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お礼参りと女の子

久遠達が屋敷から出た時、既に盗賊風冒険者に囲まれていた。人数にして約五十人程である。


「さて、この屋敷に何か用でもあるのか?」


一応、久遠が尋ねると返ってきたので言葉はなんの捻りもない言葉だった。


「用があるのはそこのガキ共だ!俺達をコケにしてくれたからな!」


所謂、お礼参りである。まぁ、子供に負けたのだから当然と言えば当然なのだが・・・。


「四歳児に負ける貴方達が弱いのです。ですから、盗賊に身を落として弱い者イジメをするのですよ。」


華音がキツイ言葉を言う。その言葉は聞き激怒する盗賊達。


「このアマぉぉぉ!ふざけたこと抜かすな!」

「負けたのは手加減したからに決まってるだろうが!」

「俺達は盗賊団『赤い流星』だぞ!俺達がてめえらに負けるわけねぇ!」


など、叫び続けている。だが、久遠と華音、カルディナは別の事に気をとられた。


「赤い流星?彗星じゃないよな?あの人の呼び名をもじった訳じゃないよな?」

「あなた、いくらなんでもそれはないと思いますよ?ですが、似た名前はよくありませんね。改名すべきです。」

「お父様、お母様。名前は適当につけたものだと思います。ですから、気にしない方がいいと思いますが?」

「「無理だ(です)!」

「ですよね。はぁ~。」


溜め息をつくカルディナ。断固として譲らない久遠と華音。そんな三人を見つめている紗良と優真。そして、存在を忘れ去られた盗賊団『赤い流星』。


「俺達の盗賊団の名前をコケにしやがったな?男のお前は殺して女とガキ共は奴隷にして売り払ってやる!」


と、またしても在り来たりな言葉を言う盗賊。やれやれと首を振る久遠と華音、カルディナ。


「おじさん達じゃパパとママには勝てないよ。」

「そうだね、お姉ちゃん。僕達にすら勝てないんだから。」


と、紗良と優真が言う。だが、ここで華音が口を挟む。


「二人共、油断はいけませんよ。いくら自分達が強いからといって油断すれば格下にすら負けてしまいます。強くても数の暴力には勝てませんから。」


と、華音は紗良と優真に言う。二人は頷いて答えた。


「数の暴力に負けないくらい強くなればいいんだね。」

「お姉ちゃん、確かにそうだけど仲間を集めて戦えばいいと思うよ?」


子供達の言葉を聞き、久遠と華音は思った。何処で育て方を間違えたのかと。


「分かってるじゃないか?お前らは五人、俺達は五十人以上。俺達が負けるわけねぇ!」


盗賊の言葉に溜め息をつく久遠と華音。既に、二人はさっさと終わらせて定食屋の準備に取りかかりたいと思っていた。それに、中に居る女の子のことも気になっていた。


「さっさと終わりにしたい。俺達にも予定があるからな。」

「そうですね。色々とやることがありますから。」

「屋敷とは別にお店を建てないといけませんから。」

「私もお手伝いする!」

「僕もお手伝いする!」

「じゃぁ、さっさと終わらせるか。但し、殺したらダメだからな?」

「「「「はい!」」」」


こうして、久遠一家VS盗賊団『赤い流星』との戦いが幕をあげた。


最初に動いたのは紗良だった。


剣に炎を纏い飛び上がり叫んだ。


「紅○剣!」


紗良は言いながら剣を回転させながら投げた。ちなみに、盗賊達が居る方は街道であるため燃え広がることはない。


紗良の攻撃により数人の盗賊が炎に包まれた。


「お姉ちゃん、手加減しないとダメだよ?」

「えっ?あれでも大分抑えたんだけど?」

「仕方ないなぁ。タイ○ルウェーブ!」


燃えている盗賊達とそれ以外の盗賊達に今度は水流が襲いかかる。


「あっ、魔力調整を失敗した。」

「優真だって失敗してるじゃない!」


流石は久遠と華音の血を引く子供である。加減を知らなさすぎである。


水流に流された盗賊達はゆっくりと立ち上がり久遠達を睨んでいた。明らかに手加減していた事が今の会話から察したのだろう。だからといってどうにかなるわけでもないのだが。ちなみに、紗良が投げた剣は既に紗良の手に戻ってきている。


「さっさと気絶させるぞ。カルディナ、紗良と優真のフォローを頼んだ。」

「お任せください。」

「全員、接近戦で気絶させるぞ!」

「わかりました。」

「「うん!」」


返事が返ってきた瞬間、久遠達は盗賊に向かって走り出した。そして、あっという間に近付き次々に意識を失っていく盗賊達。


最初の紗良の攻撃から10分経たないうちに戦闘は終わりを告げた。



「カルディナ、王都のギルドに行って説明してきてくれ。」

「わかりました。」


カルディナは、姿を変え飛び去った。


「さて、こいつらを縛ったら家に入って残りの仕事をするぞ。」

「「「はい。」」」


盗賊達を縛りあげ、屋敷に入る久遠達。そして、女の子の居る部屋へと向かった。


そこには既にレイアスが待機しており久遠達の到着を待っていた。


『では、始めます。』


そう言うとレイアスが手を女の子にかざした。


数分後、女の子は目を覚ました。但し、何故か見た目が変わっていた。紗良と優真と同じぐらいの年齢の身体に。


「ここは?私は一体?名前は?」


まさかの記憶喪失である。


『長い時間眠っていたため殆どの記憶がありません。ですので、後はよろしくお願いいたします。』


と、言葉を残しレイアスは消えた。


「おぃ、レイアス?逃げたな。」

「仕方ありませんね。どうしますか?」

「しょうがない。俺達で育てるか。」

「そうですね。賑やかになりそうです。」


こうして、新たな家族が増えることになった。

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