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第拾話 過去の記録、元最強の戦術

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―――五年前 都内銀行


「巳弥は今日の晩ご飯は何がいい?」

「んー?母さんの作るご飯だったらなんでもいいけど」


 当時十二歳の巳弥は自分の母親の問いに答えると母親は、恐らく笑顔だと思われる表情になった。


「そう。じゃあ晩ご飯は二人の好きなカレー作ってあげる」

「ありがとう母さん」


 未だ顔を黒く塗りつぶされた母親の言葉にニコリと笑顔を作る。その時は自分たちの身に何が起こるのか、そんなことは知りもしなかった。

 突然、背後で鼓膜が破ける音がし、銀行内にいた人々はその音の出所に視線を向ける。そこには黒い目出し帽を被った三人組の男達が立っており、中央に立つ男は小さな銃、拳銃の銃口を天井に向け、発砲していた。そして二人は共にアサルトライフルを所持しており、視線を向けた人々に銃口を向ける。


「キャーー!!」


 誰かの甲高い叫び声が上がり、それを皮切りに人々は叫ぶ。


「大人しくしろ!」


 アサルトライフルを構えた男の一人が大声を上げ、一人の男性に発砲する。フルオート状態だったのか、十数発の弾丸が男性の背中を撃ち抜き、流血し男性は絶命した。

 衝撃的な光景に尻もちを搗き動けなくなる人や、壁に身体を預ける人、様々だ。そしてリーダーだと思われる拳銃を持った男が受付にいた女性に銃口を向けた。


「おい、ここの支店長を呼べ」

「はっ、はい!」


 パタパタと女性が奥へ駆けてゆき、シャッターを強盗の仲間が下した十数秒後に支店長と思わしき中年の男性を連れて戻ってきた。刹那一つの銃声が響き渡る。


「恨むなら、こいつを恨め小僧」


 一瞬、何故そう言われたのか理解できなかった。だが

次の瞬間には嫌でも理解した。ドサリと隣に立っていた母親が倒れた。ゆっくりと其方を向くと心臓を銃弾で穿たれ、血を流す母親だったモノがあった。視界に広がる赤は鮮血。膝から崩れ落ち、母親だったモノに触れた。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」


 自分でも理解できない程大きく叫んだ。その時だ、


「突撃ィ!!」


 下ろされたシャッターをぶち破り、特殊部隊と思われる隊員たちが流れ込んできた。拳銃の男は慌てて拳銃のトリガーを絞った。そして運悪くその弾道にいた巳弥の左目を貫き、男達は拘束された。

巳弥は自分自身に受けた傷の痛みよりも、母親を奪われた絶望が強かった。その後、特殊部隊に保護され、軍が所有する病院に入れられたが、その三十分後、彼ら家族に母親は死亡したと伝えられた。


 ✝ ✞ ✝ ✞ ✝ ✞


―――???


「どうだった?自分の過去に回帰するって強引なタイムスリップってやつは」

再び視界が鏡合わせの空間に戻った。不思議な感覚であったのだ。影は少し晴れ、姿が薄く見えてきた。

「……気持ちわりぃな。なんだこれ」


表情を歪め、先程まで見ていた光景を思い出す。

過去の記憶、それは巳弥自身覚えていないことだった。それを強制的に呼び起こされ、気分が悪く、吐き気すらしてくる。


「まあ、これがお前自身が入院している理由で、未だに病院から出されていない証拠だ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。じゃああのPCやらVR機器って誰が……」

「あれは国の税金で支払われ、お前に与えられたものだ」


 あまりに衝撃が大きく本当に訊きたいことを訊けない。何故ならその現実を突き付けられるのが嫌だからだ。その事実を知ってしまうと否定出来なくなるのだから。だが、訊かずにはいられない。


