武術大会開始
予選が始まる前、出場する選手は全員が控え室へと集まっていた。部屋は300人が入れる程の広さを兼ね備えていた。
「遥香お姉ちゃん、もうすぐ始まるね?」
「そうですね。周りを見る限り私達より強い人も居るみたいですね。」
「そうみたいだね。僕達より強そうな人ばかりだよ。」
屈強な男達に混じり、子供である遥香、紗良、優真が話し合っていた。三人は辺りを見回し自分達と同じ年代を捜してみるが見つからなかった。
『それでは、これより武術大会予選を開始したいと思います!予選第一グループの方々は闘技場にお集まりください。』
場内アナウンスが響き渡る。
「始まるみたいだね。遥香お姉ちゃん、頑張ってね!」
「遥香お姉ちゃんなら決勝トーナメントに行けるよ。」
紗良、優真の順に遥香に頑張れと声をかけた。
「もちろんです、先に決めてきますから。」
遥香はそう言い残し控え室を出ていった。
場所は変わり予選が行われる闘技場。
観客は満員で熱気に溢れていた。そんな中、実況の声が響き渡る。
『これより第一回武術大会予選を開始いたします。予選は八グループに別れておりバトルロイヤルで残った二名が決勝トーナメントに進むことが出来ます。ルールは至って簡単です。相手を闘技場から落とすか気絶もしくは降参で勝敗が決まります。但し、殺してしまった場合は失格になりますので注意してください。』
実況がルール説明をしている中、その隣には久遠達がよく知る人物が座っていた。
『それでは、解説者の紹介です。帝国の宰相である亜里沙様です。』
『ご紹介にあずかりました亜里沙と申します。解説者として至らぬこともありますがよろしくお願いいたします。』
亜里沙が自己紹介をすると歓声が上がった。
『では、予選第一グループから始めたいと思います。既に、選手は闘技場に集まっているようですね。それでは、始めたいと思います。試合開始!!』
実況の開始の合図が木霊した。
(さて、どうしたらいいのでしょうか?開始の合図があっても誰一人として動かないですね。先に動くのは愚策のような気もしますが・・・。だからといって動かないのも・・・。)
遥香が考えていると明らかに雰囲気が変わった。その直後、数人が一斉に動いた。
それを見た遥香も動き、近くに居た男へと向かっていった。
遥香は剣を抜かず、素手で男の腹に一撃を入れた。
「ぐぇ!」
一言言った直後、男は闘技場の外へと落ちた。
一方、数人の男達が襲いかかったのはフード付きのローブを着た者だった。フードを被っているため男か女かわからない。しかし、男にしては身長が低い気もする。
ローブの人物は攻撃をかわしながら襲いかかってきた男達を闘技場の外へと落としていった。
二十人居た選手も半分になり、今ではローブの人物と遥香に集中していた。
(あのローブの人は、相当強いですね。出来ればここでは戦いたくありません。なら、とるべき手段は一つですね。)
そう考えた遥香はローブの人物以外を戦闘不能にするように動いた。
結果、残ったのは遥香とローブの人になった。
ローブの人も遥香に注意しながら他の選手の相手をしていたため、このような結果になった。
『試合終了!!予選第一グループの勝者はハルカ選手とローズ選手に決まりました!アリサ様、このお二人は圧倒的な強さでしたね。』
『そうですね、どちらもまだ本気では戦っていませんでしたし。』
『な、なんとあれで本気ではなかったと?』
『はい、お二人は武器を使っていませんし魔法すら使っていませんでしたから。』
『確かにそうでしたね。興奮が冷めないうちに次の試合に行きたいと思います。ハルカ選手とローズ選手は控え室にお戻りください。』
実況の言葉に従う遥香とローズ。入れ替わりで第二グループが闘技場に現れた。
「流石、遥香お姉ちゃん、おめでとう!」
「おめでとう、遥香お姉ちゃん。僕達も負けてられないね、紗良お姉ちゃん。」
「二人ともありがとう。」
決勝トーナメントを決めた遥香に紗良と優真はお祝いの言葉をかけた。
「次は紗良ね。油断したら駄目ですよ?」
「わかってるよ、いつもパパにも言われてるから。」
「紗良お姉ちゃん、頑張ってね。」
「うん!」
第二グループの試合も終わり、紗良が出場する第三グループの試合が始まろうとしていた。




