帝国領2
クロウ王国改め邪神国が建国された。
亜里沙と楠葉は帝国に戻ったその場で聞かされた内容だった。
「クロウ王国が滅び、そこに邪神国が建国された・・・。」
亜里沙は呟いた。その呟きを聞いていた楠葉は大臣に尋ねた。
「では、クロウ王国に住んでいた住人はどうなった?」
「それは・・・。」
大臣の表情は曇り、口を閉ざした。
「ま、まさか・・・。」
「はい、そのまさかです。クロウ王国に住んでいた住人は大半が殺されました。何とか逃げれた者は我が帝国か神霊国に避難してきました。」
大臣の言葉に亜里沙と楠葉は言葉を無くした。
「それで、神霊国はこちらに何か言ってきましたか?」
気を取り直して亜里沙は大臣に尋ねた。
「いえ、今のところは何も。ただ、神霊国にもクロウ王国により召喚された勇者が二名居るとのことですから何とかなるのではないでしょうか?」
「あの二人だけでどうにかなる戦力だったら問題ないです。しかし、それを越えた場合・・・滅びるでしょうね。」
既に、亜里沙の頭の中では策を練り始めていた。しかし、どうにも上手く纏まらない。
「亜里沙殿、久遠殿達を向かわせてはどうだろう?」
「兄さん達を?ですが、兄さん達はあの街の守護に回ってもらっています。動かせる戦力など・・・。いけるかもしれません!」
亜里沙の頭の中で策が一つに繋がった。そして、直ぐに久遠に念話をする。
『兄さん、聞こえますか?』
『うん?亜里沙か?どうした?』
『今どちらに居ますか?』
『今はカルディナの背に乗ってクロウ王国に向かっているぞ?』
『ちょ、街はどうしたんですか?』
『結界を張ってきたから問題ない。』
久遠の言葉に亜里沙は改めて思った。久遠は規格外だと・・・。
『わ、わかりました。今、クロウ王国は滅亡しその場所に邪神国が建国されました。』
『それは本当ですか、亜里沙?』
久遠と亜里沙の会話に華音が入ってきた。
『はい、姉さん。私も今帝都に着いたのですが直ぐに聞かされました。』
『そうすると今のクロウ王国は邪神国で邪神に魔王が居るわけだな。』
『そうです。ですから、今はクロウ王国に行かずに神霊国に行ってもらえませんか?』
『理由は・・・手助けか?』
『はい。私と楠葉はまだ動けないと思います。ですから、頼めるのは兄さん達以外に居ないんです。』
亜里沙は、久遠に神霊国に行ってほしいと言う。久遠は少し考え答えた。
『わかった。だが、神霊国に向かうのは一度クロウ王国を見てきてからだ。それで良いなら神霊国に向かう。』
『出来れば直ぐにでも行って欲しいのですが仕方ありませんね。敵の戦力を把握するのも大事ですから。』
『邪神国を偵察した後、神霊国に向かう。』
『お願いします。』
ここで、念話を切る亜里沙。
「これで神霊国はどうにかなりました。後は、私達が帝国をどうにかしないといけませんね。」
「取り敢えずは、魔物の殲滅とそれなりの結界を張ることぐらいか?」
「そうですね。はぁ、当分休ませんね。」
愚痴をこぼす亜里沙だった。
帝都には楠葉が鍛えた騎士が在住しているが地方は違う。そのため、帝都にはある程度の戦力を残し帝都の騎士達を地方の街や村へと向かわせた。
街や村へ向かう騎士達の仕事は守備もあるが、その街や村に居る戦力となる者達の訓練も含まれている。
そのため、帝都には精鋭を残し亜里沙と楠葉も単騎で街や村を回ることになった。
この二人に関しては久遠よりは劣るが結界を張ることが出来る。そのため、まずは騎士達より先に街や村を周り、結界を張る。その後、騎士達が来て訓練や魔物の討伐を行うという方針になった。
単騎で行動するため移動速度はおかしいぐらいに速い。
1週間で帝国領の全ての街や村を結界で覆った。
そして、亜里沙と楠葉は神霊国へと向かった。
次回から久遠視点になります。




