救出開始
華音達が転生魔族を匿うための家などを造っている頃、久遠、亜里沙、楠葉は敵意の無い転生魔族を救うため行動を開始した。
久遠は街の中央から城に向かうルート、亜里沙は街の右側から向かうルート、楠葉は街の左側から向かうルートである。
まず、最初に転生魔族と接触したのが亜里沙であった。
「どうやらあの人のようですね。一人に対してどれだけの人数で囲んでいるんですか?」
亜里沙が今見ている状況は、魔族一人に対して二十から三十人は居るのである。
ただ、この人数はあくまで今の人数である。助ける魔族と敵意のある魔族との間には空間が存在していた。
その空間には魔族が倒れていたのである。
(あの人数を一人で倒されたようですね。流石は兄さんの知り合いだけはありますね。)
と、亜里沙が考えていると亜里沙に気付いた魔族がいた。
「おい、お前!ここで何をしている?」
亜里沙に声をかけたのは敵意のある魔族だった。
「何をと言われましてもまだ何もしていませんが?」
「じゃぁ、何で此処にいるんだ?」
「此処にいる理由ですか・・・。それは、そちらの方を助けに来たからですね。」
と、亜里沙が答えると囲んでいた魔族が一斉に亜里沙を見る。
「そこの君。僕に構わず逃げた方がいい。君ではこの人数には勝てない。僕も限界に近いから助けてあげることも出来ない。」
亜里沙に逃げろと言ったのは囲まれていた魔族だった。
「申し訳ありませんが逃げるという選択肢はありません。私は兄さんに言われて貴方を助けに来たのですから。」
「兄さん?君のお兄さんの名前は?」
「久遠、皇 久遠です。」
亜里沙の言葉に魔族は驚いた。
「久遠・・・。久遠がこの世界に居るの?」
「はい。それに姉さん、華音姉さんも居ます。」
「あはは、華音さんも居るのか。まさか、二人にまた会えるなんて・・・。」
「因みにですが、兄さんと姉さんは地球で結婚されています。子供はこの世界で生まれましたが。」
「そうなんだ。あの二人は結婚して子供もいるんだ。ならこんなとこで死んだら駄目だね。ねぇ、君。」
「何ですか?」
「僕に力を貸してくれないかな?」
「元よりそのつもりです。」
亜里沙は答えたを言った直後に動いた。
「私の邪魔をしないでくださいね?」
言い終わると同時に魔族の囲いの中に飛び込んだ。
魔族は、何も動けず亜里沙を簡単に通してしまった。
「なっ!?一瞬で俺達の囲いを突破しただと?」
亜里沙は一瞬で囲いを突破し助ける魔族の前に立っていた。
「申し訳ありませんがお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「あぁ、僕はクウヤだよ。君の名前は?」
「亜里沙です。では、クウヤさん。姉さんが造っている隠れ家がありますからそこまで頑張ってくださいね。」
「もちろん。久遠と華音に会うまでは死ねないよ。」
「では、行きましょうか。この包囲網を突破して。」
亜里沙とクウヤの戦いが今始まった。
亜里沙とクウヤが戦い始めた頃、久遠は最初の地点に着いた。