クロウ王国と勇者の憂鬱
クロウ王国の話です。
久遠達がクロウ王国との戦争に参戦を決めた日、クロウ王国では会議が行われていた。
「陛下、本当にアゼディアに宣戦布告をしてよろしかったのですか?」
一人の大臣が国王に進言した。
「当たり前だ!今、国の状況は良くない。先の魔物の群れとの戦いで犠牲が多かった。そのため、一刻も早く国力を回復させるには戦争に勝って領地を増やすしかない。幸いにも、騎士団はそこまでの被害は受けていない。」
と、頑なに戦争にこだわる国王。しかし、大臣も引き下がらない。
「まずは、国政を安定させてからでも良いのでは?早急に事を進めれば民からの反感も買ってしまいます。」
「そうは言うが、農地は収穫間近だった場所が荒らされ収穫出来ない。今は、何とかなっているが長くは続かないであろう?」
と、現状を一応理解している国王。食料の事を議題に出されると大臣は黙ってしまった。
「だから、進軍するしかないのだ。このままでは国が滅びる。私は、この世界の王にならなければいけないのだ。それに、今回は勇者も出陣する。」
と、国王は勇者も戦争に参加することを明言した。
「間者からの報告では、召喚に巻き込まれた者がアゼディアに居るとのことだ。それを聞いた勇者がその者達を奪還したいと言っていた。だから、利用させてもらう。」
勇者達は、この世界に来てから訓練に明け暮れ、今では騎士団長すら勝てないぐらいまでに成長していた。そのため、特に男勇者が思いっきり天狗になっていた。
「五年前の勇者は力を持ちすぎた。しかし、今回はそこまでの力を持たぬ。しかし、この世界の人間には脅威となる存在だ。よって、我が国の力を示す良い機会だと私は思っている。」
国王は、勇者の力を使い世界統一を目論んでいたのだ。
「大臣、何時までに戦力が整う?」
「食料を含めますと、二ヶ月ぐらいはかかるかと・・・。」
「そうか。では、二ヶ月後にアゼディアに侵攻する。これは、国王命令である。」
「はっ!!」
大臣は、頭を下げ部屋を出ていく。
一方、勇者達はと言うと・・・。
訓練場で訓練をしていた。
「戦争か・・・。平和な日本じゃ考えられなかったな。」
「そうですね、あの人が参加を表明しなければ出ていませんね。」
「そうだな。彼の手綱を握らなければいけないのは面倒だな。」
勇者として召喚された残りの勇者の会話である。ちなみに、手綱を握られる勇者は亜里沙に声をかけて断られた勇者である。
「面倒だな・・・。」
「面倒ですね・・・。」
「憂鬱だ・・・。」
「「「あの三人が羨ましい。」」」
これが、この三人の本音である。自分達が如何に籠の中の鳥かを理解していた。
今さらだが、勇者の性別は男が二人に女が二人である。
そこへ、先程国王と話をしていた大臣が現れる。
「進軍は、二ヶ月後になりました。勇者様方は進軍に備えてください。」
と、言い残し直ぐに訓練場を後にする。
「皆、頑張ろう!」
一人元気な勇者。残りの三人は溜め息をつき頷いただけだった。心の中では・・・。
(((憂鬱だ(です)。)))
勇者達は、その日が来るのを待った。
クロウ王国の話でした。勇者の現状を少し書きたかったので書きました。次回からは久遠視点に戻ります。
読んで頂きありがとうございます。




