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予定と準備と契約

司教捕縛作戦が完了した翌日。


久遠達と勇者組、そして司教の家に居た元奴隷は家のリビングに集まっていた。元奴隷達は、殆どがエルフである。どうやら司教はエルフが好きだったようで容姿も綺麗所が揃っていた。


「で、君達は奴隷から解放されたんだがこれからどうしたい?帰る家があるなら送っていく。」


久遠の言葉にエルフ達は顔をあげ喜んだ。一人のエルフが久遠に言う。


「私達は皆同郷です。ですから、里へ送っていただけますか?」

「わかった。でも、送るのは俺達じゃない。君達を送るのは彼等だ。」


と、久遠は大成達の方を見た。


「えっ?久遠さん?お、俺達が送るんですか?」

「流石に私達だけでは・・・。」

「何かの試験ですか、師匠?」


と、大成達が言うが久遠は気にしないで話を進める。


「彼等が送ることになる。それが不満なら好きにしてくれればいい。」

「不満ではありません。ありがとうございます。後、お聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?」

「なんだ?」

「そちらの方はもしかしてユミル様ですか?」


と、エルフはユミルを見て尋ねた。


「うん?確かに名前はユミルだが?」

「まさか、ここでユミル様に会えるだなんで・・・。」

「もしかして、ユミルは里のお姫様なの?」


と、華音がエルフに尋ねた。


「姫様ではありますが、それよりも更に上の存在のお方です。」


エルフの言葉に全員が驚いた。久遠と華音ですらハイエルフがそこまでの地位にあるとは思ってもみなかった。だから、ユミルの今の現状は明らかにヤバイのである。下手をしたら人族とエルフ族での戦争になりかねない。だが、久遠と華音の考えも杞憂に終わる。


「カノン様とカルディナ様は私を助けてくださいました。ですから、クオン様が考えていることにはなりませんよ。」


久遠と華音の心を読んだみたいにユミルは微笑みながら言う。


「それに今の私は、皆さんと一緒に楽しい日々を送れていますから。とは言え、同郷の者が居ますので里に帰らないわけにはいきませんね。ですので、申し訳ありませんが許可を頂けますか?」


と、ユミルは久遠に許可を貰うべく頭を下げた。


「いいよ、ユミルの好きにして。もし、里での生活に戻りたいなら戻ってもいいしね。そうでしょ、久遠君?」


華音が答えて久遠に尋ねた。久遠も頷き答えた。


「構わない。元々、大成達がそれなりに育ったらユミルを一度は里に帰らせるつもりだったしな。」


と、久遠の許可もあっさりとおりた。


「ありがとうございます、クオン様、カノン様。ですが、私は里で生活するつもりはありません。ここでの暮らしが充実していますし、何より皆さんと一緒の方が楽しいですから。」


