城での会議?
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勇者が出てきたら戦争に参加すると久遠達が答えを出した二時間後、城の会議室では教皇を始め、ミルフィ、フェン、司教など国の重鎮が勢揃いしていた。その中には何故か冒険者ギルドのギルマスも居た。そして集まった理由は、もちろんクロウ王国との戦争についてである。
「皆に集まってもらったのは、今回のクロウ王国との戦争についてだ。何か報告があれば聞こう。」
と、教皇が本題を切り出した。その直後、ギルマスが口を開いた。
「じゃぁ、俺から言うぞ?ギルドに来たクロウ王国からの冒険者の話では、一ヶ月ほど前に魔物の群れが王都を襲ったようだ。」
と、ギルマスが言うと教皇とミルフィ、フェン以外がざわめき出した。
「んで、騎士団と冒険者が迎撃に出たのはいいが結構な打撃を受けたみたいだな。死者こそ少なかったようだが重軽傷者が大量に出たらしい。それに、建物の被害、農作物への被害とあげればきりがないらしい。」
と、久遠達が空から見た魔物の群れの被害報告をするギルマス。対して、教皇が口を開く。
「では、今回の宣戦布告は自国の為だと?」
「そうかもしれないがそうじゃないかもしれない。確かに被害を受けたが自国で立て直せないことはないと俺は思っている。それこそ、国が圧政を敷いていなければだがな。それに、噂でしかないがまた勇者が召喚されたとも聞いた。」
この発言でまたざわめき出す。勇者召喚については久遠達から聞いてはいたが、まさか久遠達以外にも居るとは思っていなかった。二時間程前にフェンとミルフィからの報告を聞くまでは。
「あぁ、その情報は私も知っている。五年前の勇者召喚とは違い、今回は四人らしい。」
「お前、人数まで知ってたのか?」
「あぁ、この情報は真実だと私は思っている。」
「・・・そうか。」
と、ここにきて今まで沈黙していた一人の司教が口を開く。
「教皇様、降伏はお考えですか?」
「それはないな。こちらは、元司教の件でクロウ王国に攻めこむ口実がある。それなのに戦わず降伏することなどあり得ない。むしろ、被害者は我が国だ!」
「ですが、和睦で決着をつける方法も・・・。」
引き下がらない司教に、ギルマスが言う。
「それも無理だろうな?何せ、手紙とはいえ宣戦布告を送りつけてきたんだからな。もし、話し合いの余地があるなら場を設けることを手紙に書くはずだ。」
「ですが、このまま戦争になれば罪もない国民が巻き込まれます。それを防ぐための案も必要なのではありませんか?」
と、司教も食い下がる。しかし、教皇が言う。
「では、何か案があるのか?民を巻き込まず、我らが絶対に損をせず尚且つ、クロウ王国が納得出来る都合のいい案があるのか?」
少し強い口調で言う教皇。対して、司教は口を閉ざした。誰しもそんな都合のいい案など浮かぶはずもない。
大体、戦争を行う理由は領地拡大が主な目的である。そうすれば、食料は増えるし何より人手が増える。それに伴い戦力増強にも繋がる。だが、負ければ地獄になる。国のトップは恐らく死刑、国民は強制労働。それが判っていても人は争いをやめない。簡単な話、勝てばいいのだから。
「そんな都合のいい案があるわけないだろ?それに、もし話し合いの場が設けられたとしてもクロウ王国は自分達に有利な案しか出してこないはずだ。こちらは無理難題を押し付けられる。結果、交渉決裂で話し合いは終わる。」
と、ギルマスは司教に言う。それを聞いた教皇も頷く。
「そうだろうな。そんな時間があるなら騎士団と魔法師団を鍛えた方がまだマシだな。」
「確かにそうだな。あとは、街に防壁を造るぐらいだろうが・・・。何時攻めてくるか判らないが以上無理があるな。となれば後は・・・誰が騎士団と魔法師団を鍛えるかなんだが・・・。」
ギルマスはそう言いながら久遠達の事を考えた。
(アイツ等なら騎士団と魔法師団を鍛えられるんじゃないか?まぁ、いざとなれば俺が教えれば良いだけなんだが・・・。)
「それなら大丈夫だ。私の知人が請け負ってくれた。」
と、教皇が言うと「誰だ?」と周りが言う。
「悪いが紹介するつもりはない。騎士団と魔法師団は極秘に訓練をする。何人たりとも見ることは叶わぬ。」
釘を刺す教皇。久遠達の正体がバレた後を恐れての発言である。これに関してはミルフィとフェンの助言によるものである。
「そうすると、国民への対応になるが・・・。」
ここで、ミルフィが初めて口を開く。
「それについてですが、包み隠さず話すしかないと思います。何かを隠してしまえば、それは国への不信感に繋がります。そうなれば、街中が不安で溢れ、国民が何を信じればいいのかわからなくなります。」
と、ミルフィは全てを話すことを提案した。だが、先程和睦を提案した司教がまた発言をした。
「しかし、それでは国民が逃げるかもしれません。それに、冒険者も・・・。」
言いながらギルマスを見る。
「まぁ、冒険者は自由だからな。それは仕方ないことだ。だがな、この国を中心に依頼を受け、長く居座っている連中はこの国が好きだから居座るんだ。居心地がいいから更に住みやすいように努力してんだよ。だから・・・あんまりこの国の冒険者をナメるなよ?」
若干、威圧しながらギルマスは言う。
「ありがとうございます、おじ様。そう言って頂けるだけでどれほど心強いか。ですから、こう言うのです。」
『自分達の住むべき場所は自分達の手で守ろう。』
娘の成長を嬉しく思う傍ら悲しくもある教皇。ギルマスもまたミルフィの成長を喜んでいた。
ミルフィの言葉に全員が聞き惚れ頷く。一人を除いては・・・。
こうして、会議は終わりを迎える。
翌日、教皇とミルフィ、ギルマスは城にある訓練所に来ていた。
訓練所には、騎士団と魔法師団も集まっていた。騎士団と魔法師団はこれから何が行われるか聞いていないため不安になっていた。教皇にミルフィ、そして教皇とパーティーを組んでいたギルマスまでもが居るのである。不安にならない方がおかしい。
そこに、フェンに連れられて久遠達が姿を現した。久遠達は、教皇とミルフィの隣に立ち言葉を待った。
「騎士団並びに魔法師団諸君。これからこの四人が君達に稽古をつけてくれる。これは、クロウ王国に負けないための訓練でもある。若いからといって舐めてかかると痛い目をみるぞ?」
こうして、久遠達による騎士団、魔法師団の改造計画は動き出した。
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