教皇への報告
今日から仕事・・・。まだゆっくりしたい・・・。
精霊神レイアスから連絡を受けた大成と瑞穂、ユミルは、直ぐに教皇が居る城へと向かった。
門番に自分達が来たことを教皇に伝えてほしいことを告げ、その後教皇の私室に通された。
「大成殿に瑞穂殿、それにユミル殿どうしたのだ?」
「至急、教皇様のお耳に入れたいことが・・・。」
大成達の表情を見るや直ぐにミルフィとフェンを呼ぶようにメイドに伝えた。
待つこと数分。ミルフィとフェンが部屋へとやって来た。
「どうかされましたか、お父様?」
「まだわからん。今から大成殿に話を聞くところだ。」
と、大成達を見つめる。大成達もこの数分で心の準備が出来たようで落ち着いていた。
「では、お話いたします。先程、久遠さんから連絡がありました。」
「して、その内容は?」
大成は、精霊神レイアスからではなく久遠から連絡があったと伝えた。大成と瑞穂、ユミルはまだ自分達が精霊王と契約したことを伝えていない。そのため、久遠が精霊神レイアスと契約したことを伝えるのをやめたのである。
「はい、内容ですが・・・。帝国が何か準備をしているとのことでした。食料に武器を近隣から集めているようで、近くの町のギルドには大量の依頼があったそうです。」
「明らかに戦争の準備をしているみたいですね?」
大成の話を聞き、ミルフィが答えを出す。
「そうですわね。ですが、話はこれで終わりませんわ。」
「はい、クオン様達が受け取り場所で隠れて待っていたところ出てきたのは、魔族だと言っておりました。」
瑞穂の言葉の続きをユミルが話した。ただ、ユミルの言葉を聞き教皇とミルフィ、フェンが驚きの表情をする。
「な、なんだと?魔族が現れたと?」
「はい、久遠さん達はカルディナさんに偵察をさせ、近くの町で合流すると言っていました。その町は国境を越えた帝国領内にある町だと言っていました。」
「ですから、何が起きてもいいように対策を立てておけと仰っていましたわ。」
大成達は、レイアスから聞いた内容を話した。ただ、教皇の次の言葉で大成達は落胆する。
「大作も何もクオン殿達が帝国領に居るのなら何も心配はないだろう。全て上手くやってくれるはずだ。なので騎士団、魔法師団は今まで通り待機とする。」
「な、何を言っているのですか?久遠さんは何が起こるか分からないと言っているんですよ?対策はちゃんと取らなくては・・・。」
教皇の言葉を大成は否定した。しかし、教皇は頑なに拒む。
「お主達とてクオン殿達の実力を知っているであろう?であれば何の問題もなかろう?この話はこれで終わりだ。貴重な情報の提供を感謝する。」
言い終わると、大成達とミルフィ、フェンに退室を命じた教皇。大成は食い下がろうとするが瑞穂に止められ渋々部屋を出ていく。
「皆さん、私の部屋でお茶を飲みませんか?」
と、ミルフィが大成達をお茶へと誘う。
ミルフィの私室に着いた五人は、部屋にある椅子に座りお茶を飲みながら話を始めた。
「まずは父の非礼をお詫びいたします。申し訳ありません。」
ミルフィは頭を下げ謝る。大成達は、いきなりの謝罪に驚き慌てる。
「い、いえミルフィさんが謝る必要はありません。教皇様とて何かお考えがあると思いますから。」
「そう言っていただけると幸いです。しかし、今の父はどうも昔の父と違う気がしてならないのです。」
「それはどう言うことかしら?」
「何かにとりつかれているような、いえ全くの別人の様な気がしてならないのです。」
自分の父親に対する違和感を感じていたミルフィは大成達に話をした。
「タイセイ様達がエルフの里へと旅立たれてから帰ってくるまでの間に急に変わられてしまいました。何故、急に変わられてしまったのか検討もつかないのです。」
ミルフィは、教皇が変わってしまった理由が分からないでいた。そのため、あまり自室から外に出なくなってしまった。
「そうなんです。今では騎士団と魔法師団に訓練を休むように言ってきています。ですが、騎士団と魔法師団はサボるとクオン様達が怖いので隠れて訓練をしています。」
フェンが騎士団と魔法師団の現状を大成達に伝えた。その話を聞いた瑞穂はある結論に達する。
「教皇様は操られている、もしくは入れ替わっているのかもしれませんわね?」
瑞穂の言葉にミルフィは愕然とする。心の中ではそれは絶対に無いと思っていた。しかし、心のどこかであり得るかもと思ってもいた。そのため、改めて言葉にされると辛いのである。
「瑞穂の考えがもし仮に正しいなら、この事を知っている俺達の身に危険が迫るんじゃないか?」
「そうですね。もし、勢力を削りたいなら私達は邪魔物でしかありませんから。ですから、タイセイ様のあの時の発言は最善でしたね。」
ユミルが言うあの時の発言とは、精霊神レイアスからの情報ではなく久遠からの情報と言ったことである。
「あの時の発言とは?」
「すいません、ミルフィさんとフェンさんを信用しない訳ではないのですが言うことは出来ません。」
「そうですわね。今の状況から考えますと何処で情報が漏れるかわかりませんから。」
「ですので、聞かない方が御身のためです。」
と、頑なに話そうとはしない大成達。その様子を見ていたフェンは頷く。
「そうですね、その方が私も良いと思います。ミルフィ様も分かってください。」
フェンに言われ頷くことしか出来ないミルフィ。
「一応、この事は私達が帰ってから久遠さん達に報告はします。ですが、報告の答えを教えるつもりはありません。理由は・・・お分かりですよね?」
「・・・はい。」
ミルフィは、力なく答える。もし、この場に大成達以外に大成達側の人間がいるならその者に伝えることも出来るのだが、生憎そんな人間は居ない。ただ、大成達の懸念は情報を開示しないために後手に回るのは避けたいと思っている。
「ですが、隠れてサポートはさせていただきますわ。」
「この城で何が起こってもいいように、何時でも逃げれるようにサポート致します。」
瑞穂とユミルの言葉に少しは安堵するミルフィ。
「よろしくお願いいたします。」
と、頭を下げるミルフィとフェン。その後、世間話をし解散となった。
家に戻った大成達は、今日の城での出来事を久遠達に報告するべく伝言を火の精霊王グレンに頼んだ。
翌日、久遠から返事がレイアスによってもたらされる。
『教皇は、たぶん魔族だろう。憑依されているか、入れ替わっているかは分からないがな。だが、見破る方法はある。目に魔力を纏わせ相手の魔力を見れば分かる。魔族の魔力はどす黒いからな。この方法を使えばミルフィとフェンが黒か白かわかる。だが、情報は最小限に留めろ。でなければミルフィとフェンに危険が及ぶ。で、対策だがお前達の好きにすればいい。こっちもそれなりに動くが期待はするな。また、何かあれば連絡してくれ。』
伝言を聞いた瞬間、大成と瑞穂、ユミルは苦笑した。大成達は、ミルフィ、フェンを助けることにしていたため、久遠の好きにすればいいという言葉が嬉しくもあった。ただ、考えを読まれたような言葉なので苦笑したのである。
一方、大成達が教皇と話をしている頃、久遠達はカルディナとの合流地点の町に向けて歩いていた。
大成達の視点でした。次回は久遠達の視点になります。はてさてどうなることやら・・・。
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