クロウ王国のとある街
久遠達がクロウ王国に向けての旅はある意味で順調だった。いや、順調すぎた。
魔物は全く襲ってこない。だが、そのかわりに街に寄れば魔族が襲ってきた。
街の様子を簡単に説明すると、街の住民は魔族の奴隷として扱われていた。
そのため、奴隷として扱われたくない者達は魔族に媚を売り、奴隷を回避しようとしていた。
そんな住民に対して魔族のとった行動は、同胞を作り出すことだった。
結果、街では魔族が溢れ変えることになった。
ただ、魔族になるにはある一定の条件があった。それは、ある程度の力があり、精神が強くなければならない。何故なら、魔族になるには一度死に転生する必要があるからだ。
そのため、条件を満たさなければ発狂して死んでしまう。
そのため、異世界からの転生者の多くが魔族になるのである。元の世界で何かしら悪行を行った者達である。
そんなこともあり街には最低一人の転生魔族が居る。その者が街の実権を握っていた。
「さて、街の手前まで来たが見るからに支配されてるな。」
久遠達はとある街の前まで来ていた。そして、街の様子を見て魔族により支配されていることを悟った。
「その様ですね。ですが、それほど強い力は感じませんね。」
華音は街の様子を見ながら街に居る魔族の力を感じ取っていた。
「兄さん、どうしますか?このまま突入して潰しますか?」
亜里沙が方針を口にした。しかし、久遠は首を振り答えた。
「このまま行くと夜になる。だから、ここで夜営をして明日街に普通に入る。」
久遠の言葉が終わると直ぐにカルディナが動いた。テントを張り、夕食の準備を始めた。
そして、翌日。
久遠達は準備を整え、改めて街に向かった。
街に着いた久遠達は街の入口で早速魔族と対峙していた。
その魔族とは、クズ勇者であった。
「亜里沙さんじゃないですか。なんでそんな奴と一緒に居るんですか?僕と一緒に女神様の為に力を使いましょう。」
クズ勇者は、亜里沙に話しかけた。しかし、亜里沙は首を傾げ答えた。
「魔族と手を組むことはありえません。と言うかそもそも貴方は誰ですか?私に気安く声を掛けないでください。私を名前で読んでいい男性は兄さんだけです。」
その言葉にクズ勇者は口をパクパクさせながら徐々に顔を赤くしていった。
「何故だぁぁぁぁぁ!何故、亜里沙は俺の元に来ない!そんな奴より俺の方が力があるんだぁぁぁぁぁぁぁ!」
「叫べば強くなるとでも?でしたら貴方はそれまでですね。」
更に追い打ちをかける亜里沙。その言葉を聞き更に激昂するクズ勇者。
「おい、そこの冴えないクズ!俺と勝負し・・・ぐはっ!」
いきなりクズ勇者は吹き飛ばされた。
「今何て言いましたか?兄さんを冴えないクズ?そう言いましたか?」
亜里沙にやりクズ勇者は吹き飛ばされたのである。そして更に華音、楠葉、遥香、紗良、優真、カルディナが殺気を放っていた。当の本人である久遠はお好きにどうぞといった感じで空を見上げていた。
「楽に死ねると思わないことです。」と華音。
「兄さんを侮辱した罪、死んで詫びてください。」と亜里沙。
「久遠殿を侮辱したことを死んで償え!」と楠葉。
「「「パパを侮辱するなぁぁ!!」」」と子供達。
「二度と転生出来ないように塵も残さず無に還してあげます。」とカルディナ。
その瞬間、華音はクズ勇者を回し蹴りをした。
「ぐはっ!」
飛ばされた先にはカルディナが待ち構えていた。飛んで来るクズ勇者をカルディナは拳を振るい上空へと飛ばした。
「ぐへっ!」
空で待ち構えていたのは子供達。そしてお手玉をするかのようにクズ勇者を殴る。
そして、次は楠葉である。楠葉は地上に居る亜里沙に向けてクズ勇者を蹴落とした。
ドゴォォォォォン
クズ勇者は地面に埋もれた。
「名前も全く知らない人、さようなら。」
冷たい笑みを浮かべた亜里沙は最後の一撃をはなった。
「精霊の帰還!!」
亜里沙の放った魔法は全属性の精霊による同時攻撃。通常は、魔法を使った者の力量により出てくる精霊が決まるのだが。今回は何故か精霊王が顕現した。
結果は言うまでもなくクズ勇者の完全消滅で幕を閉じた。
こうして1つの街を解放した久遠達だった。




