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「この学園は千年もの歴史のある由緒正しい学園ですわ。本来、選ばれたエリートだけに門戸を開く特別な場所で、これまで途中編入など認められたことはありませんでした。なのにどういうわけかあなた方2人は例外の扱いとなったようですわ」
「聞きましたか、お姉さま! ここはそんなすごいところだったんですね!」
「へーすごーい(棒」
「ただし! 私はまだ認めていませんことよ」
「はい?」
美雷さんは指で私たちを指そうとして、お姉さまと私のどちらを指せばいいかちょっと迷ってその間の誰もいない空間に指を向けたので、お姉さまは指の向いた先を見るように後ろを振り返りました。私もつられて後ろを振り返りました。
階段の頂上から見る街の景色は素敵な光景でした。
「違うわよ! あなたたち2人のことよ」
「?」
「違うの。そっちの2人じゃなくてあなたたち……、じゃなくて、姫子さんと雪乃さんの2人のことなのよ。……ねえ、話を聞いてよ(泣」
お姉さまが階段を上る別の女子学生のほうを見ていると美雷さんの声にだんだん泣きが入ってきました。そこでようやくお姉さまは美雷さんの方に向き直りました。
「それで、認めないとどうなさるというのかしら?」
「どうって、それは……いろいろな不都合がありますのよっ」
「どんな?」
「えっと……、こっ、こんなことをしてただで済むと思ってたら、大間違いなんですからねっ!」
美雷さんはそれだけ言うと、一目散に向こうの方へ走って去って行ってしまいました。顔が赤くなっていたのでもしかするとお姉さまの魅力にイチコロで急に恥ずかしくなってしまったのかもしれません。
「何だったのかしら、あれは?」
「きっと照れ屋さんなのですよ」
「雪、それは多分違うと思う」
すると、天さまが突然私の口を借りて呟きました。
「んー、あの子、どっかで見たことある気がするんだけど……」
「どこかでって、前に現代に来たときのこと?」
「うーん、どうだったかな。忘れちゃった」
天さまは平安時代の時に時間転移魔法で何度も現代に来ていたそうです。お姉さまと出会ったのもその時のことだとおっしゃっていました。お姉さまはきっとそのことを話しているのでしょう。
その後、お姉さまと2人で事務に手続きに行くと、なぜか理事長さまという方とお話するように言われて、立派な畳敷きの小部屋に通されました。
「また、あなたなの?」
お姉さまが思わず口にしましたが、私も同じ思いでした。というのは、小部屋の中で待っていたのはさっき会った千空美雷さんその人だったからです。
「ようこそいらっしゃいました、神具夜姫子さま、天宮雪乃さま」
「これはどういうことなのかしら?」
「どうしましたか、かぐや姫さま?」
「どうもこうも、あなたとはさっき会ったばかりじゃないの」
「ああ、ということは、もう美雷とはお会いになられたんですね」
「「ん?」」
「はじめまして。私は千空家当主、千空雷院と申します。美雷は私の孫に当たります」
「孫??」
「はい(笑顔」