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Lv.013 第三話① 魔王は鳴かずも討たれちゃう?

 ──明日からオーブ集めを始めると決めた俺とプラム。プラムは家にある古い本を読んでいる。何か少しでも手がかりを探している様子。


「そういえば、プラム。お前って料理はどうしてるんだ?」

「えっと、目玉焼きとトーストとサラダくらいなら作れますよ」


 本を読みながらそう答えるプラム。それじゃあ朝ご飯だろ……

 リアルの俺もプラムと大差ない料理しか作れないが、ゲームならなんとかできるだろうか。


「おっ、料理スキルあるじゃんか」


 俺のステータス内のスキル一覧に料理スキルを発見した。

 食材アイテムを組み合わせて調理道具アイテムに入れるとミニゲームが始まって、それに成功すると料理が完成するらしい。レベルは初級だが、それなりの物は作れそうだ。

 しかし、料理スキルを持った魔王って、どんだけ所帯染しょたいじみてるんだ……


「プラム。今晩は俺が何か作ってやるよ」

「え……えええっ! ユーゴ様のお手をワラずらせるわけにはいきませんよ!」


 ひどく驚いて鯉のように口をパクパクさせているプラム。


「わずらわせる、な。笑ズラせるってなんか笑うわ」

「うっ……本当によろしいのですか?」

「いいっていいって。料理してみたいしな」


 というわけで、台所に移動した俺は冷蔵庫のような棚を開ける。

 棚の中では青い石が光って冷気のようなもやを出している。どうやら魔法の石で冷やしている冷蔵庫のようだ。


「うーん。本当に朝食みたいな材料しかないな。調理道具もフライパンしかないし……」


 ま、仕方ない。俺はフライパンに牛乳と卵と食パンを入れる。たぶんフレンチトーストか何かできそうな組み合わせだ。

 すると、カウントダウンが始まった。説明欄にはこう書いてある。

 『横から流れてくるボタンをタイミングよく押してください』──と。


「まさかのリズムゲーム!? 料理に何の関係があるんだよ!」


 つっこんでると、否応いやおうなしにボタンのマークが流れてきた。

 とにかく表示されたボタンをタイミングよく叩いていくが……


「な、なんかこれ思ったより……タイミングがシビアだな」

「ユーゴ様が踊りながら料理を作られてます。あれがユーゴ様のスタイル……ステキです」


 後ろでプラムがなぜか感動してるが、今は相手をしている余裕はない。

 そして、画面にはフィニッシュの文字。百点満点中、九十六点だった。くっ……なんか無意味に悔しい。


 続いて画面に『できばえLv.(レベル)MAX(マックス)の〈エッグトーストグラタン〉が完成した』と表示され、フライパンの上にグラタンが出現した。

 サイコロのように小さく切ったトーストに卵がジワリと染みこんで、その上にトッピングされたチーズがとろりと溶けて焦げ目がつけば、食欲をそそるアツアツの一品のできあがり!


「──って、待てぃ! なぜフライパンでグラタンができるんだ!? トッピングのチーズとグラタン皿はどこから出てきたんだよ!?」


 そもそもフライパンの上にグラタン皿が載ってる時点で違和感があるが……

 いかん。ゲームに真面目につっこんでどうするんだ。こんな超常現象なんてゲームなら茶飯事さはんじじゃないか。


「……プラム達が生きてる人間みたいな分、こういうゲームっぽいことが身近で起きると違和感がハンパないな……」


 俺は苦笑いしつつ、できた料理をプラムの元に持っていく。


「ほら、できたぞ」

「こ、これは……こんなスバラシイお料理は初めてです!」

「まあ、なんたって最高のできばえだからな! 冷める前に食っちまえよ。ただ熱いから気を付けろよ」

「はい。お言葉に甘えていただきます!」


 ……マジで所帯染みてきたな。俺、一気に老けた気がしてきた。


「あれ? でもチーズなんて冷蔵庫にありました?」

「お前がそれをつっこむのかよ……」


 中途半端にリアル志向のこのゲーム。ノリが未だにつかめない。

 ただひとつ確信した。このゲームは変なゲームだっ!



