フェンからの依頼
ブクマ、評価などしていただけるとありがたいです。
翌日、フェンが依頼を持ってきた。
「大変申し訳ないのですが・・・。」
「「お断りします。」」
「あのぉ~。まだ何も話していないのですが。・・・」
内容を話す前に亜里沙とカルディナが断る。
「内容を聞かなくても大体創造がつきますから。」
と、亜里沙が言うと「うんうん」と頷いている久遠と華音。それでも話を聞いてほしいフェンは話の続きを試みるが。
「謁見の間で突っかかってきた人間の話でしょう?どうせ、私達の力がみたいから騎士団と魔法使いとの模擬戦をしたいとか言ったのではないですか?」
と、カルディナが答えた。
「はい、その通りです。私が実力は申し分ないと言ったのですが。所詮、私は司教になりたての身。意見は聞いてもらえませんでした。」
「まぁ、そうだろうな。というか、フェンは司教だったんだな。」
フェンが司教であることに驚く久遠。それなりの地位にいるとは思っていたが、まさか司教とは思っても見なかった。
「でも、久遠君。この話を断るとフェンの立場も微妙にならない?」
「まぁ、そうなるだろうな。まぁ、精霊王達の力を使わなければいいんだけどな。」
と、言うと念話が届く。
『マスター、あのような人間に容赦する必要はありません。』
『そうだぜ、クオン。叩き潰せ!』
『お兄ちゃん、アイツ裏で色々やってるみたいだよ?』
『ご主人様、人族以外の種族を実験に使っているみたい。しかも、幼女ばかりを拉致して。』
と、言った内容である。ちなみに、この念話は華音、亜里沙、カルディナにも聞こえている。そのため、三人の顔に怒りが現れる。
「もし、本当にそんな事をしていたら許せないね。」
「兄さん、全力で叩き潰しましょう。」
「幼女は愛でるのであって実験に使うものではありません。」
三人の発言の変わりように狼狽えるフェン。その様子を見ていた久遠もまた怒りを覚えていた。
(形だけの共存か・・・。どれだけ時間が経とうとも、世界が変わろうともかわらないのか?)
神霊国アゼディアは、多種族が暮らす場所。そねため、人族も少なからず居る。今の精霊王の言葉が真実なら人族VS他種族の構図が出来上がってしまう。久遠にしてみれば自分達さえ静かに暮らせるならどうでもいいとは思う反面、知り合いが居る国同士での争いはしてほしくない。そのため、久遠は迷っていた。そんな久遠の迷いを消す一言がもたらされる。
「久遠君、悩んでる事は判るよ?私だって悩んでる。でもね、私はこの世界を変えたい!私達が幸せに暮らしていける世界にしたい。だから、迷わないで?自重なんかしなくてもいいよ?もし、どこかの国のトップになるなら、私達が全力で支えるよ?」
流石は、長年連れ添ってきた華音である。久遠の悩みをわかり、アドバイスというか答えを出してくれる。そして、亜里沙とカルディナも言う。
「兄さんが面倒事を避けたいのはわかります。それは、私達のためでもあるんですよね?でも逆に、面倒事が起こらないようにしてしまえばいいんです。そうすれば、何も問題ありません。」
「クオン様は、私を娘の様に接してくれました。その為なのか、クオン様は私を過保護にしすぎのような気もします。私は一人でも生きていけるようになりました。ですから、今度はご自分の事を考えてみては如何ですか?カノン様とアリサ様が仰られたように私達はクオン様にどんな時も付いていきます。」
(そうか、自分の幸せを考えてもいいのか・・・。住みにくいなら住みやすくすればいいのか。何より力がある。だが、人間相手に使うのは躊躇いもある。まぁ、その辺は皆で考えればいいか。ありがとう、華音、亜里沙、カルディナ。俺は・・・俺達の幸せを手に入れる。)
考えが纏まった久遠の行動は速い。
『全精霊王に告ぐ。司教のしていることを暴け。。証拠になりそうなものは全て回収しろ。』
と、セシリアに指示をだすと。
『『『『仰せのままに。』』』』
精霊王に指示を出した久遠はフェンを見て言う。
「フェン、その依頼受ける。ただ、ちょっと過激になるがいいよな?」
と、悪戯っ子の顔をして久遠は言う。今までの会話を静かに聞いていたフェンは頷いた。
「皆さんの言うことが本当なら由々しき事態ですから。その辺りは私が何とかします。」
「で、いつ模擬戦をやるんだ?」
「明日ですね。今日一日は準備にあてるそうです。当日は、向こうから迎えが来ることになっています。」
フェンが答えるとすかさず華音と亜里沙が言う。
「自分達に都合が良いような場所にするんだね。」
「そのようですね。もしかしたら罠も仕掛けるかもしれません。」
二人の会話に「流石にそれはないのでは?」とフェンが言うが「ありえるな」と久遠が言った。
「そうでしょうね。クオン様が助けた?のが大司教であり教皇の娘ですから。これがもっと下の者なら、そもそもこの依頼が発生しなかったかもしれませんね。」
と、最後にカルディナが付け加える。
「あぁ、どうせ自分が出世したいから教皇の娘を嫁にでもしたいんだろう?だから、自分の方が強い、もしくは役に立つと思わせたいんだろうな。だが、そんな奴の思惑を叩き潰すのは・・・。」
ここまで言うと久遠達四人は声を揃えて言った。
「「「「面白い!!」」」」
最後の言葉を聞いたフェンは、相手である司教が憐れに思えてきた。司教は、喧嘩を売る相手を間違えたのである。まぁ、この話が出た時点で手遅れなのだが。
そして、午後には精霊王からの連絡があり証拠も揃った。司教の家の地下に監禁されていた幼女達は精霊王の保護を受け、その場で待たせている。「明日には全て終わる」と伝えて。地下には既に生き絶えた者も居たようで、その者達は精霊王によって手厚く葬られた。
この話を聞いた四人は更に不機嫌になり辺りに殺気が溢れた。幸い、死者は出なかったが何かしらの体調不良を訴える者が居たとか居なかったとか・・・。
そして、翌日・・・。
司教からの迎えが現れついていくと、そこは街の外であった。
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