紗良VS神狼
紗良と神狼との戦いが今まさに始まろうとしていた。
「狼さん。名前は何て言うの?」
『我に名などない。もし、お主が勝てたなら我がお主の獣魔になろうではないか。その時にでも名をつけるがよい。』
「ほんと?」
『勝てたらな。』
「ヤル気が出てきたよ。早く始めようよ。」
『我に勝つ気でいるのか?まぁ、よいわ。では、始めるとするか。』
そう言うと神狼は後ろ足に体重を乗せた。と同時に紗良も剣を構えた。
「皇 久遠が次女、皇 紗良参る!」
名乗りを挙げた紗良は神狼に向かって動いた。
『むっ、速いな。小娘と侮ると痛い目をみそうだ。』
神狼はすぐに紗良の実力を見破る。しかし、紗良の実力は神狼が思っている以上である。それを知ることは神狼でも叶わなかった。
「くすっ、まだスピードをあげるよ?『ブースト』」
更にスピードをあげる紗良。気付けば紗良は神狼の目の前まで来ていた。
『なっ!有り得ぬだろう?なんだその速さは?』
神狼は咄嗟に後方に飛び退いた。しかし、体重を後ろ足にかけていたため反応が少し遅れてしまった。その隙を見逃さず紗良は剣を振る。
「遅いよ?」
紗良の剣は神狼の前足をかすった。
『ぐぅ、反応が遅れたか。にしても我に傷を負わせるとは。小娘、やる・・・居ない?』
そう、後方に下がった神狼は紗良を見失った。
「後ろだよ?余所見してたら駄目だよ?」
紗良の声は神狼の後ろから聞こえてきた。神狼は後ろを振り向こうとしたがやめ、前に飛び退いた。
「あれ?今ので終わらせるつもりだったんだけど。中々上手くいかないなぁ。」
紗良は、剣を振り抜いた状態で飛び退いた神狼を見つめていた。
『な、中々やるではないか。流石に肝が冷えたぞ。』
神狼は、紗良と距離が出来たため改めて紗良に向き直る。だが、神狼は言葉とは裏腹に紗良に勝てるとは思わなかった。いや、勝てる気が全くしなかった。神狼は、紗良との実力差を今確信したのである。
「次で終わらせるね?覚悟してね?」
『そう簡単に終わらせぬよ。我も最大の技で相手をしてやろう。』
そう言うと紗良と神狼は改めて構え直した。
そして・・・。
「皇王天翔覇!」
『神狼冥王波!』
紗良は剣から不死鳥を象ったものを放つ。そして、神狼は自身を象ったブレスを放った。
二つの技は中央でぶつかった。
ドォォォォォォン
土煙が舞い上がり辺りを隠す。
土煙が晴れた中央には紗良の不死鳥だけが残っていた。それを見て神狼は呟いた。
『負けたか。お主の勝ちだ。』
神狼の言葉で紗良は不死鳥を消し、剣を鞘に戻した。
「ギリギリだよ?私の方が少し上だっただけだから。」
『敗けは敗けだ。お主の獣魔になろう。』
「獣魔だけど私の、私達の仲間だよ。」
『そうか、仲間か。いい響きだな。名をつけてくれるか?』
「うん。狼さんは女の子?」
『そうだ、メスだ。』
「じゃぁ、サリア。狼さんの名前はサリアだよ。」
『うむ、いい名前だ。これからはサリアと名乗ろう。』
こうして、紗良に神狼のサリアが獣魔になった。と同時にダンジョンが攻略された。




