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2-1

 理事長さまにお姉さまと私が平安時代から転移してきたことを指摘され、美雷さんに正体がばれてしまってから数日が経ちました。


 「かぐや姫さまっ、雪さまっ、何か不都合はございませんかっ!?」

 「い、いえ。結構よ。ご、ご親切にありがとう」

 「はいっ。何かありましたら、何なりと声をお掛けください!」

 「え、ええ」


 美雷さんはあのことがあった翌日からずっとこんな感じです。何も悪いことはないのですが、周囲の人からやたらと注目を集めるようになってしまいました。


 「はぁ、気疲れするわ」

 「お姉さまの素晴らしさを考えれば当然のことです」


 でも、その対象が私まで入っているということに居心地の悪さを感じます。私の中の天照さまに向けてのことだと思えば当然ではあるのですが。


 「やったっ。SSR。秋芳洞ジャージーちゃん、ゲット! 見て、カルスト台地!!」

 「どうでもいいわ」


 そして、天さまは相変わらずの平常運転です。周囲の注目を集めても全く気になさる様子がありません。


 「じゃあ、新しいジャージーちゃんと散歩に行くよ」

 「行ってらっしゃい」

 「姫ちゃんも!」

 「えー、何で? ていうか、スマホゲームのキャラと散歩なんて意味不明なんですけど」

 「ちゃんと運動させてあげないと牛が引きこもりになっちゃうよ」

 「放牧しておけばいいじゃないの!」


 なおもお姉さまは抵抗していたのですが、最終的には天さまに根負けして一緒に散歩に行くことになりました。私としてはお姉さまと散歩できるのは願ってもないことです。最近のお姉さまはインドア派ですから特に。


 「大分、暑くなってきたわね」


 お姉さまはハンカチで額の汗をぬぐいながらそうおっしゃいました。お姉さまの手を汚させてしまうなんて。次は私が拭いて差し上げなくては。


 今はもう6月に入って一週間ほどになります。ちょっとずつ気温と湿度が上がってジメジメした暑さになってきました。もうしばらくしたら梅雨になるので気温は上がらないですが湿度はもっとジメジメするはずです。


 「そうですね。これだけ暑いと昼間に外にいるのは疲れます。ほら見てください、お姉さま。あっちに暑さのせいで倒れている人がいますよ」

 「え? 倒れてる人? ……ホントだ」


 お姉さまは私が指さした方に向かって走っていきました。慌てて私も追いかけました。


 「お知合いですか?」

 「違うけど、助けなきゃ。ちょっとまず道端に移動させるわ。雪、足の方を持ってくれるかしら?」

 「はい、お姉さま!!」


 私は感動しました。見ず知らずの人を助けるなんてお姉さまはなんてやさしいんでしょう。私ももっとお姉さまを見習って立派な淑女にならなくてはいけません。


 倒れていたのはグラマーな年上の女の方でした。車にはねられないよう道端の日陰に移動させるとすぐに目を覚まされました。と同時にその方のお腹も大きく鳴りました。


 ぐーーー

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