表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/50

4-7

 「じゃ、墨。よろしくね」

 「はい」


 お姉さまが墨ちゃんに何かを頼むと、墨ちゃんはすっと壁をすり抜けて外に出ていきました。


 しばらくすると、途切れていた映像回線が復活し、画面には雨さまと墨ちゃんが並んで映っていました。雨さまはつるのようなもので縛り上げられていて、その一端を墨ちゃんが握っていました。


 「捕獲完了です」

 「墨、お疲れさまですわ」

 「ふがふが」


 雨さまは口まで蔓で縛られていて身動きどころかしゃべることもできない様子でした。隣に見た目は幼い(中身は1000歳以上)の墨ちゃんが無表情に立っているのがアンバランスな気がします。


 「言い訳は上に出てからにしましょう。Let's go up now.」


 お姉さまがそう言って映像を切ると、潜水艦ががたんと揺れて水面のほうに向かって動きだしました。


 帰りも米軍基地までヘリに揺られて帰りました。もとい、ヘリを先導して帰ってきました。天さまはいちいちヘリと張り合わないでほしいと思いました。


 米軍関係者の人たちは事件が解決してほっとした様子でした。雨さまはさすがに名前のある神様だということで、これ以上の面倒事には関わりたくないと思ったのか無罪放免とすることにして、軍用車で自宅まで送ってくれました。


 しかし、天下のお天道様が見逃しても、お姉さまはそんなことでは納得しないのです。


 「さて、雨、どういうことか説明してもらいましょうか?」

 「ひぃっ、ご主人様。ごめんなさい」

 「いきなり謝るってことは、何かよからぬことをしてたと考えていいのかしら?」

 「いや、そんなことは、決して、……多分、……多少はあるかもしれないけど、そんなにたくさんはないです!」

 「原潜をハイジャックしたのはよからぬことではなくて?」

 「あ、あれは、たまたま出来心というか、潜望鏡にタコがついたというか」

 「全然反省してないようね!」

 「ひっ」


 お姉さまに凄まれて雨さまは怖がっているのですが、同時に心のどこかで何か期待しているような顔をしています。1000年経っても雨さまは相変わらずの雨さまのようです。


 「じ、実は……」


 雨さまの要領を得ない話を墨ちゃんの補足で要約すると、200年くらい前までは雨さまは()()()()()真面目に仕事をしていたようです。


 ところが、江戸時代に墨の稲荷ネットワークが完成したり、大国主が復帰したりして、雨さまの仕事に余裕ができるようになって、どんどんさぼり癖が付きだしたのだそうです。


 それまでそれなりに真面目に仕事をしてたまっていたお金があったので、それで遊蕩三昧遊びほうけていたのだそうですが、さすがに数十年もそんな生活を続けていると800年の貯蓄も尽きてくるというものでした。


 そんな折、出会ったのが彦星さまでした。遊蕩三昧でグルメにはうるさかった雨さまが、美味い牛を作って売ればもうかると考えて、彦星さまを巻き込んで畜産ビジネスの振興に力を入れたのです。


 最も、実際に手を動かしていたのは彦星さまで、雨さまは口を出していただけのようですが。


 とにかく、雨さまの目論見は当たって畜産業は成功を収めることになり、コンサルタントの雨さまにも大金が舞い込んで来たのだそうです。しかし、雨さまはそれだけでは満足しなかったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この小説は、一定の条件の下、改変、再配布自由です。詳しくはこちらをお読みください。

作者のサイトをチェック
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