旅立ち?
ブクマ、評価などしていただけるとありがたいです。
フェンが王都を去ってから二週間。
久遠と華音、亜里沙は王都の冒険者ギルドで依頼を受けていた。
「お疲れ様です、皆さん。」
久遠達がギルドの受付嬢であるリリスに依頼の報告をした。
「これが、依頼完了の書類だ。確認してくれ。」
「畏まりました。」
と、いいリリスは久遠から書類を受け取る。
「確認しました。これにより、皆さんはBランクに昇格出来ますがどうしますか?」
「リリス、何か試験があるの?」
華音は、疑問を投げ掛けた。リリスが答えようとした時、後ろから声をかけられた。
「何だ、そんなことも知らねぇのか?」
後ろに立っていたのは、如何にも近接戦闘が得意ですと語っている体つきをしたおっさんだった。
「知らないですよ?何せ二週間前に登録したばかりですから。」
と、久遠は初対面なので一応は敬語を使う。
「はぁ?二週間前に登録してすでにBランクの昇格試験を受けるのか?もしかしたら、最速じゃないか?」
おっさんの言葉にリリスは頷き答えた。
「最速ですよ?それも、全ギルド合わせての最速です。」
リリスの言葉に今度は華音と、亜里沙が答える。
「私達が最速?もっと早い人が居ると思ってました。」
「そうだね、私達なんか遅い方だと思ってたよ。」
そんな二人の会話を聞いたおっさんは苦笑いして答えた。
「五年前に居た勇者達ですら登録から2ヶ月かかってるんだぞ?それでも、当時では最速だったんだ。それを、お前達はアッサリ抜いたんだ。」
おっさんの言葉に僅かに反応した久遠と華音。しかし、誰も気付かなかった。一人を除いては。
(やはり、兄さんと姉さんは五年前に何かあったんでしょうね・・・。頼めば教えてくれるとは思いますが。無理に聞いて関係が壊れるのは嫌ですから話してくれるまで待ちましょう。)
「で、昇格試験なんだがBランク以上の者との模擬戦と依頼だな。」
おっさんが昇格試験の内容を話した。
「そうか。で、ここにBランク以上の冒険者がいるのか?」
と、久遠が言うとおっさんが胸を張ってどや顔で言う。
「俺がその冒険者だ!ランクはAランクだ。で、どうする?今なら俺が試験官をやってやるが?もちろん、やるよな?」
「いや、遠慮する。そろそろ旅に出ようと思っていたしな。」
おっさんの提案を却下する久遠。そんな久遠の解答を聞いて華音と亜里沙は「やっぱりね」と思っていた。
「なんで断るんだよ?Bランクに上がれるチャンスなんだぞ?」
「別にそこまでしてランクを上げたいとは思っていない。身分証明の代わりにするつもりだったからな。ある程度のランクがあれば十分だ。」
久遠の言葉に賛同する形で華音と亜里沙も答える。
「そうだね。私達は、この世界を旅して回りたい。一ヶ所に留まるつもりは今はないからね。」
「そうですね。一応この後の予定も決まっていることですから。ここで無理に昇格しなくてもいいですから。」
三人の答えを聞いたリリスは、おっさんに言った。
「皆さんの意思は固いみたいですから、今回は見送りでいいんじゃないですか?」
「ちっ、仕方ねぇな。久々に手応えがある奴と戦えると思ったのにな。まぁ、何処に行くか知らんが頑張れよ。」
そう言い残すとおっさんは去っていった。
「あの人もいい人ですから。ただ、脳筋なだけで・・・。」
リリスの言葉に久遠達は納得した。
その後は、三人で王都を散策しながら旅に必要な物を買い揃え一日が終わった。
翌日、ギルドに顔を出した三人はリリスに別れの挨拶をして王都を出発した。
王都から少し離れた場所で唐突に久遠が言った。
「空を飛ぶか。」
この一言で空を飛ぶことになった。亜里沙は、飛ぶことに自体が初めてではしゃいでいた。
そんな時、華音が地上を見ると魔物の群れが見えてきた。
「久遠君、魔物の群れが王都に向かってるよ?」
久遠も確認のため見てみるが、確かに王都に向けて進軍していた。
「そうみたいだな。だからと言って倒す必要もないだろ?」
「そうだね。私達が今居るのは空だもんね。でも、私達に攻撃してきたら・・・。」
「もちろん反撃します。」
空を十分に楽しんだ亜里沙が会話に加わる。
「そういう事だ。」
「わかった。」
結果、攻撃されることなく次の町の近くまで空の旅を満喫する三人であった。
余談だが、魔物の群れは予定通りに王都に襲撃し殲滅された。しかし、多大な犠牲がでた。
死者は一桁で収まったが怪我人が大量に出てしまった。ちなみに、勇者は今だ訓練中で今回の殲滅戦には出ていない。
ようやくクロウ王国から旅立ち?ました。でも、まだクロウ王国編は終わらないと思います。
読んで頂きありがとうございます。