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3-3

 とにかく、墨ちゃんのお願いで仙狐の仙ちゃんの捜索をすることになりました。といっても、私たちは学校があるのでその間にできることをということで、まずは似顔絵を作って妖怪が見えそうな人に配ってみるということになりました。


 「んー……ハム○郎?」

 「違います。狐です」


 仙ちゃんの顔を知っているのはこの中では墨ちゃんだけだということで、墨ちゃんに似顔絵を描いてもらっているのですが、どうしても狐じゃなくてハムスターになってしまいます。


 「何を騒いでるの?」

 「だ、誰ですか、このけしからん方は!?」

 「織姫さま、寝起きは着替えてから来てください。」


 長年のホステス暮らしのせいかあるいはもともとの性格なのか、織姫さまは生活がとても不規則でいつも起きる時間がばらばらでした。しかも、寝るときはぴちぴちのシャツにパンツ1枚なので、寝起きは裾はめくれて汗もかいてとてもアダルトな雰囲気になっているのです。


 そんな織姫さまが起きてきて墨と遭遇したので墨はどぎまぎしてしまいました。


 「あら、可愛い子猫ちゃんね。食べちゃいたいわ」

 「織姫さま!」

 「ふふ。雪ちゃんも一緒に可愛がってあげるわよ」

 「織姫!?」

 「冗談よ。冗談」


 織姫さまの冗談にお姉さまが切れかけたので慌てて織姫さまは話をそらしました。


 「ん? あ、これってもしかして仙狐? 稲荷明神の?」

 「知ってるの?」

 「そりゃ、クラブの経営とかやってたから、商売繁盛の祈願とかは欠かさなかったわ」

 「神様が神様に祈願してどうするの!?」

 「近くに稲荷明神があったからせっかくだから毎日お参りをしてたの。なのにリーマンショックの時は何も助けてくれなかったわ。もう二度と神様なんて信じない!」

 「だから、あなたも神様じゃなかったの!?」


 神様が神様を信じなくなったら、人は何を信じればいいのでしょう? あ、私はお姉さまを信じているので大丈夫です。間に合ってますから。


 「でも、仙狐って言ったらもうちょっとこう耳の形とか……」


 そう言って織姫さまは近くの鉛筆を持つと、墨ちゃんの描いた似顔絵にちょこちょこと線を描き足し始めました。


 「ん、意外にうまい?」

 「ふふん。こう見えてもホステスやってたときはお客さんに似顔絵を描いてあげたりしてたのよ」


 織姫さまが鉛筆を走らせるたびに、墨ちゃんが描いたハムスターがみるみるうちに狐へと変化していきました。ただのただ飯食らいかと思っていましたが、思わぬ特技の発見です。


 「こんな感じかしら?」


 そこには子狐の雰囲気を残した小さな女の子がこちらを見上げるように立っていました。ここまでくると、もはや元の絵の面影すら残っていません。あ、目、鼻、口はありました。


 「墨、これは?」

 「確かに仙ちゃんだよ」

 「よし。織姫。これあと99枚頼むわ」

 「え゛え゛ぇーー」


 露骨に嫌な顔をする織姫さまでしたが、所詮は無職で居候の身。少しくらいは仕事をしないと、ということでしぶしぶ後99枚の仙ちゃんの似顔絵を描くことを了承したのでした。

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