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ミズナの復讐

女性騎士の名はミズナ、五年前、久遠と華音が助けた獣人、銀狼族のミズナであった。


「本当にミズナなのか?」

「はい、そうです。」

「あの小さかったミズナちゃんがねぇ~。」

「カノン様、五年前も前の話ですよ?私だって成長します。」


華音の言葉に少し頬を膨らませて怒るマネをするが表情は柔らかい。


「それはそうとミズナちゃんの里はここから離れてなかった?」


華音の一言で柔らかかった表情が一瞬にして険しくなる。


「何があったんだ?」


尋ねる久遠に対して、ミズナは沈黙する。だが、ミズナの代わりに先程久遠達に絡んだ男が答える。


「姫様が居た里は、二年前に帝国に滅ぼされた。偶々、狩りに出ていた姫様は助かったが里の者は・・・。」

「「「・・・。」」」


男の話を聞き久遠達は悲痛の表情を浮かべる。


場所をミズナ達が住んでいる家へと行き詳しい内容を語り出すミズナ。


二年前、ミズナが暮らしていた里にある日突然、帝国が攻め込んできた。獣人の男は殺され、女、子供は帝国の首都に連れていかれた。その日、偶々狩りに出ていたミズナは里から煙が上がっているのを発見し、里へと戻ったが既に遅かった。ミズナは、まだ息がある者を見つけ事態を知ったのである。


その後、里の者達の墓を作り、その作業の途中で男達と出会った。男達も違う里に住む獣人であり、ミズナの里と同様に襲われ生き残った者達であった。


里を失い、家族や友を失い、帝国に復讐するためにこの町に集まってきたのである。最初は、ミズナと男達だけだったが徐々に人数が増えていった。そして最近になり帝国は魔族によって支配されていることがわかり、カルディナの人化を見て久遠達を襲おうとしたのである。


「そんな事があったんだね・・・、辛かったね。」

「はい、ですが仲間も増えました。」


ミズナの表情は今も変わらない。だが、無理に笑顔を作ろうとしていた。その様子を見ていた楠葉がミズナに尋ねる。


「それで仲間を集めて帝国に、魔族に復讐するのか?」

「当たり前です!!私達の里を襲い、里の者を殺したのです。まだ、捕まっている者が生きているかもしれません。」

「勝てる勝算はあるのか?」

「勝つか負けるかはやってみないことには分かりません。それに負けるとしても一矢報いたいのです。」


ミズナの意思は固く、周りの男達も頷く。それを見ていた久遠達は溜め息をついた。


「ミズナ、俺達はもう何も言わない。これはミズナ達の問題だからな。だが、これだけは言うぞ?復讐は何も生まない。復讐は負の連鎖でしかない。」

「では、復讐をやめて里を作り、穏やかに暮らせとクオン様は言いたいのですか?」

「出来るならそうして欲しいがな。」

「無理です。」

「なら、もう何も言わない。俺達は明日にでも町を出るよ。」


久遠の言葉にミズナは驚く。ミズナの中では久遠達も既に戦力に入っていたのである。


「た、助けて頂けないのですか?」

「ミズナちゃん、何で私達が助けないといけないの?これはミズナちゃんが、ミズナちゃん達が望んでやることだよね?だったら最後まで自分達で成し遂げないといけないんじゃないの?仮に死ぬとしてもね。」


華音のキツイ一言が下される。更なる追撃は亜里沙である。


「そうですね。どうやら既にミズナさんの中では私達も戦力として含まれているみたいですが・・・勝手に決めないで欲しいですね。私達は一度も助けるとも手を貸すとも言っていません。兄さんにや姉さんが言ったようにご自分達で成し遂げてください。」


完全に沈黙するミズナと男達。その様子を見た久遠は席を立つ。後に続くように華音、亜里沙、カルディナ、楠葉も席を立つ。


「後は自分達で考えてくれ。じゃあな、ミズナ。」


そう言うと久遠は部屋を出ていった。


楠葉は、扉の前で立ち止まり振り向かずに呟いた。


「主殿、いや久遠殿が五年前に受けた仕打ちを知っているなら、今の久遠殿がどんな気持ちで話を聞いていたか理解出来るはずだ。」


そう言い残し楠葉は久遠達を追いかけた。


残されたミズナ達は沈黙する。しかし、直ぐに今後を決めるため会議を開いた。



宿に向かう最中、亜里沙が久遠に尋ねた。


「兄さん、本当によろしかったのですか?」

「何がだ?」

「手助けをしたかったのではないですか?」

「・・・。確かに手を貸したくはなったが、だが復讐以外にも道はあると知って欲しかったからな。」


と言い空を見上げる久遠。どこかで自分とミズナが重なって見えていたのかもしれない。だから、余計に復讐以外の選択をしてほしかったのかもしれない。


「それに・・・。」

「何ですか、兄さん?」

「いや、何でもない。たぶん、気のせいだ。」


頭に浮かんだことを無理矢理消した久遠。そんな久遠を見つめていた亜里沙は、久遠の手を握り呟いた。


「兄さんは一人じゃありませんよ?私が居ます。」

「あぁ、そうだな。」

「ズルい!!亜里沙が久遠君と手を繋いでる!!」

「抜け駆けはよくないぞ?」


華音と楠葉が久遠の残りの手を奪い合う。だが、それを見越したカルディナが久遠の腕に抱きつく。


「お父様は一人で悩みすぎです。私達が側に居るのですから悩みを打ち明けてください。」


と、勝者であるカルディナが久遠に呟いた。


「「カルディナ(殿)、ズルい!!」」


やっぱり最後は平和に終わる久遠達であった。



翌日、久遠達は帝国の首都へと向かった。

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