 ──ささっと食事を終えると、プラムは何やら着替えの服を用意し始めた。


「何してんだ?」

「お風呂です」

「お前って風呂入るの!?」

「入るに決まってるでしょ。ユーゴ様」


 今度はムダにリアル志向だな、おい……


「この家に風呂場なんかあるのか?」

「いえ。だから、いつも街の『銭湯』に行ってます」

「銭湯って……」


 ヨーロッパ風の街にヨーロッパ風の人々が住んでるのに銭湯の文化がある。いや、待て。ヨーロッパにも銭湯はあるんだったっけ?

 いかんいかん、真面目に考えちゃダメだ。キリがない……


「公衆浴場、と言った方がよかったです?」

「いや、銭湯は知ってるから。じゃあ、行くか」

「え。ついて来てくださるのですか!」

「もうとっくに日が暮れてるのに子供をひとりで外に出せないだろ?」


 そう答えると、プラムは嬉しそうに俺の手を引いて外へ向かう。


「わーい! 行きましょ、ユーゴ様!」


 こうして俺達は再び街の中へと向かった。目指すは街の銭湯だ。





 ──さっき魔族と戦った公園に差しかかった。破壊された街並みは元に戻ってはいない。

 騎士らしき数人の人影も見えるが、男達ばかりでフランセ達の姿はなかった。


「……あれから一回セーブしてゲームを終わらせて、それからリアルだと一日経ってから戻って来たのに、風景は復元されないんだな。こういうところは徹底してリアル志向だな……」


 立ち止まって辺りをぼんやりと見回して俺はつぶやいた。本当にこのゲームはつかみどころが難しい。

 真面目なのかギャグなのか。いや、ヒロインが変身少女アレだと、どこまでいってもギャグかもしれないけれども。


「──って、あれ? プラム?」


 ふと、プラムがいなくなってることに今さら気付いた。あいつ、勝手にどこか行きやがって……って、違う。


「これって、俺が迷子になってねぇか……」


 立ち止まった俺に気付かずに先に行ってしまったプラム。

 マップを開いてもどこにいるのかわからない。銭湯がどこかも書かれていない。何のためのマップだ、コレッ!?


 と、頭を抱えた瞬間、画面が切り替わってプラムが目の前に出現した。


「きゃっ! ビックリしました……。よかった、ユーゴ様。はぐれたことに気付いて引き返そうとしてたんですよ」

「俺がワープしたのか。たぶん一定以上プラムと離れると、勝手にそばまでワープする仕組みになってるんだな」


 便利なのか足枷あしかせになるのか。とりあえずプラムのそばにいないといけないルールなのだろう。


「なんだか、それ……運命の赤い糸みたいですね」


 赤面してモジモジしているプラム。少女趣味だな、それ……


 それから街を北に向かって歩き、大きな城の近くまでやって来た。ここは王都らしいから、王様の居城きょじょうだろう。

 暗くてよく見えないものの、石造りで天を突くような高い屋根がいくつもそびえ立つその城は、よくゲームにも出てくるヨーロッパ風の城だ。もちろんファンタジー要素が混ざっているだろうから、リアルでは実現不可能な建築技術を使ってるのかもしれない。


 歩きながら城に見とれていると、プラムが「着きましたよ」と言って立ち止まった。

 ようやく、そんなこんなで銭湯に到着したのだが──


瓦葺かわらぶき屋根の木造建築、暖簾つきの入り口……。なにこの清々(すがすが)しいまでの純和風っ!」


 ……もう、つっこんだら負けだ。城とのギャップがすさまじいが、銭湯のたたずまいに関しては無視しよう。


「あら? あなた達……」

「げっ!」


 プラムがあからさまに嫌がる顔になって驚いている。聞こえた声はフランセのものだった。


「ふふっ。本当によく会いますね、私達」

「お、おう。そうだな……」


 完全に仕組まれてる気もしなくもないが、三度みたび四度よたびの遭遇だった。

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