旅立ち
翌日、皇家は全員で旅の準備を始めた。
「遥香、紗良、優真。自分の物は自分で収納しなさい。誰かに任せたら駄目ですからね。」
母親である華音の声が響き渡る。
「紗良、ママの言ったこと理解したの?」
「モチのロン!」
「紗良お姉ちゃん、流石にそれは・・・。」
一応、手を動かしながら会話をしているのだが・・・。
遥香と優真は、自身のアイテムボックスに衣類や貴重品を収納していく。紗良はと言うと何でもかんでも適当にアイテムボックスに放り込んでいる。そんな紗良の様子を見ていた遥香は沙良に言う。
「紗良、適当に入れたら出すときに大変よ?ちゃんと整理して入れておかないと。」
「うん?ちゃんと整理して入れてるよ?」
「嘘はダメよ?今でも適当に入れているじゃない。」
と、指摘する遥香だが紗良は遥香にアイテムボックスの中身の一覧を見せた。
「えっ?ウソ?ちゃんと区別されてる?衣類、貴重品、お金・・・。全部別々になってる・・・。」
「ねっ?ちゃんと出来てるでしょ?」
ドヤ顔で勝ち誇る紗良。対して何故か落ち込む遥香。まぁ、遥香が落ち込む理由は沙良があまりにも綺麗に部類していたためである。優真ですら細かく部類はしていない。なのに何故紗良は出来たのか。
それは・・・久遠にアイテムボックスの使い方を細かく聞いていたためである。遥香と優真はアイテムボックスが使えるようになると最低限の話しか聞かなかった。だが、紗良だけは違った。より詳しく久遠に尋ねたのである。そのため、この様な差が生じたのである。
そんなことがありながらも何とか午前中に準備が終わった。あとは、買い出しやご近所への挨拶回りである。
買い出しは、カルディナと子供達が行くことになった。久遠と華音はご近所さんへの挨拶回りである。
久遠達は、別の街に引っ越すと言うことにして近所への挨拶を終わらせた。
カルディナと子供達も、無事に買い出しが終わり家に帰って来た。
そして、この家での最後の食事をし、明日に備えて早めに寝ることにした。
翌朝、皇家の面々は街の門の前に集まっていた。
既に、亜里沙と楠葉は帝国に向けて昨日に街を出ていっている。そして、久遠達が街を出ることを知らない。そのため、久遠はこの街に結界を張った。魔族や魔物、盗賊など悪意を持つ者は入れないという結界を街の周りに張り巡らした。
「さあ、先ずはパパとママが召喚された国に行ってみるか。」
「そうですね。亜里沙の話によれば滅んだようですから。今では魔物の巣窟でしょうし。」
「クオン様、カノン様。私の背に乗られますか?」
カルディナが自分の背に乗るかを尋ねた。
「そうだな。時間をあまりかけたくないから頼もうか。」
「畏まりました。では、元の姿に戻ります。」
そう言うとカルディナは龍へと姿を変えた。
『では、皆さんお乗りください。但し、サリアはサラ様に抱かれた状態でお願いします。』
カルディナご言うと紗良は直ぐ様サリアを抱きしめカルディナの背に乗った。
『妾を何だと思っておる?誇り高き(神狼ぞ。』
沙良に抱かれたままで言っても迫力も無ければ威厳もない。見るからに小さいワンコである。
「さて、全員乗ったな。じゃぁ、行くとするか。」
「「「はい!!」」」
全員の声が重なり、カルディナは羽ばたいた。
向かうは、今は無きクロウ王国・・・。




