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陰陽部の部室というのはまるで神社かお寺かというような立派な木造の建物でした。部員の方は皆中から私たちと美雷さんのやり取りを見ていたらしく、恐ろしいものを見るような様子で遠巻きに見るだけで近づいてくる様子がありません。
こちらから声を掛けても逃げられてしまうほどで、仕方ないので今日は帰ってまた後日再訪問することになりました。
「つまりね、愛情をかけたらかけた分だけ牛さんたちもその愛情に応えてくれるの」
天さまはあれから七夕牧場というスマホアプリにすっかりはまってしまって、私の手が空いているときは勝手に制御を乗っ取ってずっと遊んでいます。そして、今はお風呂の中で七夕牧場の面白さについての独演会の真っ最中なのでした。
ちなみにこのお風呂、優に10人くらいは入れる広々としたもので、さらに外にはもう一つ露天風呂もついています。全部合わせると、平安時代の家に作ったお風呂の数倍の広さはあるのではないかと思います。大変素晴らしいです。
「でね、すっごく仲良くなると一緒にデートもできるんだよねっ」
「牛とデート? どこで?」
「んー、釧路湿原とか?」
「意味が分からない……」
天さまの説明にお姉さまが頭を抱えています。そうしているうちに私もお姉さまのお背中を流し終えました。
「お姉さま、終わりました」
「ありがと。じゃあ、雪の番ね」
「いえ、私は……」
「遠慮しないの」
そう言ってお姉さまは私を交代で椅子に座らせて髪を梳かし始めました。
「相変わらず雪の肌は白くてきれいね」
「お姉さま?」
「雪って名前は雪の肌が白くて雪のようだったから名付けたのよ」
そう言ってお姉さまは私の肩から背中にかけて指を這わせます。触れられた部分はまるで火が付いたかのように熱を持って私の鼓動を速めました。
「本当にきれいね」
「お姉さま……」
私が振り向くとお姉さまの顔がすぐ近くにありました。目が合うとお姉さまも少し恥ずかしそうにしていましたが、視線がぶれることはありませんでした。そしてお互いに少しずつ近づいて、唇がわずかに触れたとき……
「天! どさくさに紛れて舌を入れようとするんじゃないわ」
「えー、だってせっかくいい雰囲気だったじゃん」
「いい雰囲気だったんだから、肉欲に走って雰囲気を壊さないでよ」
「よいではないか。それ、よいではないか」
「あ、ちょっと、胸揉まないで。……そこ、だめ……、ダメって言ってるでしょうが!!」
「「あ、痛た」」
「姫ちゃんが殴ったー」
「当たり前でしょ」
今のは完全に天さまが悪かったのですが、頭を叩かれると私も痛いのです……。
結局、その後、髪はお姉さまに洗ってもらいましたが体は自分で洗って、一緒にお風呂に浸かりました。