捕縛作戦
今回のお話は少しグロくなっていますのでご注意ください。
禁止されている奴隷を扱う司教を捕まえるため、久遠達は準備をしていた。
準備を進める中、久遠は大成達三人とユミルを呼んだ。
「大成に瑞穂、楠葉それにユミルちょっと来てくれ。」
久遠の呼び掛けに三人は集まってくる。
「何ですか、久遠さん?」
「四人に出来た武器を渡しておこうと思ってな。」
久遠は、四人の前に武器を並べた。そして、武器の説明に入る久遠。
「武器の説明をするぞ。この武器全てに不壊、不滅が付与されていて使用者登録がされている。そのため、使用者以外は使うことが出来ない。ちなみに、使用者が死んだ場合武器は消滅する。武器の銘はまだつけてないから各自でつけてくれ。」
言い終わるとそれぞれ自分の武器を手に取る。
「この大剣すげぇ!長く使っていたように手に馴染むぞ!」
「本当ですわね?有り得ませんわ!」
「師匠、ありがとうございます。」
「クオン様、このような素晴らしい武器をありがとうございます。」
馴染むのは当たり前である。久遠が各自の癖やそれ以外のことを情報として集め作った武器である。馴染まない方がおかしいぐらいである。
「さて、これで準備も終わったし行くとするか。」
「「「「はい!!」」」」
華音達の準備も終わり、司教を捕らえるべく行動に移った。
『マスター、奴隷として捕まっている者が数人います。』
移動する最中、水の精霊王セシリアから念話が届く。
『わかった。引き続き監視をしてくれ。』
『仰せのままに。』
セシリアからの情報を全員に話したところで司教が住む家に辿り着いた。
そこには、冒険者を装った盗賊が警備をしていた。既に、相手の戦力を把握している久遠達は普通に司教の家の門まで辿り着く。
「おぃ、貴様ら何しにここに来た?ここが司教様の家だと知っているのか?」
と、盗賊の男が言うが久遠が答えるのではなく華音が答えた。
「知ってるよ?それと奴隷を扱っていることもね。」
華音の言葉に男は直ぐに剣を抜いた。
「司教様に逆らう奴が現れたぞ!」
男の一言で周りにいた盗賊達が集まってくる。それをのんびりと眺める久遠達。
「大成達は手を出すなよ?ミルフィ、フェン。大成達の守りを頼む。」
「わかりました、お兄様。」
「はい、クオン様。」
久遠、華音、亜里沙、カルディナは武器を構える。
「剣を抜いたのなら死ぬ覚悟も出来ていますよね?」
亜里沙が盗賊達に言うが、盗賊達は笑い出した。
「ほざくな、ガキが!殺せるもんなら殺してみやがれ!」
威勢よく言った盗賊だったが次の瞬間首と胴体がズレた。そして、地面に落ちる。
ドサッ
何が起きたのかわからない盗賊達。だが、亜里沙の持つ剣に血が付いているのを確認して何が起こったのかを理解した。
亜里沙が一瞬で盗賊の首をはねたのである。それを見ていた大成と瑞穂は目をそらした。楠葉に至っては目をそらしておらず見つめていた。
久遠が何故大成達を戦闘に参加させなかった理由、それは人を殺すことが出来ないからである。他の国ならいざ知らず、日本ではまず人を殺すことはない。そのため、甘さが出てしまい自らを危険に晒すことになりかねない。だから、参加させずに見学させたのである。
「二人とも目を背けるな!師匠は、私達のこれからのためにしてくれているのだぞ?」
久遠の意図を理解していた楠葉は、大成と瑞穂に言う。しかし、平和な日本で生活していたためまだ受け入れられずにいた。
気付けば門から庭に広がっていた盗賊はあっという間に制圧された。そして、久遠達は家の中へと入っていく。
「皆さん行きますよ。」
ミルフィが大成達を促す。楠葉はしっかりとした足取りだが大成と瑞穂はふらついていた。庭に広がるのは盗賊達の死体。見ないようにしてはいるがどうしても目に入ってしまう。
「慣れろとはいいません。ですが、殺さなければいけないときがやがて確実に訪れます。それだけは覚悟しておいてください。」
重くのし掛かるミルフィの言葉。その言葉に何かを決意したように顔をあげる大成と瑞穂。
「そう・・・だな。久遠さんは、人を殺すことを教えたいんじゃなく人を殺す覚悟を俺達にもってもらいたかったんだな。」
大成は、久遠の意図をようやく理解した。瑞穂も頷き周りを見渡した。吐き気があるのを抑えながら。
大成達が玄関に着いたときには既に決着がついており司教は拘束されていた。家の中に居た盗賊は捕縛され、使用人は自分達の雇い主が奴隷を扱っていることを知らされていなかった。そのため、捕縛はされずそのままである。
捕まっていた奴隷も解放され、久遠達に寄り添っていた。
程なくして、騎士団が到着し司教と盗賊達を連行した。使用人達も城へと連れていかれた。奴隷達は、家がないことから久遠達の家に泊まることになり、久遠達も家へと帰っていくことになった。
こうして、アゼディアで起こった奴隷事件は幕を閉じた。
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