演説の前
場所はアゼディアの城内にある広場。
そこには騎士団と魔法師団の精鋭達が集まっていた。
集まっている理由は今からアゼディアの教皇であるミルフィの演説が始まるからである。
何故ミルフィの演説が始まるのかというと魔族の侵攻が始まったからである。
そのため、騎士団と魔法師団が集められ、そして街には住人も集まっていた。
街の住人にはミルフィの声だけが届けられることになっていた。
場所は城にある部屋に移る。
「ミルフィ、何故俺達が此処に居るんだ?」
「そうですね。私達は街で演説を聞くつもりでしたのに。」
久遠と華音はそうミルフィに言った。
二人の言葉から分かるように久遠と華音そして子供達、カルディナ、サリアはミルフィと同じ部屋で待たされていた。
「久遠さんはこのアゼディアにとって英雄だから仕方ないですよ。」
「そうですわね。お二人はこの戦争にはなくてはならない存在ですから。」
大成と瑞穂がそんなことを言った。
「そんな大層なことはした覚えはないぞ?そんなことより街には帰らせろ。」
「私達はあまり目立ちたくありません。」
若干、言い方にトゲがあるが二人の素直な気持ちである。
「戦いには参加する。だからこの場に居る必要はないだろ?」
「私達を餌に指揮を更にあげようと考えているなら無駄ですよ?」
華音の言葉にミルフィ、フェンの顔が一瞬だが少し変化した。
その表情を見逃さない久遠と華音。そして座っていたソファーから立ち上がる。
「みんな、街に行くぞ。」
久遠の言葉に全員が立ち上がり部屋を出ようとした。
「ま、待ってください。」
「なんだ?」
久遠は振り返らず返事を返した。
「お二人を使おうとしたことは謝ります。申し訳ありません。」
そう言いながら頭を下げるミルフィ。だが、久遠と華音は振り返らない。
「お二人には私の隣に立って欲しいんです。」
「英雄だからか?俺達はそんな大層なものじゃない。それに一平民だ。ミルフィの隣に立つなら大成と瑞穂でいいんじゃないか?」
「そうですね。それが一番妥当でしょう。」
正論を言われ黙り混むミルフィ。
「俺達は亜里沙に頼まれたから此処に居る。だが、理由はそれだけじゃない。自分達の生活を脅かす存在から家族を守るためにいる。その為なら何だってする。今回はそれが一致したに過ぎない。」
久遠は振り向き自分の考えを伝えた。更に華音も振り向き伝える。
「そもそも私達に頼らないと何も出来ないのなら滅んだ方がマシです。私達は貴女の駒ではありません。私達にも自分達の意思があります。その意志が今回貴女達と偶々重なっただけです。私達は自分達の意思で戦います。自分達の生活を守るために。」
部屋の空気が重くのしかかる。
「大成、瑞穂。お前達がミルフィを支えないでどうする?俺達はいつまでも此処に居る訳じゃない。お前達がこの国を支えなければ滅びるぞ?」
今度は大成と瑞穂が表情を曇らせる。
だが、久遠の言ったことを真摯に受け止めた大成と瑞穂。
「そうですわね。私達が教皇を、ミルフィを支えなくてはいけませんね。」
「そうだな。すまない、久遠さん。」
そう言うと二人は頭を下げた。
「分かればいい。だが、決して死ぬなよ?悲しむ人は居るんだからな。」
「「もちろん(ですわ)!!」」
二人の返事を聞き頷いて部屋を出ていった。
「私は、間違っていたのですね。お二人はこの国の民ではないのに。」
「そうだね。でも今わかったからいいんじゃないかな?」
「そうですわ。これからは三人で、フェンも含めて四人でこの国を盛り上げていきますわよ。」
「そうですね。久遠さん達がアゼディアに住みたくなるような国にしていきましょう。」
そして、ミルフィの演説が始まる。
ミルフィの隣には大成と瑞穂が揃って立っていた。
大成と瑞穂の口調が定まらない・・・。