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「やっぱり姫ちゃんじゃだめね。あたしレベルじゃないと人は寄ってこないのよ」
「そんなに言うならやってみたら?」
「ふふん。見てなさいよ」
天さまがそう言ってお姉さまを置いて一人で女生徒に近づいて行きました。でも、天さまってそんなに対人スキルが高いという印象はなかったですけど……。
「……(OTZ」
「やっぱダメじゃないの」
30分後、天さまはお姉さまの足元で手をついてくずおれていました。
もう皆部活を始めるか帰宅するかして声を掛けられそうな生徒もいなくなってしまったので、今日のところは諦めて家に帰ろうということになりました。
そうして校舎を出て階段に向かっていくところで、植え込みの中に妙な人影を見つけました。
「ああ、ないです。どうして? どうしたらいいの?」
「美雷さんどうかなさいましたか?」
傷心のせいかお姉さまは人影に気づいていないようでしたので私が植え込みに近づいて声を掛けました。
「ひぇうっ」
ごつっ
すると、驚いた美雷さんが慌てて振り向くと同時にバランスを崩してひっくり返ったと思うと、どこかに頭をぶつけて伸びてしまいました。
「美雷さん、大丈夫ですか、美雷さん」
「うーん」
「誰か呼んでくるわ。雪はここで様子を見てて」
声を掛けても返事がないのでお姉さまは人を呼びに行かれました。頭を打っているようなので保健室に行くにも抱きかかえるのでなく担架を用意すべきだと思ったからです。
と、天さまが私の体の制御を取って美雷さんの頭に手を置きました。
「天さま、何をなさっているんですか?」
「んー、そんな大したことじゃないみたいね。でも念のため。こんな感じかしら?」
そう言うと、私の手に光と熱が集まったと思うと突然巨大なハサミが出現しました。丸太でも切れそうな大きさで一体何に使うのかちっとも想像がつきません。
「さてと」
「ちょっとお待ちくださいぃっ。それで何をなさるつもりですか!」
「ちょっと念のため、この子の首を切って新品と取り替えてあげようと」
「だっ、ダメー!」
「大丈夫よ。前にカブトムシでやった時は成功したわ」
「カブトムシと人間を一緒にしないでくださいっ!!」
すると、頭上で大声を上げていたせいか美雷さんが気が付いたようでした。
「ん、うーん、あれ、今、私…………」
そして目の前にある巨大おおばさみを見て、再び失神してしまいました。
再び美雷さんが気が付いたのは学校の保健室のベッドの上でした。あの後すぐにお姉さまが戻ってきて、担架に乗せて保健室まで運んだのです。あ、もちろん美雷さんは中古です。……首の話ですよ?