1-8
次の日、お姉さまは私を呼んで陰陽部の再訪問のための作戦を考えました。
「昨日は失敗だったわ。あんなに怖がられちゃうなんてね」
「平安時代にいたときは、お姉さまがその気になれば誰もがお姉さまの虜になってその場で失神してましたのに」
「いや、あれはむしろ黒歴史……」
「黒……歴史ですか?」
「あの力はむしろなくなってよかったと思うわ」
平安時代でお姉さまが活躍していた時は、男も女も誰もがお姉さまに恋をして、高位貴族の方や帝までもがお姉さまにご執心なさっていました。気の弱い人がお姉さまの前に出ると失神して命の危険もあったほどです。
そのことを考えると、昨日のようなことは平安時代にいたときには起きるはずもないことだったのでした。
「で、今日、このまま行っても昨日の二の舞になるだけだと思うの」
「それは確かにそうですね」
「だから、陰陽部の人を一人ずつ探して、1対1でじっくり話してみればいいんじゃないかしら」
「実質的には3対1だけどね」
話に興味を持ったのか、さっきからやっていた七夕牧場を中断して天さまが話に参加してきました。
「天は遠くから見てるだけにして。絶対に邪魔しないでね」
「あの、私は?」
「雪は天が悪さを始めないように見張ってて」
「はい」
「ちょ、その扱いひどくない!?」
天さまが抗議しますがお姉さまは聞く耳持たない様子で陰陽部の人を探して辺りをきょろきょろと見回し始めました。
「あ」
そこにちょうど昨日見た女生徒が通りかかったのですが、お姉さまが声を掛けようとするより前に向こうがお姉さまに気づいて逃げて行ってしまいました。
「お、お姉さま、あまり気にしないで……」
「ふふ、うふふふふ、このかぐや姫を本気にさせて後悔しても知らないわよ」
「あ、あの、お姉さま?」
「こうなったら、ぜーったいに話を聞きだしてやるわ」
お姉さまが何だかいつもと違うテンションでどこかへ行ってしまいました。ちょっと不安な気もしますがお姉さまなので大丈夫でしょう。私は天さまを見張っていなければいけませんし。
「ね、雪ちゃん」
「ダメです」
「まだ何も言ってないよ!?」
「お姉さまに言われてますから」
「ううー」
体の制御を天さまに取られないように気を遣っているうちにお姉さまが帰ってきました。
「……」
「お姉さま、どうなさいました?」
「誰も話を聞いてくれないの(泣」
お姉さまがすっかりしょげ返った様子でそう言いました。ああ、可哀想なお姉さま。