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私はもう一度目の前の女性の顔と容姿をじっと見つめました。確かに言われてみるともう少し大人のようにも見えます。しかし、美雷さんを孫と呼ぶほどの年には間違っても見えません。
「嘘でしょ」
「嘘じゃありませんわ。これが証拠です」
そう言って差し出したのは理事長さまのスマホでした。
「七夕牧場?」
「あっ。間違えました。こっちですわ」
慌ててスマホを取り戻して、改めて差し出したのは理事長さまの運転免許証で、確かに××年前の日付が書かれていました。(女性の年齢は秘密なのです。あしからず。)
「…………信じられない」
「でも本当のことですわ」
「でも、そうだとすると、どうしてあなたの孫が私たちの入学を認めないなんて言っているのですか?」
「そうね。あの子は真面目ですから、かぐや姫さまと雪乃さまの特別待遇が気に食わないんじゃないでしょうかしら」
「その話もですわ。どうして私たちが本来できないはずの転入ができることになったのか、教えていただけませんか?」
「それはあなたが神具夜姫子さまで、この学園があなたを迎えるために作られたからということですわ。1000年以上も前に」
「1000年!?」
理事長さまはそう言ってにっこりと微笑みました。が、それを聞いたお姉さまと私はとても驚きました。
「さ、もうすぐ授業が始まってしまいますから、お話はこの辺にして、一つお伝えしておかなければいけないことがあるんです。忘れずに、今日の放課後に必ず陰陽部を訪ねてください」
「陰陽部?」
「ええ。入部するかどうかはお二人にお任せします。ただ、そこの部員と話をして、部活動の詳細を知っておいてください」
「それが特別待遇の理由というわけなのですね」
「そういうことになりますわ」
お姉さまと私は部屋を辞してあらかじめ教えられた教室へと向かいました。
道すがら、なぜか私の両手はスマホをもって一生懸命何かを操作していました。天さまの仕業で両手の制御を取り返そうとしても全く返してくれません。
「天さま。もうすぐ教室なのですが」
「んー、もうちょっと。やった。黒毛和牛ゲット」
「何をやってるの? えっと、……七夕牧場?」
天さまが騒ぎ出したのでお姉さまも気になったのかスマホを覗き込んできました。
「さっき雷院ちゃんのスマホに入ってたゲームだよ。牛を捕獲して牧場で育成するの。気になってさっきから始めたんだけどちょっとハマっちゃったかも」
「牛を育てて何が楽しいのかしら?」
「えー、牛さんちょーきゃわいいよ」
そう言うと天さまはスマホの画面をお姉さまの方に向けました。確かに牛さんのつぶらな瞳が可愛いことは否定できませんが……。
「……意味が分からないわ」
「えー、じゃあ、こっちのアンガスちゃんは? 美人じゃない?」
「…………」
「天さま、もう教室ですから」
天さまはそれからこの短時間で集めたコレクションを一通りお姉さまに見せた後、ようやく両手の制御を私に返してくれました。それにしてもいつの間にあんなに集めていたのか不思議です。