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3-4

 翌日、お姉さまと私は織姫さまの描いた似顔絵を学校へ持っていき、陰陽部の部員や理事長さまに手渡して情報提供を呼びかけました。今のところ誰も知らないようでしたが、それぞれ独自の伝手を頼って調べてみてくれるということになり、ひとまずはその報告待ちということになりました。


 そして、数日たったある日。待ちに待った情報が届きました。


 「熱海?」

 「はい。熱海です」


 陰陽部の部員から、仙ちゃんを熱海で見かけた人がいるという目撃情報が得られました。しかも、目撃されたのは1人ではなかったのです。


 「それは彦星で間違いなかったの?」

 「間違いないです。以前雑誌で見た顔と同じでした」

 「彦星と仙狐ねぇ」


 なんと仙ちゃんは彦星さまと一緒にいたのです。しかも、熱海市内の旅館に2人で宿泊していたというじゃないですか。後でこの話をしたところ、織姫さまは大層ご立腹なさいました。


 「あのロリコン牛野郎! 今度会ったら大事なところをちょん切って去勢してやる」


 たまたま手に持っていたはさみをチョキチョキと動かしながらそう言うものですから、お姉さまが思わず股間を押さえて後ずさっていました。恥ずかしながら、お姉さまのそこにはもう何もないのですが。


 墨ちゃんの方はというと仙ちゃんが無事が確認されてほっとした様子だったのですが、その後で織姫さまが怒りを爆発させているのを見て、どんな人と一緒にいるのかと心配になってきているようです。


 「雪さま、彦星さまというのはどういう方なのですか?」

 「私もよく知らないのよ。織姫さまの恋人だったみたいなんだけど、今はあまり交流がないみたい」

 「仙ちゃんをいじめたりするのでしょうか」

 「そんなことはないと思うけど……」

 「……」


 私もそう言ったものの、彦星さまのお人柄を知らないのでちょっと不安になってしまい、墨ちゃんと顔を見合わせてお互い黙ってしまいました。


 「熱海キターーーー!!」

 「ひゃぁっ。なんですか、雪さま!! じゃなくて、天さま!?」

 「天さま、いきなりびっくりさせないでください!」

 「雪ちゃん、熱海キタコレ」

 「は?」


 突然、天さまが妙なテンションではしゃぎだしました。もっとも、天さまが妙なテンションなのはいつものことではあるのですが。


 「天、熱海に何かあるのかしら?」

 「んっふっふっー」


 お姉さまの問いかけにもなんだかごきげんそうです。


 「今度の七夕牧場のスペシャルイベントは熱海限定なのだよ!」


 そう言って天さまはスマホをみんなに見せるように掲げました。角度的に私からは見えないのですが、熱海限定イベントのサイトを開いているのでしょうか。


 「お気に入りの牛を1頭選んでお泊り熱海デートするの。熱海の観光スポットを巡るうちにオーナーと牛の信頼が強化されてより一層おいしい牛に育つのよ」

 「頭が痛いわ」


 天さまは得意満面で説明していますが、お姉さまは額を抑えて目を瞑ってしまっています。天さまがしゃべっているとはいえ、私にまで可哀想なものを相手にする態度で接するのは心が痛いのでやめてください。

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