皇夫婦とある少女の出会い
久遠と華音が異世界召喚から二度帰還してから八年後・・・。
二人が結婚してから六年後のクリスマスイブ。
この日は、二人とも仕事が休みで久々の休日のためデートを楽しんでいた。
「あなたとこうして歩くのは何時以来ですかね?」
「そうだなぁ?二ヶ月ぐらいか?」
二人は仕事が忙しく中々休みが取れなかった。完全に休みが取れないわけでわなく、所謂半休は取れていたが一日の休みは本当に久し振りなのだ。
「しかも、クリスマスイブに休みだなんて・・・。」
「結婚してからクリスマスイブは休みじゃなかったもんな。」
「本当にそうですね。ですが、今日はこうやってあなたと朝食を外で食べて、これからの事を考えると楽しくて仕方ありません。」
「今日一日は楽しもうな。」
「はい!」
朝食は喫茶店で済ませ、まだ開いていない商店街を歩き駅へと向かう。
二人の目的地は都内某所。今日一日で色々回る予定である。
二人が目的地に着いた頃、時間は十時を回っており店は開いていた。
「あなた、この服なんてどうですか?」
「それも良いがこっちはどうだ?」
「それも良いですね。では、両方買うことにします。」
今は華音の服選びの最中である。ちなみに、久遠はその人が似合う服を選ぶのが何故か上手い。本人も何故か判らないらしい。
その後、久遠の服を選び終わると時間は昼になっていた。
「華音、そろそろ昼飯にしないか?」
「あら?もぅ、そんな時間なんですね。楽しくて時間を忘れてしまいました。」
二人は、雰囲気が良さそうな店に入り昼食をとる。昼食後は、お互いのクリスマスプレゼントを買うために一旦別行動にした。華音曰く、プレゼントは分からない方がいいとのことである。
「では、あなた。二時間後に駅前で待ち合わせにしましょう。」
「わかった。気を付けてな?」
「はい、あなたもお気を付けて。」
そう言うと華音は足早に去っていった。時間は有限であり無限ではない。そのため、良いものを久遠にプレゼントしたいための行動である。
久遠は久遠で何を買うかは決めていた。何を買うかと言えば、アクセサリーである。ペンダントが好ましいと思い、雑貨屋とジュエリーショップを回る予定である。
「さて、俺も行くか。」
お目当ての場所へと移動を開始した。
そして、一時間半後・・・。
未だ良いものが見つからず焦り出す久遠。時間的に考えてもこれが最後の一件になる。
その店は、何処にでもありそうな雑貨屋で外からでは雑貨屋と気付かないような作りである。何故かこの雑貨屋が気になった久遠は店の扉を開け、店に入った。
店内を見渡す久遠。そして、一つのペンダントが目に入った。
そのペンダントは、大小のハートが絡んでいる物で見た感じは何処にでもありそうな普通のペンダントであった。だが、久遠は何故かこのペンダントが気になり手に取る。他にも良いデザインのペンダントがあるにも関わらず。
「これが一番良さそうだな。」
と、ペンダントを見ていると偶々太陽の光がペンダントを照らす。その時、ペンダントのハートの部分の色が変化した。銀色だったものが真っ赤に なった。
「い、色が変わった?太陽の光で色が変わるのか?」
ペンダントを見つめること数分、久遠はこのペンダントを買うことを決意しレジへと急いだ。
「ありがとうございました!」
定員に見送られ集合場所である駅前へと向かった。
駅前にはすでに華音がおり、久遠を待っていた。
「悪い、遅れた。」
「いえ、時間的には遅刻ではありませんよ。」
「そうか、プレゼントは何時渡す?」
「そうですね、帰ってからでいいんじゃないですか?」
「そうするか。」
と、二人は家に帰ろうとした瞬間、少女の悲鳴が響き渡る。
「キャァァァァァァ!!」
久遠と華音は悲鳴を聞き、すぐに行動に移した。
そこには、少女を連れ去ろうとする男達と少女を守ろうと必死になっている男達とが戦っていた。
「華音、助けるぞ!」
「もちろんです!」
短い会話でお互いの取るべき行動を確認した。華音は、少女の護衛であろう男達を、久遠は少女を助けるために動いた。ちなみに、周りには野次馬が大勢いる。見ているだけで助けようとは一切しない。
「申し訳ありませんが、少し眠っていただきます。」
華音は、男達を一瞬で気絶させた。それを見ていた護衛の男達を目を丸くした。何が起こったのか分からない様子である。
「悪いがその女の子を助けさせてもらう。」
久遠が言うと少女を捕まえていた男が襲いかかってきた。だが、久遠はそれを簡単に避け一撃で気絶させた。残る男達はナイフを取りだし久遠に襲いかかってきた。
「折角の休日を台無しにするなよ。」
と、言うとこれまた一瞬で無力化した。
「大丈夫だったか?怖い思いをさせて悪かったな。」
少女に声をかける久遠。そこに華音も現れ少女と会話する。
「大丈夫でしたか?後は、貴女の護衛の方々どうにかしてくれますから。」
「えっ?あ、はい。」
「では、あなた。行きましょうか?」
華音の言葉に頷く久遠。その場を立ち去ろうとする二人に少女は声をかけた。
「あ、待ってください。まだ、お礼を言ってません。」
少女の言葉に振り替える久遠と華音。
「助けて頂きありがとうございます。出来ればお名前を伺っても宜しいですか?」
「別に礼は要らないよ。名前は、皇久遠だ。」
「私は、皇華音です。」
と、言い残し二人は去っていった。
「皇・・・久遠。」
少女は、久遠の名を呟き二人の後ろ姿を見送った。
その後、二人は家に着き夕食を済ませプレゼントの交換をした。
久遠は、そこで目が覚めた。夢を見ていたのである。久遠は、夢であることに気付き微笑んだ。
「どうしたの、久遠君?」
「どうかしましたか、兄さん?」
久遠の両隣には華音と亜里沙が居た。
「懐かしい夢を見た。亜里沙と出会った時の夢をな。」
「懐かしい夢を見たね。」
「本当ですね。ですが、あんなことがあったから今こうして一緒に居られるので感謝しないと。」
久遠は、不意に華音の首から下がっているペンダントを見つけた。
そのペンダントは、久遠が夢で買ったペンダントと同じ形をしていた。いや、同じものである。華音は、貰ったその日から毎日付けているのだ。
「二人ともこんな世界での生活だけど・・・これからもよろしくな。」
「うん!」
「はい!」
「華音、亜里沙。愛してるよ。」
久遠が言い終わると華音と亜里沙は久遠に抱きついた。そして、久遠は思った。
この幸せが何時までも続くようにと・・・。
亜里沙との出会いでした。世の中クリスマスイブということで三人の出会いもクリスマスイブにしました。
次回は本編です。
読んで頂きありがとうございます。