「あぁ、何が訊きたいのか、わかったよ。親の事だろう?母親はさっき見た光景の通り、死んだ。そして父親は一昨年死んだし、それともお前の――」

「もういい……」


 未だ薔薇に巻かれた昔の自分を見つめ――ふと気が付いた。薔薇の本数が減っているのだ、確実に。


「一体……どういうことだ?お前なら知ってるんだろ?」


 先程視線を外したばかりの影を見て、わかった。


「……こいつとお前が本来の姿に戻る条件は俺に全部思い出させること、なんだろ?」


 巳弥の問いに口角を上げることでもう知った。


そういうことなのか。


「訊かせろ、こいつとお前が戻るまで、過去の記憶を」

「いいだろう、それがお前にとっても俺にとっても有益なことになるからな」


 そして影は更なる封印された記憶を開放した。


 ✝ ✞ ✝ ✞ ✝ ✞


―――地球 サーバー管理室


「おい、この試合もう終わったろ。こいつ気絶してるし、強制ログアウトさせていいか?」


 デュアルモニターを監視していた男が一人、そう隣にいる同年代らしき男に訊く。


「あん?あぁ、あの無駄にフルダイブリンク値が高い奴らの試合か……どれどれ?………いいぞ、もうHPもレッドゾーンだし、もう死んだろ」


 と、強制ログアウトをさせようとキーボードに手をかけた瞬間だった。


「…ん?なんだこれ」

「え?何が?」


 隣に座っていた男が立ち上がり、デュアルモニターを覗き込むようにして映る映像を見る。


「おいおい、どうなってんだよ。フルダイブリンク値がとんでもねぇ速さで上がってるんだけど!?」


 突如、デリートデータを確認するソフトが警告を出した。甲高い不快な音が鳴り響き、データが抜かれていくという旨の警告だ。


「なんだ?こっちがエラーを吐き出したぞ」


 破棄された筈のアバター情報が復元され、『Marylean』のアバターデータに情報が書き換えられていく。スキル、剣技、極剣技、剣技スキルの熟練度と共に習得データが出来、レベルが急速に上がっていく。


「おいおい……冗談じゃねぇぞ。なんだよ、このリンク値……」


 『Marylean』の示すリンク値が百パーセントを超え、レッドを超え、エラーを吐く。警告文がデュアルモニターを埋め尽くし、強化されていく。


 ✝ ✞ ✝ ✞ ✝ ✞


―――フィールドエリア ファーヴフロスト


 目を開ける。吹雪が頬を打ち、体温を下げる。視界は赤く染まり、HPバーはレッドゾーンに突入している。だが、身体は軽い。


「結構手こずったけど……やっぱりこんなもんか」


 慎二のHPバーがイエローなのを確認し、ユラリと立ち上がる。ゆっくりと立ち上がる『Marylean』を見て驚愕を浮かべる。


「おいおい、そんなHPでまだ立つのかよ」


 朧げに聞こえる言葉を流し、アイテムストレージが開く。武器を全てドラックし、外へ排出した。上空にアイテムストレージの扉が開き、武器がフィールドに降り注ぐ。


「最後の足掻きか……?」


 降り注ぐ武器を弾き、此方を見据える慎二。だがこれでいいのだ。


「これが俺の戦術……《ワールディング・オブ・ウェポン》」


 手始めに大斧を走り際に引っ掴み、慎二に振るった。慎二は焦ったように剣でガードする。やはり武器の格が圧倒的なようで大斧が砕け散る。見た目以上に慎二の持つ剣が強いのだろう。仮にも中堅武具である大斧を砕いたのだ。慎二はその攻撃の重さに飛んで行ったが、やはりこの戦術は『Marylean』しか使えないのだろう。何故なら『Marylean』のように武具を集めるプレイヤーは居らず、様々な武具の熟練度を上げるプレイヤーはいないからだ。


「慎二、最終ラウンドだ。覚悟は出来てるか?」


 視界の奥で立ち上がる慎二を見てそう、言い放った。


ギリギリ間に合ったので投稿しました('ω')

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