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エルフの里

大成達が盗賊団を潰した後、何事もなく次の町に入り盗賊団の生き残りを引き渡した。その時、謝礼を貰い食料等を買い込み宿で休んだ。


翌日、大成達はエルフの里に向けて出発する。


旅は何事もなく進み一週間が立った。


「皆さん、彼処に見える森の中に里があります。」


指を指しながら言ったのは元奴隷のエルフの女性。大成達は、その方を見て言った。


「ようやく着いたな。」

「そうですわね、長いような短かったような。」

「最後まで気を抜くな。何があるか判らん。」

「あぁ、そうだな。楠葉の言うとおりだな。」

「そうですわね。最後に何かあるのがお約束というものですから。」


ちなみに、この時ユミルは夢の中であった。


大成達がそんな話をしていると森の入口付近で数台の馬車が見えてきた。大成は、馬車を止め目を凝らして見てみるとそこで行われていたのは・・・。


「お、おぃ。あれ、エルフが連れ去られてるんじゃないか?」

「えっ?本当ですわね。もちろん「助けにいくぞ」ですわよね。」


瑞穂の言葉に被せる大成。その言葉で動いていたのはもちろん楠葉である。


「私が先行して状況を確認してくる。瑞穂はユミルを起こして一緒に馬車を守っていてくれ。」

「わかりましたわ。気を付けてください、楠葉さん。」

「心得た!!」


そう言うと楠葉は走り出した。


一方、その馬車ではエルフを捕まえて馬車に乗せようと必死になっていた。


「おぃ、さっさと乗れよ!!抵抗したって無駄だ。」

「いや、いや、離して!」

「ちっ、クソガキが。面倒かけるな。」


と言うと男はエルフを殴り飛ばした。だが、次の瞬間男は楠葉によって殴り飛ばされた。


「ぐわぁ、だ、誰だ?」

「貴様、ここで何をしている?」

「あぁん?見てわからねぇのか?エルフを捕まえてるんだよ。奴隷として帝国に売るためにな!」


男はエルフを帝国に売ると断言した。


「アゼディアもクロウ王国も奴隷を売れなくなったからな。それに帝国はエルフで何かやってるみたいで高く売れるんだよ!!」

「ゲスが!命をなんだと思ってる。」

「そんなこと知るか!!俺には関係ねぇ!邪魔をするなら殺すまでだ。」


男は剣を構え楠葉に襲いかかろうとした。しかし、駆けつけた大成によって遮られる。


「楠葉、ここは俺に任せて先に森の中に行け。ユミルが道案内をする。」

「わかった。大成、気をしっかりと持て。」

「・・・わかった。」


楠葉は、大成に一言残しユミルと森の中へと向かった。


「しっかり持て・・・か。楠葉には俺のやることが判ってたんだな。」

「何をごちゃごちゃ言ってやがる。」

「あぁ、悪いな。覚悟を決めていたんだよ。」

「死ぬ覚悟ができ「お前を殺す覚悟がな」た・・・。」


男は最後まで言うことなく大成の大剣により身体を斬られ生き絶えた。


「さて、俺はここで待ちますかね。て言うか足が震えて動けん・・・。」


初めて人を殺した大成は、まだ手に残る感触に震えていた。その様子に気付き瑞穂が馬車と共に大成に近付いた。


「お疲れ様ですわ、大成。私が支えますから身体を楽にしてください。」


瑞穂は、後ろからそっと大成を抱き締める。大成も安堵し身体を瑞穂に預けた。


「悪いな、こんな不甲斐なくて。」

「いえ、立派ですわ。私には到底出来ないことです。」

「瑞穂の手を血で汚したくないからな。」

「ありがとうございます。ですが、私とて覚悟はあります。ですから、あまりお気になさらないように。」


そこまで言うと大成は目を閉じた。


「さて、ここからは私の番ですわね。」


瑞穂は、森を眺め意識を集中させた。



一方、楠葉とユミルはと言うと森を抜けエルフの里に到着していた。


そこには数人の人族がエルフを連れ去ろうとしていた。


「私の仲間を・・・許さない。」

「ユミル、落ち着け。怒りに任せたら男達と何も変わらないぞ?」


楠葉の言葉にユミルは落ち着きを取り戻す。


「申し訳ありません、クズハ様。あまりにも理不尽すぎて・・・。」

「ユミルの怒りもわかる。私とて抑えるのがやっとだ。まだまだ師匠達に追い付くには程遠いと実感する。それは置いておいて、さっさと片付けるぞ?」

「もちろんです。」


そう言うと二人はエルフの里を守るため走り出した。



結果、エルフに死者は出なかった。誰一人として連れ去られることもなく。


その後、大成と瑞穂とエルフ達が乗った馬車が里に着き、ようやく久遠からの依頼は完了したのだった。


その夜、エルフの里では宴会が行われた。里を救った英雄として大成、瑞穂、楠葉、ユミルが招待された。



宴会も終わりを迎え、エルフ達は自分達の家へと帰っていった。だが、大成達四人はまだその場に居た。その時、空から何かが落ちてきた。


「お疲れ様だね。」

「皆さん、お疲れ様でした。」

「あぁ、至福の時が終わりを告げました。」

「お疲れ様、頑張ったな。」


空から現れたのは久遠達であった。


「何故ここに?」

「まさか・・・。」

「師匠達はずっと見ていたのですね?」


久遠達は頷く。そして、告げる。


「俺達はこのまま旅に出る。」


大成達は久遠の言葉に驚きはしたがやっぱりとも思った。

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