亜里沙と楠葉その3
アゼディアで模擬戦が行われている頃、亜里沙と楠葉が居る帝国ではとある情報がもたらされた。
「アリサ様、各地で魔物が活性化しています。」
部下から報告を受ける亜里沙。
「そうですか。そろそろ戦が起こるかもしれませんね。」
報告を受けている場所は亜里沙の執務室であり、楠葉も同席していた。
「となると総力戦になるだろうな。」
と楠葉が言う。楠葉の言葉に頷く亜里沙。報告をした部下は若干顔を青くしていた。
「そ、それで如何しましょうか?」
「街や村に戦力があれば守りに徹するように伝えてください。無いなら戦力がある場所まで避難を徹底してください。」
「わ、わかりました。直ぐそのように致します。」
そう指示を受けた部下は部屋を出ていった。
部屋に残された亜里沙と楠葉は今後のことを考え始めた。
「さて、亜里沙殿。これからどうするのだ?」
「そうですね、帝国には戦力が整っていますし結界もあります。ですから、兄さんと姉さんの居るアゼディアに行こうと思います。」
「そうだな。話に聞くとアゼディアが一番攻撃を受けているようだしな。」
「はい、最終決戦は私達を召喚した国だとは思いますが・・・。」
「何か不安があるのか?」
楠葉は言い切らない亜里沙に疑問を思った。
「不安と言うか・・・何かありそうな予感がしてならないんです。何もないならそれに越したことはないのですが。」
「そうか・・・。今はまだ考えず久遠殿達と合流することだけを考えてはどうだ?」
「そうですね。」
まだ腑に落ちない顔をしている亜里沙に楠葉が爆弾を投下する。
「私は、華音殿のように久遠殿との間に子供が欲しいな。」
「にゃ、にゃにをいちゅってるんですか?」
何故か噛みまくりの亜里沙。そんな亜里沙を見つめながら笑う楠葉。
「何って当たり前の事だろ?私は、私達は久遠殿の妻なのだから。今は離れているが平和になれば子が欲しいと思うのは当たり前の事だろ。」
「た、確かにそうですが・・・。」
「なら問題ないじゃないか。早く久遠殿の子供が欲しいな。」
先程まで張りつめていた空気が和んだ。
「私だって兄さんとの子供は欲しいです!」
「それでいいじゃないか?ならすることは簡単だろう?」
ニヤリとする楠葉。その表情を見た亜里沙は溜め息をつきながら答えた。
「えぇ、やることは決まっています。私達の完全勝利で終わらせます。そして兄さんとの幸せな家庭を作ります。」
「だな、全員で幸せな家族になろう。」
「はい!」
そして、一ヶ月後。
「アリサ様!魔族の侵攻が開始されました!」
と部下が報告に来た。
「分かりました。各自指示に従ってください。私と楠葉はアゼディアに向かいます。」
「はっ!!どうかお気をつけて!」
頷いて答える亜里沙と楠葉。だが、最後に一言残してアゼディアに向かった。その一言とは・・・。
「私達はこの戦いが終わっても帝国には戻ってきませんので後はよろしくお願いしますね。」
「頼んだぞ。」
部下は「えっ?」と発するが既に亜里沙と楠葉はそこには居なかった。
亜里沙と楠葉は魔法で空を飛びアゼディアに向かった。
半ば放心している部下を残して・・・。
そして、場所はアゼディアに移る。
アゼディアでは騎士団と魔法師団は再編成され、いつでも出撃できる状態になっていた。
そして教皇であるミルフィの演説が始まろうとしていた。




