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 学校の授業は興味深いものでした。現代に来たときにこちらの生活の記憶が加わっているので知識としては知っているものが多かったですが、平安時代の知識と照らし合わせるとその違いに新鮮な驚きを感じました。


 ある時ちらっとお姉さまの方を見てみるとお姉さまが頭を抱えて唸っていらっしゃっていて、何かあったのかと少し心配でした。確か歴史の時間だったと思います。すぐに元に戻られたので安心しましたが。


 放課後になって、理事長さまに言われた通りに陰陽部という部活について先生や同級生の方に聞いて部室へと向かいました。


 陰陽部という部活は龍珠学園の中では最大の予算と敷地を与えられた部活で、入部には特別な審査があり部外者はその敷地にすら入れないという秘密主義を通しているのだそうです。


 全国には陰陽部がある学校が後2校あり年2回交流戦が行われるのですが、その試合には全校生徒が観戦に来てとても盛り上がるのだそうです。代表選手に選ばれるのはとても名誉なことだと皆が口をそろえて言っていました。


 「一体……この学校には……階段がどれだけあるのかしら、はふぅ」


 陰陽部の部室は学園のある山の頂上一帯のエリアにあります。学校の校舎が山の中腹にあるので、陰陽部に行くにはさらに階段を上らなくてはなりません。


 「なんで好き好んで……こんな高いところに部室を……作ったのかしら」

 「それは山の頂きが最も神力の濃いところだからなのですわ」

 「千空美雷!」

 「美雷さん」


 階段を上りきろうとするところで声を掛けられて見上げると千空美雷さんでした。この方と階段の上で会うのは2度目です。


 「どうしてあなたがここに?」

 「それは私が陰陽部の部長でエースだからですわ」

 「…………自分で自分のことをエースって言うのはどうかと思うわ」

 「お姉さま、ダメです。そんなきつい言い方をすると美雷さんがまた泣いちゃいます」

 「泣かないわよ!」


 美雷さんはそう言ったものの、目の端にはちょっとだけ光るものがあったのは内緒なのです。


 「ここから先は部外者立ち入り禁止ですわ」

 「知ってるわ」

 「では、お帰りになってくださいませ」

 「そういうわけにはいかないわ」

 「ちょ、お姉さま」

 「何々、なんか面白そうなことになってる?」


 天さまがしゃべりだすと、美雷さんがぎょっとした様子で私を見ました。


 「私は理事長の指示でここに来たのですわ。話も聞かずに門前払いというわけにはいきません」

 「陰陽部が部外者立ち入り禁止なのは古来よりのしきたりなのです。たとえ理事長、お祖母さまと言えどもそのしきたりを曲げることは許されませんわ」

 「これはもう拳と拳の語らいしかないんじゃない? 死闘を繰り広げた両者は同時に地面に倒れ伏し、難く握手をして薔薇の花が咲く」

 「天、何の話をしてるんだ!」

 「あ、ごめん、百合の花だったわ」

 「そこじゃない!!」

 「あなたたち、薔薇とか百合とか何の話をしているんですの?」

 「えっとですね、薔薇の花というのはですね……」

 「雪も説明しなくていいっ」


 お姉さまが肩で息を切らしながら突っ込みを入れてくださるのですが、これは現代文化における項目なので美雷さんが知らないのなら教えて差し上げるべきなのではないかと思います。後でこっそり教えてあげましょう。

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