王都到着
亜里沙の放った「精霊の帰還」によって勇者は消滅し、街は解放された。
「魔族に従っていた魔物も統率がなくなり散り散りになりましたね。」
華音は今の現状を見て久遠に言った。
「そうだな。街の住人が出てくる前に此処を離れるぞ。」
久遠が言うと全員が頷いて答えた。
そして、久遠達はクロウ王国の王都に向かうまでの街を解放しながら進んでいった。
そんな時、前方から勢いよく走ってくる馬車があった。
久遠達は、街道の両サイドに分かれ馬車が通りすぎるのを待った。
しかし、馬車は久遠達を通り過ぎると急停止さした。そして、降りてきたのは商人ともとれる人間だった。
「き、君達。この先は魔族と魔物が集まっているぞ。直ぐに引き返せ。」
と、言い残し直ぐに馬車に乗り込み走り出した。
「あの商人らしいのは何故王国の王都方面から来たんだ?」
楠葉の言葉も最もである。魔族による宣戦布告があったのを知らないはずがない。だから、余計に不思議に思ったのだ。
「どうせ武器や防具が売れると思ったんじゃないか?」
「それもあるかも知れませんね。もしかしたら、ただ単に媚を売りに行っただけかもしれませんよ?」
久遠と華音の考えは正解である。先程の商人は魔族がこの世界を支配すると思い恩を売るためにクロウ王国に行ったのだ。そこで武器や防具、食料を売るつもりでいた。しかし、魔族に武器や防具は必要ない。その事を理解した商人は直ぐ様媚を売り始めた。
しかし、魔族は商人のズル賢さに嫌気がさし殺そうとした。だが、間一髪の所で商人は逃げた。そして、現在に至る。
「兄さん、どうせ自分だけ生き残ろうと無い悪知恵を使ったのです。私達が気にすることもありません。」
「そうだな。じゃぁ、王都に向けて行こうか。」
久遠が言うと再び歩き始めた。
そして、最後の街を解放した久遠達は時間短縮のため空を飛びクロウ王国に向かった。
そして、クロウ王国に着いた久遠達は何食わぬ顔で王都の門の前まで来た。