優真VS四人の騎士
優真と四人の騎士との模擬戦が決まり、お互いに準備を始めた。準備と言っても何かするわけでもないのだが、騎士達は作戦会議を行っていた。
「ガキ一人に四人でやるのは俺達のプライドに関わる。一対一でやらないか?」
「確かにそうだな。なら順番を決めよう。」
と作戦会議には程遠いことを言っていた。既に優真を格下だと認識している証拠である。
作戦会議?も終わり優真の前に立つ四人の騎士。だが、優真は目を閉じたまま騎士達を見ようとしていなかった。
その優真の様子を見た騎士は優真に怒鳴る。
「貴様、何時までそうしているつもりだ!我等は準備が終わったと言うのに!」
騎士が言い終わると優真はゆっくり目を開けた。
「ようやく終わりましたか。あまりにも長かったのである寝ていました。」
と言う優真。だが実際は寝ているのではなく精神統一をしていた。
「き、貴様!子供だからと言って容赦しない!」
騎士の言葉を聞き流し優真は答える。
「時間が勿体無いのでさっさと始めましょう。」
といい優真は楠葉を見る。楠葉は楠葉で久遠と華音を見た。楠葉の視線に気付いた久遠と華音は頷いて答えた。
「では、模擬戦を開始する。だが、武器は本物だ。相手に致命傷を与えないようにしろ。降参、気絶で勝敗をつける。では、始め!」
楠葉の開始の合図で一人の騎士が優真に襲いかかる。だが、優真は上段から振り下ろされる剣を難なく回避し距離をとる。
「ふん、上手く避けたな。だが、避けているだけでは勝てない。」
と言いながら騎士は優真に追撃を開始する。
騎士の追撃全てを余裕で回避する優真。騎士は攻撃するだけしたため、徐々に息が上がってきていた。
「はぁ、はぁ、はぁ。何時まで・・・避けて・・・いるつもりだ?」
完全に息が上がりまともに喋れない騎士。対する優真は息を切らすことなく悠然としていた。
「僕みたいな子供より体力がないんですね?ちゃんと体力作りしていますか?」
優真の嫌味にすら答える気力さえない騎士。そんな騎士を見た優真は回避から一転、攻撃に転じた。
「手加減はします。ですから、死なないでくださいね?」
言い終わった瞬間、優真は一瞬で騎士の懐に入り手のひらで騎士の腹に打撃を与えた。
その瞬間、騎士は後方へ吹き飛ばされた。
吹き飛んだ騎士は起き上がることなく気絶した。騎士にとっては何が起こったのか分からないまま気絶してしまった。
「ちなみに言っておきますが、僕は家族の中で一番近接戦闘が弱いですから。僕は主に中、遠距離からの魔法が得意ですから。」
優真の言葉に楠葉が驚いた。一瞬で騎士の懐に入り一撃を放った優真が一番近接戦闘が弱い。では、他の二人の子供は優真より上と言うことになるからである。
実際は、遥香は万能タイプで紗良が近接に特化しているだけで三人の子供達の実力は均衡している。
(あれで一番近接戦闘が弱い?あの歳で?有り得なくないか?)
楠葉は心の中で思った。だか、ふと思い考えを改めた。
(主殿と華音殿の子供なら有り得るな。一体どんな教育をしたのやら。)
と楠葉は結論に至った。
残りの三人の騎士は優真の動きが全く見えていなかった。そのため、今後は同時に攻撃することで話が纏まった。
「ガキに負けるわけにはいかない。」
「プライドを捨てる。」
「あぁ、そうだな。」
意を決して優真に挑む騎士達。優真は短剣より少し長い剣を二本持ち構えた。優真はあくまで近接戦闘で戦うようである。
「何時でもどうぞ。魔法は使いませんから安心してください。」
優真の一言が騎士達の逆鱗に触れた。逆上し我を忘れて優真に襲いかかる。騎士にしたら失格である。連携すらとれていない、我先にと突っ込んで来たからである。と言うか挑発に弱すぎである。
「「「くそガキがぁぁぁぁ!!」」」
一人目の騎士は優真の右手に持つ剣で簡単に捌かれ体勢を崩した所に剣の柄を使い首元に一撃を入れ気絶させる。
二人目の騎士は、一人目の騎士を気絶させたことにより体勢を入れ換えた優真に反応できず左手に持つ剣の柄で腹に一撃をもらい膝をつく。
三人目の騎士は、二人の騎士が呆気なく気絶しててため途中で止まってしまい何も出来ないまま優真によって意識を刈り取られた。
あまりにも一連の動作が綺麗だったため楠葉は見いってしまっていた。そのため、勝敗が決したことを忘れてしまっていた。
「楠葉、終わったぞ。」
久遠に声をかけられようやく現実に戻ってきた楠葉は慌てて勝者を告げた。
「しょ、勝者は優真だ。」
優真は宣言を聞き久遠達の元へと戻った。
「よくやったな、優真。」
「成長しましたね、優真。」
「優真、お帰りなさい。」
「お疲れ様、優真。」
久遠、華音、遥香、紗良の順に声をかけた。
「ありがとう。でも、この後の調査はどうなるんですか?」
「「「あっ!!」」」
優真の言葉に久遠、華音、楠葉は声を揃えた。
「こんな状態だから次回に持ち越しだな。」
「そうですね。楠葉さん、次回はまともな騎士でお願いします。」
「いや、むしろ私だけでよくないか?」
結果、ダンジョン調査は次回に持ち越しになった。




