表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/50

5-9

 「彦星、この子が仙狐でいいのかしら?」

 「はい」


 仙ちゃんはさっきから墨ちゃんの後ろに隠れるように立っています。おどおどした様子もかわいいですが、こんな娘が本当に全国の稲荷神社を束ねる頂点なんでしょうか?


 「ふむ。分かりました。では、逮捕!」


 そう言うと、お姉さまはどこから取り出したのか目にも止まらない早業で彦星さまの両手に手錠を掛けてしまいました。


 「な、何で!?」

 「未成年略取誘拐の罪だわ」

 「誘拐なんてしてないですよ。むしろ、誘拐されていたのを助けたんだから!」

 「彦星さま、それはどういう意味ですか?」


 彦星さまの言葉に墨ちゃんが驚いて聞きました。ところで、仙ちゃんは多分未成年じゃないと思います。見た目は愛らしい少女ですけど、実年齢は多分数百、げふんげふん。


 「気づいたのは偶然だったんだよ」


 彦星さまの話はこんな内容でした。


 数週間前、彦星さまが七夕GOのリリースに向けて自らベータ版を使って最終チェックをするため暇があれば全国各地を歩き回っていた時に、サングラスをかけてマスクをした妙な人物が狐耳の少女を連れているのを見かけました。


 怪しさ満点だったのですが、少女のほうが警戒する様子もなくその人物の後をついて行っていたのでスマホをいじっているふりをして観察していたのですが、そこへ数人の人間が突然現れて少女を取り囲み、そのうちの1人が印籠を掲げて祝詞を上げたのです。


 すると、急に少女が苦しみだしてその場にうずくまりました。その時点で彦星は少女が人間ではないことに気づいていて、害のある気配を感じなかったことから助けることにしました。


 人間たちを蹴散らして少女を連れ歩いていた人物から奪い取ると、急いで走って逃げました。本気を出した中級神の脚力にただの人間が勝てるはずもなく、あっという間に振り切って仙ちゃんを救出することに成功したのです。


 「彼女が仙狐で、しかもネットアイドルもしてたってことは後から知ったんだよ」

 「……印籠。倉橋家かしら?」

 「可能性はあります。もしかすると恐怖の大王のことは初めから知っていて前もって仙狐さまを拉致しようとしていたのかもしれません」

 「じゃあ、最初に仙狐を連れて歩いていたサングラスとマスクの人間は誰かしら?」

 「いや、あれは多分人間じゃないね」


 彦星さまが言った言葉に皆ははっとしましたが、その後の仙ちゃんの言葉はもっと衝撃的でした。


 「あの人は僕より高位の神様。男の人だったけど、僕には興味ないみたいでおっぱいの大きな女の人のほうばかり見てた。だから大丈夫かなって思って付いて行ったの」

 「仙狐より高位でおっぱい好き?」


 仙狐は稲荷神社を統括する神様なので中級の中でも上のほうです。それを超えるとなると上級神ということになるのですが、上級神というのはそんなにたくさんいるわけではないはずです。そしておっぱい好きで仙ちゃんの誘拐に加担するような暇神ひまじんでトラブルメイカーと言えば……


 「雨ですわね」

 「雨さまですね」

 「雨さま……」


 どうやらお姉さまと私と墨ちゃんの3人の意見は一致したようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この小説は、一定の条件の下、改変、再配布自由です。詳しくはこちらをお読みください。

作者のサイトをチェック
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