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Lv.012 第二話⑥

 プラムの家である古い教会に帰宅した俺とプラム。

 王都は落ち着きを取り戻しただろうが、俺はなんかどっと疲れてしまった。


「それで、プラム。これからのことだが」

「英雄をぶちのめすのですね!」

「違うっ!」


 話が飛躍しすぎてて、状況がつかめなくなってきたぞ……


「まずは俺の力を取り戻すためのオーブを集めるって話だったろ? だから、オーブを持ってたお前の家に来たんだろう?」

「そういえばそうでしたね……」


 英雄を意識しすぎて頭に血が上ってるな。大丈夫なんだろうか、この子。


「とりあえず、話を整理させてくれ。俺が力を取り戻すには〈剣のオーブ〉みたいなオーブを集める必要がある。それで合ってるな?」

「はい。〈降魔ごうまのオーブ〉を除いて、十二のオーブが世界中に散らばっていると聞いています」

「なら〈剣〉の他に、あと十一個のオーブがあるということか。でも、力が十二個に分かれちまった原因は、やっぱり英雄のせいか?」


 そう尋ねると、プラムは真剣にうなずいた。


「昔、魔王様と戦った〈戦女神の英雄〉が魔王様を封印する時に、万が一、魔王様に復活されてもすぐに力を取り戻させないように、魔王様の力をバラバラにしてしまったようです」

「ふむ、なるほどねぇ……」


 そして、現代の〈戦女神の英雄〉であるフランセは、魔王である俺が力を取り戻すのを阻止しようとしてる──って感じだろうか。


「でもさ、力をバラバラにして封印するくらいなら、息の根を止めればよかったのにな」

「ハッ……!」


 今、気付いたって顔で息をのんだぞ、こいつ……


「ごめんなさい。今、話したのはわたしが知る『戦女神の伝説』の結末なのですが、戦女神の伝説にはいろいろ残されてて、何が本当とかわからなくなってしまってるんです……」

「伝説ってそんなもんだろ? 気にするな」


 だったら、プラムが知ってる魔王の伝説も曖昧あいまいかもしれないな。

 フランセもプラムとは別の伝説を信じている可能性はあるし、また会う機会があれば聞いてみたいところだが……


「とりあえず〈剣のオーブ〉が実在してたなら、残りのオーブも実在している可能性は高いはずだ。いつ強い魔族が出てくるかわからないし、英雄と本気で戦いたいなら、まずはやはりオーブ集めだな」

