冒険者ギルドクロウ支部
本日二話目です。
冒険者ギルドの前まで来た久遠達は、若干入るのを戸惑っていた。それは、中から聞こえてくる罵声のためである。
「何で俺達がこの依頼を受けれないんだ?」
「ですから、あなた方のランクが足りていないためです。何度も説明しましたよね?」
「そんなもん実力があれば問題ないだろうが!」
外まで聞こえてくる冒険者の男と受付嬢の言い争い。道を歩く人達も一瞬ではあるが足を止める。街の住人にとって日常茶飯事なので対して気にもしていない様子。
「久遠君。さっさと入ろうよ?」
「そうですよ、兄さん。ここで立っていても登録は出来ないのですから。」
「まぁ、そうだな。じゃぁ、入るぞ。」
意を決してギルドの扉を開ける。立て付けが悪いのかギィィィと音が出る。
扉の音に反応した冒険者達は扉の方へ目を向ける。そこには、今入ったばかりの久遠達が立っていた。久遠達は、そんな目線を無視し言い争いをしている隣の受付嬢に話しかけた。
「すいません、冒険者登録をお願いしたいんですが。」
「ようこそ、冒険者ギルドクロウ支部へ。登録は後ろの方を含めた三人でよろしいですか?」
「はい、お願いします。登録と同時にパーティー申請もお願いできますか?」
「畏まりました。まず、登録料として一人銀貨一枚をお願いします。」
受付嬢の言葉に久遠はポケットの中から銀貨を三枚取りだし渡した。
「はい、確かにお預かりしました。では、こちらがギルドカードになりますので血を一滴垂らしてください。」
そう言われたので久遠達はカードに血を垂らした。
「はい、これで登録は終わりました。では次に、冒険者ギルドについての説明に移らさせて頂きます。」
冒険者ギルドのランクはS~Eまで別れており、D、Eが初心者でCで一人前Bで上級となりAは実力と人柄が求められる。仮に実力はあっても人柄が良くなければB止まりである。ちなみに、Sは人外の実力と人柄が求められる。
ギルドカードの再発行には金貨五枚がかかる。ギルドカードを悪用されないための措置としてこの金額になっている。
ちなみに、冒険者同士の争い事にはギルドは関わらない。が、冒険者同士の決闘はギルド側から認可されている。一対一やパーティー戦も可能である。ただし、決闘をする場合お互いに賭けるものがないと出来ない。簡単な話、欲しいものは『力で手に入れろ』というわけである。
「以上になりますが、何か質問はありますか?」
受付嬢の言葉に久遠は華音と亜里沙を見た。二人は首を振り久遠に合図をした。
「いえ、大丈夫です。」
「わかりました。このまま依頼を「おいガキ!」受けますか?」
さっきまで受付嬢と言い争いをしていた冒険者が久遠の前にいる受付嬢の言葉に被せてきた。しかし、久遠は無視をし話始める。
「そうですね、薬草採取の依頼があれば受けたいんですけど。」
無視された冒険者は、久遠に近づき声をあらげる。
「おい、くそガキ。俺を無視するとは良い度胸じゃねぇか。そんなにも死にたいのか?」
「黙っててくれるか?今依頼の話をしているところなんだから。」
久遠は振り向きもせず答えた。
「てめぇ、こっちを向けや!女の前で良い格好見せたいみたいだが、てめぇみたいなガキには勿体ないぐらいの女だから俺が貰って「黙れよ!」や・・・今なんて言った?」
「黙れと言ったんだ。聞こえなかったのか?もし、本当に聞こえなかったんなら回復魔法でもかけてもらえ。」
「ガキが意気がるなよ?てめぇみたいなヒョロヒョロのガキに何ができるんだ?俺はこれでもCランクなんだぞ?」
「だから、なに?」
久遠は、すでに嫌気がさしていた。さっさと依頼を受けて亜里沙に魔法を教えたいのである。そのためイライラしてきていた。
