駆け引き2
それからは、精神的に疲れていった。三日に一度、ホントに些細な事でメールをしてくるのだ。ある種ストーカーに値する。
『兄弟は何人?』
『何部だっけ?』
『体育祭の種目は何に出るの?』
普通なら、何かしら気が付くモノだが、レイは何一つ感づかない。うざい奴がウザメールを送ってくる。それだけだった。しかしレイは何も考えずに律義に返信していった。
『……下に弟が二人いるけど。』
『……吹奏楽部のパーカッション……打楽器だけど。』
『……ムカデ競争。』
「……それは怪しいね……。」
同じく一匹狼の羽佐間千波が、レイの話に首を傾げた。友達とも言わない、軽い関係である。
「……訳が分からない。何なの、あの男?」
「……さぁ?」
確かに、あの男……松居勇治の考えを二人には理解できなかった。それが、人との関係を断っていた二人の思考力だった。彼女達は人間の感情を受け取れなかったのだ。何をされても、嫌がらせとしか受け取れない。クラスメートは、そんな二人を敬遠していた。
高校はめんどくさい。しかし、驚くべき事もある。容姿端麗、頭脳明晰、純粋無垢な女子が、クラスにいたのだ。松居勇治は、高校生にして初恋をした。自分の、好きな女性のタイプを全て兼ね備えた女性に、やっと巡り逢えた。……初恋だから、アプローチの仕方など分からない。彼女は人に興味ないようにも見える。しかし、アタック精神さえあれば、成せばなる。そう思っていた。少しでも気持ちが傾いてくれれば……満足だった。