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「墨ちゃんも回収するわ」
そう言うと、今度は自由落下よりも速い速度で急降下をしました。空に向けてGが発生するのを感じたかと思うと、一瞬で地面が目の前に接近しました。
「「びゃ゛あぁぁぁぁぁぁぁ」」
どうやら今の下降で墨ちゃんを回収したようです。あまりの早業に何が起きたかわからなかったのですが、モップの先端にいつの間にか黒いしっぽが乗っていました。怖いのに天さまが目を瞑ってくれないので泣きそうです。
と、墨ちゃんはポンと真黒な黒猫の姿に変身して私の後ろに隠れました。墨ちゃんが盾になってちょっと弱まっていた風の抵抗がまた復活したので顔が痛いです。
「美雷ちゃん、姫ちゃんはどこに行ったの?」
「あ、あの道を西に向かっています」
「あの道ね。しっかりつかまってて」
「「「ぎぃぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」
なぜか空中宙がえりを1発決めてからダッシュでモップが追いかけます。わざと荒っぽく操縦して楽しんでるんじゃないですよね、天さま?
「あ、姫ちゃん、見っけ」
天さまがそういうと1台の車めがけて猛スピードで突進しました。だから、無駄に宙返りを繰り返さないでぇぇ。
天さまはしっかりと前を見て操縦するので宙返りの時に視界が反転して怖さ倍増です。でも、それに抵抗する気力も起きませんし、邪魔をして操縦を失敗したらという怖さもあるので、耐えるしかありません。
「ん、姫ちゃん、抵抗する気!?」
突然、お姉さまが囚われた車の動きが変わりました。車にはありえないような鋭角的な動きで高速走行中の車列の隙間をぐんぐん抜いて飛ばしていきます。
「そっちがその気ならこっちだって!!」
天さまのハートに火が付いたのか、モップの速度がさらに上がりました。
「み、美雷さん、気を確かに!」
私の腰に回す美雷さんの手の力が抜けてきたことに気付いた私は慌てて声を掛けました。このまま気絶したらモップから落ちてしまいます。
お姉さまの車は車列を抜け出し、さらに快走を続けています。走り屋らしい車が横につけようとしていましたが、あっさり振り切られて後ろに流れていきました。
天さまはお姉さまの車の運転席側に並走する位置にピタリとつきました。窓をのぞき込むと運転しているのはやはりお姉さまでした。目が合ったと思ったらお姉さまはにこりと笑ってさらに加速します。
「うわっと」
私たちの進行方向には別の車がいたので、加速したお姉さまと並走し続けるわけにもいかず、再び空に舞い上がりました。
「むぅ。こうなったら、空から隕石でも落として」
「わぁっ、ダメです、ダメです」
天さまが物騒なことを言い出したので慌てて止めました。
「とにかく、お姉さまが無事なことが分かったんですから、このまま目的地まで尾行していきましょう」
もはや存在が割れているのを「尾行」と呼んでふさわしいのかどうか分かりませんが、とにかくこのままカーチェイスを続けるのは全方位に危険なので、お姉さまが車を止めるのを待つべきだと思うのです。
「そうだね! いっけー」
「きゃぁぁぁぁぁ」
だから、全力で競争するのは普通「尾行」とは言わないんだと思いますってばぁぁ。




