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久遠VS残念勇者

城に辿り着いた久遠達を待ち受けていたのは・・・。


「誰もいないね?」

「気配すらありません。」

「罠か?」

「でも、それらしいのは無いみたいだよ?」


華音の言葉通り誰も居ない城。だが、正確には一人だけ居る。そう、あの残念勇者である。


久遠は、罠の可能性を考えたが華音の言葉で罠の可能性を消した。だが、慎重に行動をするに越したことはない。


「取り敢えず慎重に進むぞ。」


久遠が先頭を歩き、続いて亜里沙。最後尾は華音である。


慎重に進んだが故に時間が少しかかってしまった。だが、ようやく人の気配を感じる場所まで辿り着いた。


その場所は、謁見の間・・・。


扉を手で押す久遠。そして、扉が開き玉座に座っている者を久遠達は視界に入れる。


「思いの外遅かったな?罠でも仕掛けてあると思ったのか?」


足を組み、玉座に座っている残念勇者。そんな残念勇者を見ながら謁見の間に入り、中央付近まで進む久遠達。


「あんな状態でよく生きていたな。生命力はゴキブリ並みか?」

「ふん、言いたいように言えばいい。だがな、俺を助けてくれたのは女神様だ。そして、俺は女神様の忠実な使徒(しもべ)になった。それにな、力も分け与えて頂いたんだ。その力こそ人を操る能力。そして、身体強化もしてもらえた。だから、今回はお前に負けるわけがない!」


ベラベラと自身の情報を喋りまくる残念勇者。どうやら頭の方は強化されなかったようだ。


「それで?お前は何がしたいんだ?」

「そんなの決まってるだろうが!!貴様に復讐するためだ!!俺にどれだけの屈辱を与えたと思っている。亜里沙は俺の物になるはずだった。だが、お前が亜里沙を俺から奪った。だから、貴様に復讐するんだ!!」


自分が失恋したことを久遠のせいにする残念勇者。久遠は溜め息をつきながら華音と亜里沙を見た。華音は「久遠君の好きにしていいよ」と答え、亜里沙は「ご迷惑をおかけします」と頭を下げた。


「で、俺を殺して亜里沙を奪うのか?」

「あん?それだけじゃねぇよ。そこの女も外にいる女も貴様が死ぬ前に貴様の目の前で犯し尽くしてやる。そして、俺がこの世界の王になる。」


残念勇者の頭の中はどうやらお花畑のようである。


そもそも、操られるのは精神が弱いだけでそれなりの実力者なら操られることはほぼ無い。今、外で操られているのは心の中に何かしらの弱みや隙があったからである。そのため、簡単に操れてしまったのである。


ちなみに、現在進行形で残念勇者は久遠達三人を操ろうと力を使っている。


「な、何故だ?何故、貴様らを操れない?」


操れないことに苛立ちを見せる残念勇者。そんな様子を見ながら亜里沙が冷たい微笑みを浮かべながら言う。


「当たり前です。私達を操るなど無理な話です。そもそも、それなりの修羅場を潜り抜けた者達に通じるはずがありません。では、何故外の人達が操れたかと言うと・・・教えるのも勿体ないですね。貴方自身の中身がない頭で考えてください。」


毒舌を吐きまくる亜里沙。そんな亜里沙を見て華音は苦笑するしかなかった。


「ちっ、操れないなら仕方ない。俺が直々に殺してやる!」


そう言うと、残念勇者は剣を抜いた。その剣からは禍々しいほどの黒い何が見てとれた。


「この剣は女神様から頂いたんだ聖剣フルーレだ。貴様が壊してくれた聖剣とは比べ物にならない物だ!」

「聖剣というよりむしろ魔剣だよね?聖剣がそんな禍々しいわけないじゃん。」


華音の言葉が久遠、亜里沙を頷かせる。見た目からして明らかに聖剣ではない。何を考えて女神はこんな剣を残念勇者に与えたのだろう。久遠は、女神が邪神みたいな存在ではないかと疑う。