ユミルは、今後も久遠達と行動を共にすることを明言した。


「と、言うわけだから大成達には彼女達を里まで送ってくれ。ちなみに、拒否権はない。」

「やっぱり拒否権はないんだ・・・。」

「ですわね・・・。」

「お受けいたします、師匠!」


ヤル気満々の楠葉。大成と瑞穂は何故かぐったりとしていた。まぁ、昨日までのギルドでの依頼を受けての訓練が異常だったためである。


そんなこんなで大成達がエルフ達の護衛で里まで行くことが決まった。


出発は明日に決まり午後は全員が準備に取りかかった。大成達とエルフ達がリビングを出た後、久遠達はまだリビングにいた。


「で、兄さん。本当に彼等だけで行かせるつもりですか?」

「そうだね、久遠君。いくらある程度強くなったとしてもまだ覚悟が足りないと思うよ?」

「そうですね。私達も一緒に行った方がいいのではないですか?」


と、まだ不安が残る大成達に華音、亜里沙、カルディナは久遠に提案した。


「何か勘違いしていないか?俺は一緒には行かないと言っただけで見守らないとは言ってないぞ?」

「じゃぁ、どうするの?」

「久々に空の旅なんてどうだ?」


久遠は、カルディナを見て答えた。


「兄さん、まさかカルディナさんの背に乗って・・・。」

「任せてください、お父様!!」


亜里沙が最後まで言う前にカルディナがこれでもかという程の笑みで答えた。


「それいいね。久々にのんびり空の旅。何か楽しみになってきた!」

「お父様とお母様が私の背に・・・。嬉しすぎて倒れてしまいそうです!!」


異常な盛り上がりを見せる華音とカルディナ。亜里沙は溜め息をつきながら言う。


「わかりました。ですが、それなりに準備をしないといけませんよね?日数がどれだけ掛かるか判りませんし、何よりバレてはいけませんから。」


何気に楽しそうに言う亜里沙。溜め息をつきはしたが実際、亜里沙は楽しみでしかたない。


「じゃぁ、亜里沙に準備を任せるよ。」

「わかりました、兄さん。」


こうして、久遠達も準備に取りかかった。




その夜、全員が寝静まった頃久遠は一人家の外に居た。


「で、四大精霊王が揃いも揃ってどうしたんだ?」


久遠の言葉通り目の前にはグレン、セシリア、シルフィ、ガイアが顕現していた。


『夜遅くに申し訳ありません、マスター。』


セシリアが久遠に頭を下げる。


「何か話したいことがあるのか?」


本題を聞き出そうとする久遠。対して、何かを決意したように見える精霊王達。


『はい、マスターには申し訳ないのですが・・・。私達は勇者達とハイエルフの娘と契約をしたいのです。身勝手で我が儘だと承知しております。ですが、どうかご許可を頂きたく「好きにすればいい」お願い・・・はい?今なんと?』

「好きにすればいいさ。別に俺はお前達を束縛するつもりはない。自分達で考えて出した答えなら構わないさ。」

『本当にいいの、お兄ちゃん?』

『いいのか、クオン?』

『・・・ご主人様?』


久遠の答えに驚く精霊王達。だが、久遠はいつかこんな日が来ると少なからず思っていた。久遠とて寂しくないわけではない。五年前共に戦った仲間であり、そして今回も自分を支えてくれた。情だってある。だが、本人達が決めたことに待ったをかけるつもりはない。


「じゃぁ、契約を解除するぞ?」


そう言うと久遠は四大精霊王の契約を解除した。その瞬間、久遠の頭の中にアナウンスが流れた。


『精霊王の加護が消滅し、新たに精霊神の加護が加わりました。精霊王の主が消滅し、精霊神の主が加わりました。』


アナウンスを聞いた久遠は驚きの表情をした。久遠の表情を見ていた精霊王達は尋ねた。


『どうかなさいましたか?』

「いや、お前達の加護が無くなったのはいいんだが、何故か精霊神の加護が増えた。」


久遠の言葉に驚きすぐさま膝をつき頭を下げる。その瞬間、久遠の後ろに一人の女性が姿を現した。


久遠は、後ろを振り返り女性を見た。


『ようやく会えました。』

「まさか、精霊神か?」

『はい。私が全ての精霊の頂点に立つ存在。精霊神レイアスと申します。精霊王達が自らの主を決めたので私がクオン様と契約が出来ました。』

「そうだったのか。」

『あまり驚かれないのですね?』

「まぁな。俺自身規格外だからな。」

『そうでしたね。これから私がクオン様をお守りいたします。以後よろしくお願いいたします。』

「こちらこそよろしくな。」


ここに初めて精霊神との契約に成功した人族が現れることになった。


「で、精霊王達は明日大成達と契約するのか?」

『そのつもりです。見届け人をマスターにお願いしたいのですがよろしいですか?』

「あぁ、大丈夫だ。」

『では、お願いいたします。レイアス様、私達はこれで失礼します。』


と、頭を下げる精霊王達。


『今までクオン様を守ってもらいありがとうございました。これからは新たな主と共に生きなさい。』


レイアスの言葉に更に平伏す精霊王達。その後一礼し姿を消した。


残された久遠とレイアスは少しの間話をし翌日に備え眠りについた。




そして翌日。家の前には馬車が止まっており大成達とエルフ達が居た。


そこで久遠は精霊王達を呼び出し大成達に契約をさせた。ちなみに、大成が火の精霊王グレン、瑞穂が水の精霊王セシリア、楠葉が地の精霊王ガイア、ユミルが風の精霊王シルフィと契約した。


「行ってきます。」

「行ってきますわ。」

「師匠、行って参ります。」

「皆さん、行ってきます。」


大成達の挨拶に答える久遠達。


「気を付けてな。」

「無理しちゃダメだからね?」

「あまり精霊王の力に頼らないように。」

「無事に帰ってきてくださいね。」


大成達は頷き答えた。


「「「「行ってきます!!」」」」


エルフ達は馬車に乗り、大成が手綱を引き出発した。


「さて、俺達も準備をして行くか。」


久遠達の大成達を見守るという名目の自由な旅が始まった。

次回は久遠達の視点か大成達の視点のどちらかです、たぶん。


読んで頂きありがとうございます。

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