「久遠君、さっさと依頼受けようよ?」
「そうですよ、兄さん。早くお願いします。」
早く依頼を受けろと久遠を急かす華音と亜里沙。だが、久遠に話しかけてしまったことが冒険者の目に留まる。
「嬢ちゃん達、こんな男とパーティー組むより俺達とパーティー組まねぇか?なんなら、夜もパーティー組んでやるぞ?」
下心丸出しの言葉に華音と亜里沙のキツい一言が降り注いだ。
「お呼びじゃないよ、おじさん。鏡見てから出直してきて?あっ、鏡見ても容姿は変わらないから出直ししてこなくてもいいよ。」
「兄さんと比べるなんて・・・。兄さんと貴方では天と地ほどの差があります。私達の目の前から消えてもらえると嬉しいです。」
二人の言葉に周りに居た冒険者は一斉に吹き出し笑い始めた。
周りの様子を見た冒険者の男は顔を真っ赤にして叫んだ。
「容赦はしねぇ、決闘だ!もちろん、パーティー戦だ!お前達が賭けるのはそこの女二人だ。」
「やるとはいってないが?」
「あぁん?逃げるのか?なら、不戦勝で女は頂くぞ?」
男の言葉に溜め息を付きながら答えた。
「二人は『物』じゃない。まぁ、俺もいい加減ウザくなってきたからその決闘受けてやるよ。こちらも要求するぞ。俺が望むのは・・・お前らの全財産だ。」
「いいぞ。さっさと手続きをやるぞ。」
男が言うと久遠の前にいる受付嬢に申請書を要求していた。
「はぁ、わかりました。決闘を承認します。くれぐれも殺しはしないでくださいね?」
「言われるまでもねぇよ。」
「わかりました。」
申請書に記入が終わり、決闘は翌日行われることになった。
「逃げんじゃねぇぞ?」
「はいはい。」
「ちっ、行くぞ。」
男は、パーティーメンバーに声をかけるとギルドから出ていった。
「災難ですね。バカスさんに目をつけられるなんて。あっ、まだ自己紹介してませんでしたね?私は、リリスと言います。」
「リリスさんですね、俺は久遠でこっちが華音でこっちが亜里沙です。」
「華音だよ、よろしく。」
「亜里沙と言います、よろしくお願いします。」
「で、申し訳ないんだけど薬草採取の依頼ありますか?」
「敬語は使わなくて良いですよ。」
「わかった。で、依頼はある?」
「はい、ポーションを作るための薬草採取の依頼があります。」
「じゃぁ、それで。」
「では、ギルドカードをお預かりします。」
三人分のギルドカードを渡す。
「はい、これで完了です。明日のこともあると思うので無理はしないでくださいね?」
「もちろんだよ。あの人達が誰に喧嘩を売ったか教えてあげないとね。」
と、華音は言いながら亜里沙の方を見た。亜里沙も頷き答える。
「当たり前です。私達の兄さんをあそこまでコケにしてくれたのですから。生きながらに地獄を見てもらいましょう。」
そんな言葉を亜里沙は微笑みながら言った。
亜里沙の態度を見た周りの冒険者は全員背中に冷たいものを感じていた。
その後、三人は依頼である薬草採取を終わらせ亜里沙の魔法特訓に入った。
ちなみに、クロウディアでは一般的には詠唱をし魔法を発動させる。詠唱をするのはイメージしやすいためで実際はしっかりとイメージが出来ていれば詠唱など必要ない。しかし、この世界には無詠唱できる魔法使いは極わずかしかおらず極めて珍しい。
そんなこんなで、現代の知識がある亜里沙にとって無詠唱で魔法を使うなど朝飯前で、久遠の説明だけで簡単にやってのけてしまった。
亜里沙の魔法特訓も終わり、ギルドに戻った三人は依頼完了を報告し宿へと戻った。
そして、翌日。決闘の日を迎えた。
お金の価値やら色々書かないといけないんですが中々書けない。近い内に書けたらと思います。次回はいよいよ初戦闘。どうなるのかな?ちゃんと自重してくれると・・・無理だろうな。