「わかりました。その方向でわたしも調べてみます。この王国のそれらしい場所の目星は、いくつか立ててますので、明日、研究施設に行ってもう一度確認してみますね」


 プラムは笑顔でうなずいた。

 ああ……やっとこれで一段落ついたか。リアルの時間も日付が変わりそうだし、明日も予定があるからそろそろ終わるか……


「って、俺が中断したらどうなるんだ?」

「はい? 中断って、何をです?」

「ああ、いや……」


 ゲームをセーブして中断して終わる。そんな行為はごく当然にやってきたことだ。このゲームだってそんなゲームと変わらない……はず。


 ゲームの世界と現実世界の時間の流れが同じなはずがないし、『中断する』というリアルの都合つごうがゲーム世界の住人に影響するとも思えない。

 つまり、俺が中断すればプラム達の時間も止まるということで、たぶん、プラムには自覚は生まれないだろう。明日、再開してもこの直後から再開できるはず。


「あ、ユーゴ様。わたしったらお飲み物も出さずに失礼しました。今すぐご用意しますね!」

「へっ? あ、おい……」


 プラムは台所の方へ走って行ってしまった。ま、いっか。今のうちに中断しとこう。


 ──俺はセーブをして、テレビとゲーム機の電源を切った。

 そして、ヘッドセットをはずしながら、もうすっかり冷えてしまったコーヒーを飲み干して、ふと部屋を見渡す。

 そこはしんと静まった、いつもの俺の部屋。


「……なんか()()()()()感があるのは、なんでだろうな……」


 プラムやフランセ達は本当に生きている人間のように俺と接していた。彼女達と話しているうちに、ゲームの世界に没入してしまっていたのだろうか。

 ただテレビの前に座ってゲームを遊んでただけのはずなのに、さっきまでゲームの世界にいた気分になっている自分に気付いた。


「それにしても日本のAI技術って、いつの間にこんなに進歩してたんだ……?」


 まるでゲームをかいして異世界にテレビ電話が繋がってた気にも思えて、俺は自嘲じちょうして頭を掻きながら立ち上がる。

 なんだかキツネにつままれた感がすごいが、変な汗をいっぱいかいたのでシャワー浴びてさっさと寝よう……




 ──翌日、昼間は普段の生活をして帰宅後、俺は再びあのゲームを再開する。

 一日ぶりに降り立ったゲーム世界。再開場所は昨日中断したプラムの部屋だったが、目の前にうずくまっているプラムを見つけてギョッとした。


「……プラム?」


 俺の声に反応して顔をあげたプラムの顔は、目が真っ赤で鼻水も垂らしている。泣いてたのか?

 俺の顔を見ると、プラムはどんどん顔をクシャクシャにして大声で泣き始めた。


「ユーゴ様ぁ……戻って来てくださいましたぁ……わたっ、わたし……突然、ユーゴ様が消えてて、どうしたらいいのかわかんなくてぇ……」


 俺の体にしがみついて泣き叫ぶプラム。子供嫌いな俺にとって泣く子は最悪であるが、状況がイマイチわからない。

 俺が突然消えたってことは……まさか、セーブして中断するとこっちの世界じゃ消えるのか。時間も止まらずに流れ続けてたみたいだ。


「ユーゴ様ぁ……ユーゴ様ぁ……」

「ああ、ウザい。もう泣くなよ、勝手に消えたことは謝るから!」

「だって……わたし、ユーゴ様に見捨てられたのかと思って……」


 俺に抱き付いたままぐずぐずと泣き続けるプラム。泣いてる子のあやし方なんて知らねぇよ……

 困りながら適当に視点を回していると、俺は床にひっくり返ったままのティーカップとお盆を見つけた。

 お茶を用意してきたら俺がいなくなってて、驚いて手から落としたのをそのままにしていたのだろう。床がこぼれたお茶で濡れている。


 なんかすごい罪悪感だ。時間が止まると思い込んでたとはいえ、昨日の中断の仕方はマズかったか。何も言わずに消えるなんて、プラムにはショックが大きかっただろう。なんだかんだいってもこいつはまだ子供だ……


「えっと……一日中、お前はここにうずくまって、俺が戻るのを待ってたのか?」

「いえ……ちょうど一時間くらいです……」


 時間の流れ自体はリアルの世界とは違うようだが、止まるってわけじゃないのか。なんて面倒くさいシステムだ!


「いや、一時間でもつらかったか」

「大丈夫です。戻って来てくださったのなら……」


 ようやく涙を拭いて、プラムはニコリと笑った。

 その笑顔を見て、俺の罪悪感がピークに達する。


「……悪かった。今度から消える時は前もって言うから」

「えっ! また消えちゃうんですか!」

「そ、そりゃあ、俺もずっとこの世界にいるわけにもいかない状態でだな……」


 なんて説明すればいいんだ、これ……

 すると、プラムはなぜか目を輝かせる。


「魔界に戻ってパワーをたくわえるのですね! さすがです! わたしこそ、そんな魔王様の習慣を知らずに取り乱してしまってごめんなさい! ユーゴ様は悪くありませんよ!」

「ああ、そう。うん……もうそれでいいよ……」


 良くも悪くも納得してもらって、プラムってこういう子だったと俺は苦笑するしかなかった。



 ──不思議なこのゲームのシステムに不慣れなまま、戸惑いつつも旅は始まる。目指すは世界に散らばっているというオーブだ。

 でも、その前にプラムとのコミュニケーションに慣れないとな……ああ、不安だ。

第二話 魔王も歩けば英雄に当たる?

             Clear!

 第三話 魔王は鳴かずも討たれちゃう?

           Now Loading...

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