ボス戦の前
見るからにボスが居ますといった扉が目の前にある。扉を見た久遠達はそれぞれ呟いた。
「二階層で終わりなんだな。普通ならもっとありそうなんだが。」
「確かにそうかもしれませんね。ですが、何かしらの意図を感じますね。」
「そうだろうか?私には何も感じないのだが。」
と大人達が言うが子供達はと言うと。
「大きな扉だねぇ~。何が出るのかな?」と優真。
「入ってみれば判るわよ、優真。何が出ても倒せばいいのよ!」と紗良。
「確かにそうですね。ですが、油断は禁物ですよ。」と遥香。
子供達は扉に入る気満々である。そんな時、新たな気配を感じた久遠達は気配の方を見る。そこには楠葉によって帰らされたはずの騎士達が居た。
「お前達、帰ったはずだが?何故ここにいる?」
「俺達がこのダンジョンを踏破するために来たんだよ、隊長。」
「あんたらをギャフンと言わせるためにな。」
騎士達は楠葉を見返すために来たのである。ただ厄介事を連れてきていたが。
「あんたら自分がしていることが理解できてるか?」
「何の事だ?」
「貴方達の後ろから魔物の群れが追いかけてきていますよ?」
「あぁ、その事か。知っているというかそうしてきたからな。」
「貴様らの足止めのために連れてきたんだよ。」
騎士の言葉に楠葉が怒鳴る。
「貴様ら何と言うことをしてくれたんだ!この人達は亜里沙殿の知人でもあるんだぞ?」
楠葉の言葉に騎士達は青ざめた。何故騎士達が青ざめたかは単純に楠葉より亜里沙が強いからである。しかも、亜里沙は帝国の宰相でもあるため自分達の身を考えてしまったのである。
「そ、そんなこと知るか!こんな奴等が亜里沙様の知人なわけがない!」
と言うことしか出来なかった。
「どうでもいいが入るならさっさと入ってくれないか?」
いい加減ウザくなってきた久遠が冷たく言い放った。
「そうですね。あなた方が先に入ったところで攻略など出来るはずがありませんから。」
華音も冷たく言い放った。
「遥香、紗良、優真。魔物の群れが近づいて来ている。殺るか?」
「「「もちろん!!」」」
久遠の問いに元気に返事をする子供達。
「華音、子供達の付き添いを頼む。」
「わかりました。あなたはどうなさいますか?」
「俺は扉が開いた瞬間!中を探ってみる。」
「わかりました。では、ここを戦場にするわけにはいきませんね。遥香、紗良、優真。行きますよ?」
「「「はい!!」」」
華音、遥香、紗良、優真は扉から離れるように戦場を移した。
「あんたらもさっさと行ってくれ。」
久遠が言うと騎士達は恐る恐る扉を開け中に入っていた。
扉が開くと中は薄暗く何も見えなかった。しかし、中に居る者の気配だけは感じた。
(この気配はカルディナに似ているな。と言うことは神獣クラスか。楠葉には悪いが騎士達はここで終わりだな。)
騎士達が全員中には居ると扉が閉まった。と同時に中の気配も消えた。
久遠は扉を見つめ扉が閉まると気配も消えるのかと思った。
「楠葉、騎士達はここで終わりだ。もぅ、出てくることもない。」
「久遠殿、それはどういう意味だ?」
「そのままの意味だ。この先にはカルディナクラスの神獣が居る。何故かは知らないがな。」
「なっ!カルディナ殿クラスの神獣だと?では、騎士達では勝てるわけがない。今から追いかけなければ。」
と楠葉は扉を押すがビクともしない。
「な、何故開かない?」
「開くわけないだろ?中での戦闘が終わらなければ開かない仕掛けだろ。」
「で、では騎士達は・・・。」
「助からないだろうな。」
「・・・。」
久遠の言葉に楠葉は膝をついた。態度が悪かったとはないえ帝国の騎士である。それなりに気にしていた。
ガチャン
そんな時、扉の鍵?が開く音が聞こえた。
「どうやら終わったようだな。」
中から騎士達が出てくる気配がない。騎士達が勝てば中から出てくるはずだがその様子もない。
扉が開いてから少し時間がたったあと華音と子供達が戻ってきた。
「終わったか?こっちも終わったぞ。」
「はい、無事に殲滅できました。」
「「「終わったよ!!」」」
と魔物の群れを殲滅をして戻ってきた。
「それで中の様子はどうでしたか?」
「あぁ、中にはカルディナクラスの神獣がいるな。」
「あら、でしたらやはり何かしらの意図がありそうですね。」
「だろうな。あたかも俺達を待っていたかのようだ。いや、子供達をといったところか?」
「やはりそう思いますか?」
「ああ。」
久遠と華音は子供達を見つめた。その子供達はというと扉の前ではしゃいでいた。それを見た久遠と華音はやるせない表情をした。
「ここに居ても仕方ないな。中に入って確かめるか。」
「そうですね、入ってから確かめましょう。」
久遠と華音は扉の前に居る子供達に近づき言った。
「中に入るぞ。」
「「「うん!!」」」
久遠は扉を開けた。
中に入った久遠達を待ち構えていたのは、狼のような獣だった。




