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「あ、あの、通りすがりの親切な方」
「はい」
「少しで結構ですので何か食べるものを……」
「え、ちょっと待ってくださるかしら……」
「お姉さま、私、持ってます」
「あ、それ、あたしのケーキ!」
天さまの叫びを無視して、鞄の中に入っていたいちごショートケーキをお姉さまに渡しました。お姉さまはそれをグラマーな女の人に渡しました。
「むしゃむしゃ、……できれば甘いものよりも精の付く、例えばフカヒレ丼とか……ぺろぺろ……特上うな重とか……もぐもぐ……高級本鮪の鮨とか」
「それが人から食べ物をもらっておいて言う言葉なの?」
「あー、あたしのケーキがー」
「ふう、中の中くらいかしら。あ、お替わりあります?」
「てめーあpせrそえrjsのあkjs」
「天さま、落ち着いてください。また後で買ってあげますから」
天さまをなだめて体の制御を取られないようにしている間に、お姉さまが女の人に質問を始めました。
「お名前を教えてくださるかしら?」
「織姫です」
「『織 姫』さんかしら? じゃ、織さん」
「織さん!?」
「どうしてこんなところに倒れていたの?」
「実はお金がなくてヒッチハイクをしていたんですけど、次の車を探しているうちに空腹で……」
「落ちていたパンを拾って食べたらお腹を壊してしまったのね」
「それは前にやってもう凝りました。あと、おにぎりとアイスクリームも落ちてるのを食べてお腹が痛くなったので、もう落ちてるものは食べないことに決めたんです。そうしたら空腹でめまいがし始めて……」
ああ、なんだか会話を聞いているだけで目から汗が……。
「あ、誰かと思ったら、織姫!」
「知り合いなの、天?」
「知り合いも何も、その子、神様だわよ」
「「え?」」
「そう言うあなたは……もしかして、天照大神さま!」
「そうよ」
「お金を貸してください!」
「ないわ!」
どうやらこの女の人は織姫という名前の神様だということでした。神様がどうして道で行き倒れていたのか分かりませんが、天さまの知り合いだということで家に招待してゆっくり話を聞くことにしました。後、天さまの小遣いは全額ガチャに溶けていたということも分かりました。
「織姫ってあの七夕の織姫なの?」
応接間のソファーに座って落ち着いたところで、お姉さまがまず質問しました。
「そうよ。昔は地味で暗い感じだったのに、いつの間にかイケイケのお姉ちゃんになっちゃって、おばさん全然気が付かなかったわよー」
と天さまが織姫さまへの質問をインターセプトして勝手に答え始めました。
「え、この人、地味だったの?」
「そうだよ。それはもう地味で暗くて芋だったんだから」