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と、お姉さまは何を思ったか美雷さんの胸をじっと見つめました。
「ど、どうしましたか?」
美雷さんがちょっと恥ずかしそうに胸を腕で隠すようにして尋ねました。そういえば千空家の人は美雷さんも理事長さまも無い人でした。
「もしかして倉橋家の人たちって……」
「なんでしょうか?」
「あー、グラマーな人が多かったりしないかしら?」
「うっ……」
お姉さまが指摘すると美雷さんは目じりに涙をためて言葉を詰まらせました。お姉さまはそれを見て「しまった」という表情をしています。
「ご、ごめんね。そんなつもりで言ったのではないのよ」
「分かってます。天児屋命さまが倉橋家のおっぱいにつられて仙狐さまの誘拐に手を貸したんじゃないかってことですわよね。その通り、有里もそのお母様もお祖母さまもみんな見事なおっぱいですわっ。倉橋家にも千空家の血が入っているのに、どうしてこんな格差がっっ」
どうやら正解だったようです。でも、美雷さんのダメージも大きそうです。
「美雷。私は大きいのも小さいのも好きだわ」
「かぐや姫さま!? ……ぁ」
お姉さまが美雷さんを慰めるために肩に手を回して手を握ってあげると、美雷さんは頬を赤くしてお姉さまの瞳を見つめ両手で手を握り返しました。
「こほんこほん」
「あ、ご、ごめんなさい」
彦星さまが軽く咳ばらいをすると美雷さんは慌ててお姉さまから離れました。一応、一件落着ということでいいんでしょうか?
「でも、それなら仙狐はまだ倉橋家から狙われているはずよね」
「このマンションには特殊な結界が施してあって、仙狐ちゃんを狙ってる人は入れないようになってるから大丈夫。結界が薄くなりがちな玄関も今日は七夕GOのレア牛のせいで閉鎖になってるし」
「ん、私たちは入れたわ?」
「それはお姉ちゃんがいたから」
仙ちゃんの言葉に私たちは納得しました。最初にビルの中に墨ちゃんを入れて中からドアを開けてもらったおかげで、私たちは結界の排除対象から外れたのです。
「あれ、でもあの後誰かドアを閉めました?」
「ん……、最後に入ったのは誰だったかしら?」
そういってお姉さまは私たちの顔を見回しました。
「確か……、織姫さまでしたわ」
はっと全員の目が織姫さまの寝ている寝室のドアに向きました。そして次の瞬間、仙ちゃんを取り囲むように全員で円陣の態勢を取りました。
織姫さまはあの時、仙ちゃんの気配を感じた墨ちゃんのそばにいち早く駆け寄ってきていて、ドアを閉めたところは誰も確認していませんでした。