「何を言うか!この神々しいまでに整えられた剣が何処に存在する!」

「いや、ここにあるし。」


そう言うと、久遠は二振りの剣を出した。最近出番がなかった神聖剣エクスブリンガーと神魔剣ダークホライズンである。


「な、何なんだその剣は?」

「うん?これは、神聖剣エクスブリンガーと神魔剣ダークホライズンだな。そして、ここからが本来の姿を現す。」


そう言うと久遠は二振りの剣を前に突き出しいい放つ。


「聖魔融合!!」


二振りの剣は光を放ち、空中で一つの光となる。そして、光が収まると一本の剣が姿を現す。

剣は久遠の前まで降りてくると、久遠は何の躊躇いもなく柄を握る。


「初公開だな、神聖魔剣エクスホライズンだ。」

「久遠君、何の捻りもないね?」

「兄さんが壊れました・・・。」

「捻りもなにも剣を鑑定したら名前がエクスホライズン(これ)だったんだよ。それに俺は壊れていないぞ、亜里沙?」


と言いながら剣を肩に担ぐ久遠。そして、改めて残念勇者の方を向く。


「さて、お互い武器を出したんだ。死合いをしようか?」

「試合?貴様は俺を舐めている。後悔させてやるよ!!」


残念勇者は真正面から久遠に突っ込んできた。


「華音、亜里沙。離れていろ!そして、絶対に手を出すな!」


華音と亜里沙は直ぐに久遠から離れ、扉の前まで下がった。その瞬間、残念勇者は剣を振り下ろす。


ガキィィィィン


剣と剣がぶつかり合う音が響き渡る。


「な、何故受け止めれる?俺の全力の一撃だぞ?」

「これが全力か?ならたかが知れた身体強化だな。」


残念勇者は、両手で剣を持ち振り下ろしていた。だが、久遠は右手に剣を持っているだけで左手は空いていた。


「この程度の力しか与えなかったのか?それともこれが全力なのか?」


そう呟いた久遠だが、その言葉すら耳に入ってこない残念勇者。


「な、なら魔法で殺してやる!」


そう言うと残念勇者は久遠から距離をとり詠唱を始めた。だが、そんな隙を見逃す久遠ではない。一瞬にして残念勇者の目の前に移動し、左手首を斬り落とした。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!痛い痛い痛いぃぃぃぃ!」

「大袈裟だな?たかが、手首が落ちただけだろ?日本じゃないが世界ではこんなのは日常茶飯事だぞ?」


と言った後、後ろからツッコミがはいる。


「兄さんの日常茶飯事はおかしいですから。」


久遠は、亜里沙のツッコミを無視して残念勇者を見下ろす。


「で、まだ続けるか?」


痛みに慣れてきたのか残念勇者は顔を上げ久遠を睨み付ける。


「ま、魔法さえ完成すれば「俺を殺せるか?」当たり前だ!!」

「そうか、なら完成させろ。待っててやる。」


久遠は、残念勇者から距離をとり待ち受ける。


「くっ、後悔させてやる!!」


詠唱を始め、構えをとる残念勇者。そして、詠唱が終わり魔法が完成する。


「くらいやがれぇぇぇぇ!ファイナルジャジメント!!」


残念勇者から放たれた魔法は久遠の頭上から降り注ぐ無数の光線であった。


チュドドドドドォォォォォォン


久遠が立っていた場所を眺めニヤリとする残念勇者。


「直撃だ、これで奴は死んだ!これで俺がこの世界のしは「残念だがそれは無理だ」い・・・ば、バカな?い、生きているはずがない。」


煙は巻き上げられ無傷の久遠が姿を現す。


「この程度の魔法で俺を殺そうだなんて無理な話だ。完全版ギ○・ス○イブを何千発と撃ち込め!」

「それでも死なないと思うよ、久遠君?」


冷静にツッコミを入れる華音。次の瞬間、久遠は残念勇者の目の前に再び現れた。そして、久遠は左薙ぎを放つ。だが、残念勇者も反応し剣で防ごうとした。


しかし、あっさり剣は折れ久遠の剣が残念勇者の上半身と下半身がわかれた。


「なっ、俺は・・・世界の・・・王に・・・。」


残念勇者は、最後まで言えることなく生き絶えた。



これにより、外で操られていたと者達は解放され楠葉とカルディナの戦いも幕を閉じた。



謁見の間に残った久遠、華音、亜里沙は一言も喋らないまま残念勇者を見つめていた。


「レイアス、悪いがこの戦いで死んだ者達を弔ってくれるか?」

『仰せのままに。』


レイアスが具現化し、首都がレイアスの放った光に包まれた。


死んだ者は灰になり空高く舞い上がり消えていった。あまりにも幻想的だったため生き残った者は見とれていた。



こうして、帝国で起きた事件は終息した。


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