ。「どうやってその能力を手に入れたのか」って。彼は「私はこの星で生まれていない。実は遥か遠くにある別の星で生まれた。私はその星で死んだ。だが、目を覚ましたらここにいて、予知能力を持っていた。もしかしたらこの世界の中に私と同じように能力を持った人がいるかもしれない」と答えた。この記事は瞬く間に世界中に広がった。勿論国にもだ。その情報を手に入れた国は、ギルドにこんな要請をしたんだ。「彼のように能力持ちがいるかもしれない。この世界出身ではない挙動や能力を確かめるため、適性検査をもっと細かくしろ」と。これによっていくつかの能力持ちを発見した。国はそんな能力持ちを、彼と同じように重役に置いた。君が来るまでは、この世界に転生された全員が能力持ちで、重役にいる。なぜ全員とわかるかって?いろいろとつじつまが合わなくなるだろ?国民が勝手に増えたら。つまり、適性検査を受けた転生民は皆能力があるってことだ。

「なるほど、つまり転生してきた人は漏れなく能力があり、適性検査で引っかかるということですか」

「あたり」

「その適性検査で引っかからなかった俺は、能力持ちである可能性が低いってことですね」

「理解が早くてよろしい」

「でも実際、まだ俺は結果は貰っていないんですよね。まぁ検査官の反応で分かりましたが」

「この国の検査官は彼女しかいないんだ。しかも彼女は、心の声が表によく現れる」

「だからあんなに訝し気だったんですね」

「やっぱりね。あ、そこに掛けて待ってて。飲み物入れてくる」

そう彼は告げると、まるで未使用なキッチンへ消えていった。

 俺は能力持ちじゃない…。ふむ、これはどうしたものか。つまり俺はこれから一般国民ということだ。今は楽しくても、いつかは楽しくなくなってしまうのだろう。いや待て、俺には能力が無くて、他の人には能力がある…これって、能力を理論的に説明できるってことじゃないか?皆に付与されるはずの能力がない。つまり、それは必ずではないってことだ。もし全員に付与されるなら、それは明らかな「チート」であるが、そうでない因子がいることによって、その能力が付与される条件が存在していることを示している。なら、俺はこれを解き明かすことを職にすればいいのではないか?もしこの謎が解明されれば、その「チート」は普遍的なものとなり、よりこの世界に貢献できるはずだ。あれ、なんで俺はこの世界に貢献しようと思ってるんだ?あ、そうか、対抗心か。って、自己解決してしまった。

「そんなに考え込んでどうした?あ、これ、ヤガ。日本語で言うところの柑橘系のお茶かな」

「ありがとうございます、俺、柑橘系のお茶好きなんですよ」

「それはよかった、じゃ飲んで飲んで」

「はい、ありがとうございます」

湯気が立ち上るティーカップに口をつける。鼻に柑橘系の良い香りが入ってくる。

「ん、この味…」

俺は違和感を感じ、カップから口を離す。

「…どうした?」

「これ、シアン化合物、青酸カリ入ってますよね」

「正解、引っかかんなかったか」

「シアン化合物、青酸カリの致死量は成人で約300mg。このお茶は見る限り300ml。青酸カリの溶解度は25℃で100mlに約71g。今飲んだ量は多分1mlくらいだ。ということは単純計算で約71mg。ということは死にはしないですね」

「やけに詳しいね」

「一応理系なので」

「じゃ、治療方法は?」

「吐いて胃洗浄、酸素吸入と亜硝酸アルミの吸入を15秒ずつ5回程、亜硝酸アルミの静脈注射…でしたっけ」

「正解」

「なんで入れたんです?」

「君が本当に能力が無いかを見たかったんだ。だけど、この感じだと知識で負けたってことかな」

「能力じゃないのがあれですけどね」

「ま、気を落とすなよ。そのくらいの知識があればさっきの考えが職にできるな」

「やっぱ聞いてたんですね」

「言葉遣い的に理系かなって。どの分野なのかはわからなかったから賭けだったけどね。そうだ、寝室はあっちだよ。朝になったら起こしに行くね」

彼は奥の部屋を指さす。この家は見かけによらず広い。

 「その前に一つ聞いていい?青酸カリの廃棄方法って何だっけ。さすがに自然を破壊したくない」

「わかりました。お茶に入れた量はいくらですか?」

「致死量」

「ということは300mgですね。質量パーセント濃度は50%…中濃度ですかね。中濃度では一般的にはアルカリ塩素法ですかね。ここに、水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムと塩酸はありますか?」

「あるよ。趣味だからね」

「では分解しますか。ただ、私も知識だけなので成功するかはわかりません」

「了解、じゃあ僕についてきて」

彼の後をついていく。作業場はこの家ではなく、離れであるようだ。

「ここだよ」

目の前には所謂プレハブ小屋がある。ここが彼の作業場であるようだ。


 「じゃ、入って」

中には薬品を調合する設備が整っている。もはや趣味の範囲をこえている。

「ではいきますか」

先ずは水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムでpH10~10.5、ORP+300~350mVにする。このとき、シアン酸ナトリウム、塩化ナトリウムに分解される。

次に、塩酸でpH7.5~8.5、ORP+600mV超にする。このとき、二酸化炭素、窒素、アンモニウムイオン、塩化ナトリウムに分解される。

「よし、おわりです」

「ありがとう、じゃおやすみ」

「はい」

お疲れ様です。

自分の知識だけでは少し自信が無かったので、wikiを多少参考にしました。

なので間違っている箇所があるかもしれません。

日常にしたかったのですが、なんか賢くなってしまいましたね。

これからですが、 途中で決心したとおりになっていきます。

では。

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