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5-11

 「結界に気づかなかったなんてどうかしてたわ」

 「すみません。わざと隠蔽していたので」

 「天さま、すみませんが、お願いします」

 「ほいほーい!」


 私たちは屋上のドアに開けられた結界の穴を通ってこのビルに入ってきたのでした。織姫さまは寝ているので確認は取れませんが、もし開けたままならそこから倉橋家の人たちが入ってくることができます。いえ、今は可能性ではなく間違いなく入ってきているに違いないと考えるべきです。


 ただ、こちらも神格はないものの上級神上位クラスの力を持つお姉さまと天さまに加えて、現役上級神の墨ちゃん、中級神の彦星さま、織姫さま、仙ちゃんが揃っていて、おいそれとは手を出すことはできないはずです。……後、美雷さんもいました。


 なので向こうもこちらの隙ができるタイミングを慎重に伺っていたのでしょうが……


 「ばれてしまってはしょうがないわね」

 「有里!」


 ドアを開けて現れた人物を見て、美雷さんが強い口調で名前を呼びました。なるほど、あれが倉橋有里さんですか。……確かにおっぱいがぼいんぼいんです。雨さまが寝返るはずです。


 「おっと、動かないで。一歩でも動いたら命の保証はないわ」

 「それは家宝の……」


 有里さんが掲げたのは見覚えのある文様の入った印籠でした。あれが千空家に伝わる空さまに渡した印籠に違いありません。術式を強化する力があるという話でしたので、さしずめ今は拳銃を突き付けられた感じの状況でしょうか。


 「墨、仙狐を守って。天、やるわよ」

 「く、この我に真の力を出させるとは、お主ら簡単に死ねると思うなよ!」

 「それは完全に悪役のセリフだわ」


 天さまがかっと目を見開くと、突然私の胸元でブラが弾けて着物の胸元が押し広げられ魅惑の谷間が出現しました。……えと、どういうこと?


 と同時に天さまを中心に絶対的な神力が渦巻いて部屋を満たしました。そのあまりの濃度に耐性のないものは吐き気すら催すほどです。


 お姉さまも神力を開放しました。お姉さまの神力は魅惑に満ちていて、気を確かに持たないと自ら進んで身も心もお姉さまの奴隷になってしまいます。以前力がなくなったとおっしゃってましたが、ちっとも衰えていないことに安心しました。


 「くっ。五行の理に従い我らを害するものを排せ。急急如律令」


 有里さんは2人の神力に飲み込まれる前にぱっと5枚の呪符を宙に投げ呪文を唱えました。木火土金水の各符が五芒星の頂点をなしてお姉さまと私の頭上を覆います。


 「「「「急急如律令」」」」


 さらに周囲に4人の陰陽師が現れ、それぞれ5枚の呪符を投げ呪文を唱えます。5人の投げた計25枚の呪符は5重の五芒星を形成し私たちの周囲に強力な結界を生み出しました。


 「倉橋家は陰陽五行の大家なのです。これはその中でも秘中の秘! この短時間にこの完成度を実現できたのは印籠の力に間違いないです!!」


 後ろで美雷さんが何やら分かりやすい説明をしてくれています。


 「美雷の言う通りよ。これぞ奥義『五重五行陣』。何人もこの陣から外に出ることは不可能だわ」

 「くっ」


 有里さんは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、美雷さんは悔しそうに歯ぎしりをしています。しかし、何か勘違いをしていないでしょうか?

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