思わぬ再会と別れ
お久し振りです。そして年内最後の更新になります。
気付けばこの小説を書き始めて一年が経ちました。早いものです。
久遠に声をかける魔族。
「久し振りだね、久遠。」
声がする方を見た久遠。
「ソラ・・・なのか?」
「えっ?ソラさん?」
久遠の言葉に反応して華音もまた驚き声をあげた。
「久し振りだね、華音。元気にしていたかい?」
「え、ええ。元気にしていました。」
「そう。それは良かったよ。あの後心配していたんだよ。」
そう言いながらソラは久遠達に近づいてきた。
「ソラ、まさか魔族に転生しているとはな。何か未練でもあったのか?」
「うーん。未練は無いと思うけど何故か魔族に転生したんだよね。」
「未練が無いのに転生出来るのか?」
「さあ?何故僕が転生したのからわからない。でも、わかる人物は居るよ?」
と、ソラはある意味で爆弾を落とした。しかし、その言葉を待っていたかのように答える久遠。
「あの女神か?亜里沙や楠葉達を召喚した。」
「そうだね。久遠の言う通りあの女神だよ。でも、今は邪神だけどね。」
二人の答え合わせが終わり、華音はソラに尋ねた。
「ソラさん。貴方は私達の敵ですか?」
今やこの世界では魔族は敵と認識されている。そのため、華音はソラに確認したのである。
「どうだろうね?僕じゃ二人にはまず勝てない。」
そして、ソラは亜里沙、楠葉の順に指を指した。
「君達二人にも勝てないかな?そこの神龍や神狼にも勝てない。もし勝てるなら久遠と華音の子供の三人かな?」
と言うが更に付け足した。
「但し、一対一でならね。三人纏めてだと確実に負けるね?」
と両手をあげ降伏のポーズをした。
「それは敵にならないと言う意味でしょうか?」
ソラのポーズを見て華音は確認した。
「そう取ってくれて構わないよ。僕はこの世界でまた新たに生きていくつもりだから。それに駒として生きるのはうんざりだからね。」
ソラは遥か上空を見上げ言った。
「あっ、そうだ。僕以外にもあの時召喚された人も魔族に転生してるからね。でも、記憶は改竄され邪神の駒になってるから。」
それだけ言うとソラは久遠達に背を向け歩き始めた。
「ソラ、行くのか?」
歩き始めたソラの背中に久遠は言う。
「もちろん。僕はもう二度と戦いたくない。残りの生がどれだけあるかわからない。でも、僕は戦いと関わらず生きていきたい。あの悲劇を知る一人の人間として。この世界はあの世界とは違う。でも、争いは必ず生まれる。それこそ誰かが世界を統一しない限り。だから、僕は何もしない。関わらない、たとえ久遠や華音に頼まれたとしても。」
背中越しとはいえ、ソラの意志が痛いほどわかる久遠と華音。そのため、返す言葉が出てこない。それでも久遠は言わずにはいられなかった。
「なら、争いが無くなれば戻ってくるか?」
「確実に無くなればね。」
「分かった。」
「じゃぁ、今度こそ僕は行くね。最後に二人と話せて良かったよ。」
そんな言葉を残し、ソラは消えた。
ソラが消えた場所を暫し眺めた久遠と華音。二人の目には新たな決意が宿っていた。
それは、この世界から争いを無くし再びソラに会うという決意である。
その為には今何をすべきか考え、行動に移すことにした。
プロローグで登場したソラが出てきました。前話の終わりを書き上げたときにソラの登場を考えました。ちなみに、他の召喚された人達はほぼ出てこないと思います。
それでは皆さん、良いお年を。